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2026.03.11 11:43

今日のジュニアを切り捨てれば、明日のシニアはいなくなる──AIで開発者を代替するコスト

AdobeStock

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私が話すあらゆるリーダーは、シニア開発者を求めている。AIが生成したコードを評価できるアーキテクト、システムがスケール時になぜ破綻するのかを理解するエンジニア、そして本番環境で物事を壊してきた年月を通じて判断力を磨いてきたテックリードだ。

しかし彼らの多くは、今日ジュニアの育成を止めたら、そのシニア開発者がどこから生まれてくるのかを考えていない。

この3カ月だけでも、レイオフの渦中にある5社のエンタープライズ企業で働く同僚と話をしてきた。毎回、パターンは同じだ。最初に切られるのはジュニアとミッドレベルの開発者である。理由も決まっている。AIツールによってシニアエンジニアの生産性が上がっているのだから、AIが処理できるはずの役割に、なぜ投資を続ける必要があるのか――という理屈だ。

だが、シニアになる道筋をすべて消し去ったあと、次のシニアがどこから生まれるのか。そこを問う人はほとんどいない。

データは、私が耳にしていることを裏づける。約6200万人の労働者を対象にしたハーバード大学の研究によると、企業が生成AIを導入するとジュニア雇用が急減することがわかった。Indeedの採用研究所(Hiring Lab)は、5年以上の経験を要件とするテック職の求人比率が2022年から2025年にかけて37%から42%へ上昇した一方で、ジュニア職のタイトルは2020年比で34%減少したと報告している。別の調査では、シニアエンジニアがリリースするAI生成コードはジュニアの2.5倍に上るとされ、企業が経験にいっそう賭ける理由が見えてくる。

AIツールを持つシニア開発者1人が、シニア1人とジュニア2人分の仕事をこなせるなら、なぜジュニアを雇うのか。

それは、この計算に致命的な欠陥があるからだ。シニア開発者を、固定された資源として扱っている。しかし実際には、シニアはパイプラインの「産物」である。あらゆるシニア開発者は、かつてジュニアであり、いま自動化されつつある仕事を通じて学んできた。本番障害をデバッグし、レビューで徹底的に分解されるコードを書き、「自明」に見えるアーキテクチャ上の判断が3年後に問題を生む理由を知っていったのだ。

AIはコードを生成できる。判断は生成できない。

すべてのシニアエンジニアを育てたパイプライン

私は20年以上にわたり、メディア企業、出版社、大規模Eコマースブランドのプラットフォームを構築し、安定化させてきた。その間、数十人のジュニア開発者が、組織が依存するアーキテクトやテックリードへと成長するのを見てきた。その成長は、適切な資格を持っていたから起きたのではない。経験豊富なエンジニアと並走しながら、実際のシステムを構築し、壊し、作り直す機会を与えられたからだ。そこでは、単に「どう直すか」ではなく、「なぜ失敗したのか」を説明してもらえた。

ドキュメントを読むだけでも、AIが生成した出力を写すだけでも、プラットフォームを持ちこたえさせる方法は身につかない。新製品のローンチ中にサイトが落ちたときのオンコール対応を経験し、6カ月前に誰かが取った近道がいま別の3つのシステムを壊していることに気づき、正解が明らかではない会議室でそれでも意思決定を迫られる。そこで学ぶのだ。

その成長にはパイプラインが必要だ。そして、私たちはそれを閉じつつある。

この状況は新しいものではない。建設業界が2008年の景気後退で約100万人の労働者を失ったとき、パイプラインは回復しなかった。米国総合建設業者協会(Associated General Contractors of America)の2024年調査によると、建設分野の人材教育・訓練プログラムへの投資に失敗したことが、有資格の求職者不足につながっているとされた。現在、需要を満たすだけでも、この業界には推定で49万9000人の追加労働者が必要だ。

教訓は一貫している。育成パイプラインを切り捨てれば、短期の節約と長期の危機を招く。そして、その危機は必ず、修復により大きなコストを伴う。

アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のCEO、マット・ガーマンは、ジュニアをAIで置き換える発想を「最も愚かな考えの1つ」だと述べた。クラーナ(Klarna)がAIへの投資も一因として人員を約40%削減した後、同社CEOは、やりすぎたことを認めるかのように、より多くの人間のカスタマーサービス担当者を採用する計画に触れた。

ビジネスリーダーがすべきこと

ジュニア職を廃止するのではなく、再定義すべきだ。旧来のモデルでは、ジュニアに定型的な作業を割り当ててきたが、それは今やAIが担う。新しいモデルでは、AI生成のアウトプットのレビュアーとして彼らを位置づけ、AIが自信満々に間違える点を見抜けるよう訓練する必要がある。

経験豊富なエンジニアと組ませ、AI支援ありとAIなしの作業を交互に回すローテーションを設計することだ。オートパイロットだけで訓練したパイロットに、嵐の中で着陸してほしいとは思わないだろう。

何より重要なのは、パイプラインをインフラとして扱うことである。2032年にシニア人材を奪い合う企業は、2025年と2026年に育てられたジュニアのプールから人材を引き出すことになる。これは慈善ではない。将来シニアエンジニアを確保する唯一の方法だ。

ジュニア開発者がすべきこと

企業は方向転換に時間がかかる。キャリアの初期にいるなら、組織がこの問題を正すのを待つことは戦略にならない。

エントリーレベルの採用が縮小する局面では、履歴書よりも実務の実績がものを言う。オープンソースのコミュニティは、利用できる学びの場の中でも最良の1つだ。コードをコミットし、経験豊富なメンテナーからフィードバックを受け、現実のソフトウェアがどう作られるかを学ぶ。バグを直す。ドキュメントを改善する。他人が書いたものをレビューする。これは、AIが代わりに捏造できない唯一の実績である。

AIがコードを生成しても、それをただ受け入れてはならない。異議を唱えよ。なぜ別のやり方ではなく、そのアプローチを選んだのかを問うことだ。誤りを探せ。壊してみる。そして、助けなしで自分で書き直す。その「問い、試し、作り直す」プロセスこそが、シニアエンジニアを他の人々から分ける判断力を育てる。分析的思考のスキルを鍛える助けにもなる。

私が関わってきた中で最も強いエンジニアリングチームは、長い年月をかけて築かれたもので、一夜にして寄せ集められたものではない。ジュニア開発者が学べる余地をつくり、厳しい学びの局面をともに乗り越え、今日コストに見えるものが5年後に最も価値ある資産へと変わることを理解していたから成長した。

それは変わっていない。これを理解する組織は、未来へと進むチームを築くだろう。理解しない組織は、縮小するシニア人材のプールをめぐって次の10年を争い続け、なぜこれほど高くつくのかと首をかしげることになる。

パイプラインこそが戦略なのだ。

forbes.com 原文

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