1年半前、チャンポン・ジャオは刑務所を出たばかりだった。2017年に自ら創業した暗号資産取引所バイナンスに対する大規模な捜査を受け、ジャオは、実効性のあるマネーロンダリング対策プログラムを維持しなかった罪を認め、5000万ドル(約79億円)の罰金を支払うことに同意した(これとは別に、バイナンスも43億ドル[約6800億円]を支払った)。さらに、CEOを辞任し、カリフォルニア州の刑務所で4カ月服役した。ジャオはイニシャルの「CZ」で広く知られている。
それから17カ月で状況は一変した。
Forbesの推計では、CZの資産は過去最高に達している。毎年恒例の「世界長者番付」では、同氏の純資産は昨年から470億ドル(約7兆4331億円)増え、1100億ドル(約17兆3970億円)に急増した。Forbesの集計では、CZは現在、世界で17番目の富豪であり、資産が12桁(1000億ドル)に達する20人しかいない人物の1人だ。ビル・ゲイツよりも資産が多い。
この12カ月で、ジャオの比較的小さな資産の一部はやや目減りした。推定1400ビットコインの価値は25%下落し、約1億ドル(約158億円)になった。また、流通するバイナンスのBNBトークンの過半を占めるとみられる保有分の価値も、ほぼ横ばいだった。
しかし、2023年に最高経営責任者を退いた後も、ジャオの資産の中核であり、純資産急増の理由でもあるのは依然としてバイナンスだ。この非上場企業はアラブ首長国連邦に本社を置き、カナダ国籍のジャオ本人も同国に住んでいるが、詳しい財務情報や明確な所有構造は開示していない。
業界関係者への取材や、上場企業コインベースを含むほかの暗号資産取引所との比較によれば、バイナンスは依然として世界最大の暗号資産取引所であり、市場シェアの約38%を握る同取引所の企業価値は約1000億ドル(約15兆8150億円)とみられる。さらに、捜査に関連する法廷文書は、ジャオがその約90%を保有していることを示している。
暗号資産データ提供会社アルテミスのアナリスト、ジェン・ジエ・リムは「バイナンスは2024年と2025年に推定160億〜170億ドル(約2兆5304億円〜約2兆6886億円)の売上高を上げていて、これはコインベースの66億ドル(約1兆438億円)のおよそ2.5倍です」と語る。
同取引所は、現物市場とデリバティブ市場を合わせて、年間30兆ドル(約4744兆5000億円)超の取引高を扱っている。さらに、独自のブロックチェーンネットワークであるBNBチェーン(時価総額は880億ドル)に連動する幅広い事業も手がけており、ユーザーにトークンを配る頻繁なギブアウェイやインセンティブプログラムも行っているという。
こうした数字を踏まえると、Forbesは、仮にCZが売却に踏み切れば、バイナンスには1000億ドル(約15兆8150億円)を超える値がつく可能性が高いと考えている。もっとも、ナスダック上場したコインベースとは異なり、同社は主として米国の規制の外で事業を営んでいるため、その点を踏まえてかなり大きく割り引いても、なおその水準に達するとの見方である。



