経済

2026.03.12 08:54

ガソリン価格急騰で再燃するEVシフト 商用フリートに好機到来

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問題はガソリン価格の高騰だけではない。その不確実性こそが問題なのだ。

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産油地域で地政学的緊張が高まるたび、同じ経済現実がすぐに顔を出す。車両フリートに依存する企業(米国にはそうした企業が350万社ある)は、自らでは制御できない力にさらされ続けるのだ。イランに対する戦争をめぐる経済・物流の混乱が最新の局面でエスカレートし、すでに世界の石油市場に震えが走っている。アナリストは、世界の石油のおよそ5分の1が通過する要衝ホルムズ海峡を通る供給が、途絶する可能性があると警告している。

自社ロゴを入れたセダンから「クラス8」の大型トラックまで、車両フリートを運用する企業にとって影響は即座に現れる。原油価格のボラティリティは、ガソリンやディーゼル価格の上昇に素早く直結する。そして再び、内燃機関車に大きく依存する企業は、近いうちに高くつく教訓を学び直すことになるかもしれない。燃料費はフリート運用のコストのなかでも最も予測しづらい項目の1つであり、ひいては事業コストのなかでも同様だからだ。

対照的に、すでにフリートの電動化に着手している企業は、こうしたショックの影響をはるかに受けにくい。過去のサイクルが参考になるとすれば、今回の原油価格の急騰は、バッテリー式電気自動車(BEV)の経済合理性を改めて思い出させる材料となる。

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世界的なBEV普及が短期的に押し上げられるという点で、今回も例外ではないだろう。だが米国では、商用での普及に関しては違いが出るかもしれない。米国では商用車のBEV導入が消費者向けの導入に大きく遅れをとってきたが、その理由は急速に意味を失いつつある。

燃料価格上昇のサイクルが再び

おなじみのパターンだ。地政学的ショックがエネルギー市場を揺さぶり、原油価格が跳ね上がる。ほどなくしてガソリンとディーゼルも追随する。企業は予算と運営コストの調整に追われる。

この展開は何度も見てきた。湾岸戦争、アラブの春、ロシアのウクライナ侵攻、そして現在のイランをめぐる緊張である。いずれの局面も、同じ根本的な脆弱性を突きつける。石油価格は、国際政治、供給制約、商品市場での投機に結びついており、いずれも中小企業にはコントロールできない。

市場は小さな混乱にも素早く動く。原油価格は実際の供給変化だけでなく、リスク認識にも反応する。市場が「紛争が供給ルートを脅かし得る」と見れば、価格は即座に調整される。配送バン、サービス用トラック、営業車両を日々走らせる企業にとって、その調整はほぼ瞬時に給油所の価格に現れる。米国では、ガソリン価格がこの1日あまりで0.11ドル上昇した

燃料費は、車両フリート運用における最大の変動費となることが多い。ガソリン価格が20〜30%上昇することはこの10年で繰り返し起きており、そうした上昇は中小企業の本来薄い営業利益率をあっという間に吹き飛ばしかねない。

そうした文脈では、電気自動車の魅力がより明確になる。電気料金は、原油市場ほど劇的には変動しない。

電気自動車はもともと、より賢い経済的選択だった

重要なのは、電気自動車の経済合理性は今回の原油価格急騰に依存していなかったという点である。

多くの商用用途では、連邦政府のインセンティブがなくとも、バッテリー式電気自動車はすでに総保有コスト(TCO)でより賢い選択肢だった。

電気自動車は内燃機関に比べ可動部品がはるかに少ない。その結果、時間の経過とともにメンテナンスコストが下がる。オイル交換は不要で、機械的故障も少なく、回生ブレーキによって制動系の摩耗も抑えられる。これは寿命が長いことも意味する。

「燃料」コストも通常は低い。一般に、電気はガソリンやディーゼルよりも1マイル当たりのコストが安い。配送バン、自治体車両、請負業者のトラック、サービスフリートなど、日々のルートが予測可能なフリートでは、BEVは車両寿命を通じて明確な節約をもたらすことが多い。現実の例を挙げよう。この週末、第三者の中小企業が運行するFedExのディーゼルトラックが、私の家の前で故障した。その中小企業のオーナーが対応に来たため、私は話をしに外へ出た(というのも、私は現在商用フリートのファイナンス会社のCEOだからだ)。彼ははっきりと言った。「電気自動車にしたいのは山々なんです」と。ただし初期費用が大きな障害だという。しかし資金調達でそれは解決できるし、解決される。

数多くのフリート分析が、政府のインセンティブやガソリン価格の急騰がなくとも、これらの用途において電気自動車が従来車と同等かそれ以上のコスト競争力に達し得ることを示している。

