昨年のクリスマスイブの夜、ポーランド東部国境の静寂は、ベラルーシから侵入した数十機の未確認飛行物体の騒音によって破られた。ポーランド空軍はF16戦闘機を緊急発進させ、北大西洋条約機構(NATO)領空周辺を飛行していたロシアの偵察機を迎撃した。
この侵入は物理的攻撃には至らなかったが、ロシアが拡大させている「嫌がらせ」作戦の新たな局面を示すものとなった。こうしたハイブリッド戦術は、公然たる紛争に至る水準には達していないものの、投資家や保険会社、国庫にとって支出が増大することになる。
全地球測位システム(GPS)の妨害やサイバー攻撃、放火、重要施設の破壊工作に及ぶこの作戦の真のコストは定量化が困難だが、専門家はこうした混乱がすでに多額の費用を流出させ、国家財政政策の根本的な再構築を余儀なくさせたと分析している。
妨害工作の非対称性
2022年のウクライナ侵攻開始以来、ポーランドはロシアの妨害工作の実験場とされてきた。その後、この戦術は欧州の他の地域にも拡大された。ロシア情報機関による最も重要な作戦の1つは、ポーランドの首都ワルシャワ最大のショッピングセンターを破壊した火災だった。この火災で、約6万5000平方メートルに及ぶ商業施設内の1400店舗が壊滅的な被害を受けた。小規模な小売業者や貿易業者に商品を供給する準卸売市場であった同施設の破壊により、主要な流通拠点が失われ、小売店の損失をはるかに超える経済的影響の連鎖反応を引き起こした。
脅威は空にまで及んでいる。昨年の最初の4カ月間だけで、ロシアの飛び地カリーニングラードを起点とする組織的なGPS妨害により、バルト海地域では12万3000便近くの航空便が影響を受けた。このような妨害により、航空機は経路変更を余儀なくされ、燃料消費量と保険負担が増加する。短時間の混乱でも、交通網には1日当たり数千万円もの損失をもたらすことがある。
防衛アナリストのコンラッド・ムジカは「非対称性は明らかだ」と指摘する。ムジカは、昨年9月にロシア製の安価なドローン(無人機)の群れを無力化するためにポーランドのF16戦闘機とオランダのF35戦闘機を緊急発進させた際、莫大な費用がかかったことを挙げた。
デジタル分野でも激しい戦いが繰り広げられている。ポーランドでは現在、1日当たり最大4000件のサイバー攻撃が発生しており、特に重要施設が標的となることが多い。同国は昨年、米国、ウクライナ、イスラエルを上回り、政治的動機によるサイバー攻撃の被害が世界で最も多い国となった。同国はランサムウエア攻撃の被害国として常に上位3カ国に入っており、昨年下半期の世界全体の被害件数の6%を占めた。
軍事専門家アルトゥル・ドゥビエルは、ロシアが最小限の資源でポーランドの財政に最大限の損害を与えようとしていることは明らかだと指摘する。その上で、ロシアの西側諸国に対する作戦は「資源を枯渇させ、関与する要員の士気を低下させることを狙っている」と説明した。



