経済・社会

2026.03.11 08:00

ホルムズ海峡を「武器化」するイラン 海峡封鎖の方法と世界に及ぼす影響

ホルムズ海峡近海で実施されたイランとロシアの合同軍事演習。2026年2月19日撮影(Iranian Army/Handout/Anadolu via Getty Images)

ホルムズ海峡近海で実施されたイランとロシアの合同軍事演習。2026年2月19日撮影(Iranian Army/Handout/Anadolu via Getty Images)

長年にわたり、世界の注目はイランの核開発計画に集まってきた。情報機関は遠心分離機の設置を追跡し、濃縮レベルについて議論し、同国の核兵器開発成功の可能性について推測している。

だが、世界がイランの核開発計画に目を向けている間にも、同国にははるかに即効性のある戦略的手段がある。イランの最も強力な武器は爆弾ではなく、同国の支配下にある地形だ。

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾に位置する狭い海上輸送路だ。同海峡が実質的に封鎖されるか、長期間にわたり船舶の航行が著しく制限された場合、その経済的影響は重大な軍事的緊張に匹敵する可能性がある。

市場はすでにその可能性に反応し始めている。米原油指標のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は、トレーダーが地政学的リスクの高まりを価格に織り込む中、1バレル110ドルを突破した。しかし、緊張がさらに高まった場合、この動きは石油危機の初期段階に過ぎないかもしれない。

真の問題は単なる燃料価格の上昇だけではなく、エネルギー資源の取引が、ごく少数の重要な輸送経路に大きく依存しているという脆弱(ぜいじゃく)性だ。

世界で最も危険な石油輸送の要衝

ホルムズ海峡は世界で最も重要な石油輸送の要衝であり、同時にイランが持つ最も強力な戦略上の「武器」でもある。世界の石油供給量の約2割がこの狭い海峡を通過しており、ここで混乱が起きれば国際経済に衝撃を与える。

専門家や政策立案者は長年、軍事衝突が発生した場合にイランが同海峡を封鎖する可能性について警告してきた。中東で緊張が高まるたびに、この疑問が浮上する。イランはホルムズ海峡を封鎖するのだろうか?

答えは多くの人が考えているほど複雑ではない。結局のところ、地理と数学の問題だ。

ホルムズ海峡を封鎖するには

ホルムズ海峡は北のイランと南のオマーンに挟まれている。地図上では、同海峡の幅は広く見えるため、封鎖するには大規模な海戦が必要となりそうだ。

しかし、国際輸送に関してはそうではない。商業用船舶は衝突を防止し、秩序ある航行を維持するために設計された厳格な海上交通路に従って航行する。ホルムズ海峡の場合、この航路は驚くほど狭い水路に圧縮されている。

それは世界の石油輸送にとって、大きな難所となっている。ホルムズ海峡の最も狭い部分の幅は約34キロだ。広々としているように聞こえるかもしれないが、船舶の航行は水路全体に広がっているわけではなく、交通分離方式に従っている。これは幅約3キロの2本の航路から成り、両航路の間には約3キロの緩衝地帯が設けられている。現実的には、世界の石油輸送の大動脈は、幅わずか数キロの水域に集中しているのだ。

さらに重要なのは地理的条件だ。北側の航路はイランの海岸線に比較的近い位置を通っている。イラン軍は沿岸の陣地から対艦ミサイルやドローン(無人機)などを用いて、輸送回廊全体を容易に制圧できる。船舶は決して難しい標的ではない。現代の超大型タンカーは200万バレルの原油を積載し、狭い航路をゆっくりと航行する。その大きさや予測可能な航行経路により、タンカーは非常に目立ちやすく、脆弱な状態にある。

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翻訳・編集=安藤清香

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