今回の原油ショックがしているのは、そうした経済性を増幅しているにすぎない。ガソリン価格が急上昇すると、BEVの運用コスト優位は即座に拡大する。フリートの一部を電気自動車に置き換える企業は、競合をなお直撃するボラティリティから事実上守られる。

言い換えれば、電動フリートは運用モデルそのものに経済的ヘッジが組み込まれている。そしてBEVを採用する企業も、その恩恵を受ける。

より大きな問題は「予測不能性」だ

しかし本当の教訓は、今後数カ月のガソリン価格だけにあるのではない。予測不能性にある。

中小企業のオーナーはすでに十分な不確実性に直面している。人件費、サプライチェーンの混乱、顧客需要、金利。運営予算に、これ以上制御不能な変数など増やしたくないだろう。だがガソリンやディーゼルは、まさにそれに当たる。

ガソリン価格は、国内需要とはほとんど関係のない理由で大きく振れることがある。何千マイルも離れた紛争、OPECの生産判断、狭い海峡や運河での輸送障害のいずれもが、一夜で価格を急騰させ得る。

対照的に、電力市場ははるかに安定している。公益事業は規制の枠組みのもとで運営され、価格は通常、一夜にしてではなく段階的に変化する。

予算策定、運営費の管理、複数年にわたる車両ライフサイクルのコスト予測を行う企業にとって、その安定性は重要だ。電動化は燃料費を下げるだけでなく、燃料価格のボラティリティも低減する。

これは微妙だが重要な利点であり、電気自動車をめぐる議論では見落とされがちである。運営費をより高い確度で予測できることは、あらゆる事業者にとって価値がある。とりわけ、米国の商用車フリートの多数を占める中小企業のオーナーにはなおさらだ。原油市場の変動が大きくなるほど、その予測可能性は魅力を増す。

電動フリートへの大転換の準備はできているか

原油ショックが起きるたび、電気自動車への関心が再燃する波が生まれる。過去のサイクルでは、その関心の多くは、ガソリン価格上昇に反応した消費者から生じた。というのも、当時入手しやすかったBEVモデルの多くは消費者向けだったからである。

だが今回は、やや違う展開になる可能性がある。消費者の電気自動車導入が続く一方で、より大きな加速は商用フリートから生まれるかもしれない。企業はイデオロギーではなく経済性に基づいて車両の意思決定を行うことが多い。数字が合えば、導入は進む。そしてその数字は、特に走行距離が多く経済的優位がいっそう大きいフリート用途で、ますますBEVを指し示している。

充電インフラが商用フリートの導入(あるいは一部では消費者のBEV導入)を阻む大きな障害だ、という話をよく聞く。確かにそれは事実だが、過大評価でもある。中小企業のオーナーは、駐車拠点全体を一気に電動化しなくても、フリートをゆっくり移行し始められる。セダンや配送バンといったライトデューティ車両は、一般ドライバー向けに整備された多数の公共充電拠点で充電できる。あるいは、従業員宅に220Vの「乾燥機用コンセント」プラグを設置し、夜間充電することも可能だ。もちろん、バスや大型トラックのようなヘビーデューティ車両ではこれは選択肢にならない。だが米国の商用フリートの大半はライトデューティであり、さまざまな場所で夜間充電ができる。多くの地域では、BEVを始めるうえでの障害は真に致命的な課題というより、心理的ハードルに近い。

さらに、米国の自動車OEMが最近になってBEV製造から距離を置くかのような発言を繰り返してきた一方で、商用フリート向けに実績のあるライトデューティBEVはすでに何十万台も市場に存在する。そして現在の連邦政権の反BEV姿勢や最近の否定的な見出しなどの影響もあり、それらは破格に安く手に入る状況にある。いまは、米国におけるBEVの「幻滅期」を利用して、安価で潤沢にある電気自動車を手に入れる好機である。そしてその状況は当面続く可能性が高い

したがって、現在の原油価格のボラティリティが、石油燃料に内在するリスクを企業に改めて想起させるなかで、より多くのフリート運用者が長期的な車両戦略を見直す可能性が高い。

移行は一夜にして起きない。フリートの入れ替えには時間がかかり、インフラ計画には慎重な実行が必要だ(ただし前述のとおり、その一部は近道もできる。語呂合わせはご容赦いただきたい)。だが歴史が指針になるなら、今回の原油ショックも過去と同じことをする。より多くの企業に、ガソリンとディーゼルへの依存を再考させるのだ。しかも現在のBEVの価格、信頼性、入手可能性を踏まえれば、これは多くの企業に、再び電動化を考え始めさせる方向に働くだろう。

(Forbes.com 原文)

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