経営・戦略

2026.03.12 00:11

なぜ「良い選択」は難しいのか──価値と行動のギャップを埋める企業戦略

stock.adobe.com

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アンガス・ストリートはニュージーランド・メリノ・カンパニーのCEOであり、認証済みおよびリジェネラティブウールのグローバル基準をリードしている。

NielsenIQの調査では、消費者の78%がサステナブルな暮らしは重要だと回答した。さらにマッキンゼーは、少なくとも消費者の60%が環境配慮型の製品なら、より高い金額を支払ってもよいと考えていることを明らかにしている。

しかし実際には、健康や環境に良い製品への投資を検討する際、多くの人が最も手軽で安価な選択肢に流れてしまう。

この乖離──「価値と行動のギャップ」──はビジネスにおける大きな課題だが、サステナビリティや健康に焦点を当てた製品・サービスを提供するリーダーたちが、その解消に取り組むことができる領域でもある。

価値と行動のギャップ:データが示すもの

よりサステナブルなライフスタイルへの移行を阻む障壁は数多く存在する。コスト、利便性、そして何を選べばよいのかわからないという不確実性などが代表的なものだ。

デロイトの「2024 Sustainable Consumer Report」では、高すぎることを理由にサステナブルな行動を取らなかった消費者の割合が61%へと上昇したことが示されている。さらに、34カ国を対象としたグローバル調査では、時間的プレッシャーや社会規範が、意図が行動に結びつかない強い理由になり得ることが分かった。

また、意図が強い場合でも、社会的プレッシャーが人々の発言を歪めることがある。最も簡単な選択がデフォルトになっている場合、善意があっても購入の瞬間には挫折してしまうことがあるのだ。

床材を例に考える

筆者の会社はウールを供給しているが、床材は、価値と行動のギャップを企業がどのように埋められるかを示す好例だと考えている。

米国環境保護庁(EPA)の推計によると、年間40億ポンド以上のカーペットが廃棄物として発生している。EPAのガイダンスでは、カーペットはかさばり、複数の素材で構成されているため、リサイクルが困難であると指摘されている。

合成素材で作られたカーペットは、室内マイクロプラスチックの発生源にもなりうる。研究によると、成人は室内で1日あたり6万8000個のマイクロプラスチック粒子を吸入している可能性がある。加えて、「PFAS」または「永遠の化学物質」として知られるパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質への懸念も高まっており、カーペットは室内における歴史的な発生源の一つとして特定されてきた。

サステナビリティの価値観に沿った購買を目指す消費者にとって、天然素材のカーペットは有力な選択肢となる。例えばウールは、天然の難燃性を持ち、マイクロプラスチックを放出せず室内空気質の改善に寄与できる。また耐久性があり、生分解性も備えている。しかし筆者の経験では、ウールは価格の高さと認知度の低さを主因に、市場シェアのごく一部にとどまっている。

多くの製品が同様の逆風に直面している──価値がないからではなく、その価値が時間をかけて蓄積され、目に見えにくいからだ。より健康的で、よりサステナブルな選択肢が初期費用において高い場合、リーダーとしての役割は、生涯コスト(ライフタイムの経済性)を示すことにある。交換頻度の低さ、より安全な室内空気、廃棄コストの削減など、何であれだ。意思決定の瞬間に長期的な価値が明確になれば、手頃さは「阻害要因」ではなく、十分に理解したうえでの選択の一部となりうる。

顧客が求めているのは完璧さではなく、明確さだ。トレードオフと生涯にわたるパフォーマンスを説明すれば、より良い選択をするためのハードルを下げることができる。これこそがブランドが信頼を獲得し、摩擦を減らし、ロイヤルティを構築し、人々が大切にしている価値と実際の行動とのギャップを埋める方法なのだ。

企業がギャップを埋めるには

顧客の価値観を最優先する

企業は往々にして短期的な利益に注力し、顧客が何を大切にしているかに耳を傾けるよりも、条件を押し付けがちだ。価値と行動のギャップを埋めるには、まず顧客を擁護し、顧客の長期的なウェルビーイングと価値観をあらゆる意思決定の中心に据えることから始まる。

問いかけてみてほしい。私たちは顧客の価値観に真に沿った選択肢を提供しているのか、それとも単に売りやすいものを提供しているだけなのか。多くの顧客は自身の健康、家族、そして環境について心配している。つまり、企業には前提を疑い、製品設計を見直し、顧客のニーズを最優先にする戦略を構築する機会があるのだ。

「手頃さ」を捉え直す

顧客が初期価格だけでなく、総保有コスト(TCO)を理解できるよう支援しよう。そのための実践的な方法の一つが、販売時点での簡潔な「時間あたりコスト」比較だ。今日の価格、想定される耐用年数、メンテナンス費用、廃棄時のコストを含めて提示する。うまく行えば、「安い vs 高い」という議論を、「長期的に見て実際にどちらがコストが低いか」という議論へと転換できる。

健康的でサステナブルな選択を容易にする

健康とサステナビリティに関する情報を前面に押し出そう。透明性を保ち、サステナビリティ情報を見つけやすく、理解しやすいものにすることが重要だ。このステップには、自社製品と顧客の嗜好の両方に対する深い理解が求められる。ブランドは顧客から直接フィードバックを得て、適切なメッセージが伝わっているか、それが購買決定に影響を与えたかを確認することが重要だ。

信頼性を保つには、「根拠3点+トレードオフ1点」というシンプルな形式を用いるとよい。顧客が重視する成果から語り、トレードオフ(コストを含む)を率直に示し、顧客が主張を自ら検証できるよう独立した情報源を提示する。

価値観を行動に変える

ビジネスリーダーへの筆者からの提案はこうだ。1つの製品ラインを選び、「価値と行動のギャップ監査」を実施してみてほしい。顧客が大切にしていること──健康、安全性、サステナビリティ──は何か、そして自社の提供する製品のどこが、顧客がそれに沿った選択をすることを難しくしているのか。そして1つの摩擦点を解消する。時間あたりコストのストーリーを公開し、トレードオフを明確に示し、より健康的でサステナブルな選択肢を選びやすくするのだ。

床材は一例に過ぎない。この教訓はあらゆる分野に当てはまる。価値と行動のギャップを埋めるリーダーは、業界をリードする立場を確立できるだけでなく、懐疑的な市場で信頼を獲得し、責任あるビジネスの未来を定義する存在となれるのだ。

forbes.com 原文

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