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2026.03.27 16:00

熟練医の「見えている世界」をテクノロジーで可視化する。世界の手術に挑戦する日本発AI

今、AIがさまざまな仕事のあり方を変えようとしている。それは、医療の現場においても起きていることだ。しかし、AIの時代を築く礎となったのは、人間だけがもち得る使命感という名の冷めない情熱だった。東京都の「ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業」に採択されたアナウトの取り組みを追った。


腹腔鏡手術を思い浮かべてみてほしい。内視鏡システムの画面を通して“見ているものは同じ”でも、熟練医と若手医では“見えているものが違う”。その認識の違いは意思決定の差につながり、次に行うことの違いを生み出していく。すなわち、手術の精度そのものを左右する。

もしも、熟練医に見えているものを画面上に可視化できれば、それは外科医を教育する現場においても、実際に手術をする現場においても極めて大きな意義をもつだろう。

当然ながら、手術を受ける患者の人生を、その家族の人生をも変えていく。数多くの人間のウェルビーイングが変わり、未来を変えうるのだ。

小林 直 アナウト 代表取締役CEO
小林 直 アナウト 代表取締役CEO

不屈の情熱が日本初の、手術視覚支援AI搭載の医療機器を生んだ

東京都千代田区に本社、神奈川県川崎市に研究所を構えるアナウトは、この「もしも」に対して果敢にチャレンジしてきた。現役外科医の小林直(以下、小林)によって2020年に設立された、AI(人工知能)技術を用いて外科手術を支援するヘルステック・スタートアップだ。

「アナウトはAIを用いた画像解析技術により、手術中のモニター映像から血管、神経、臓器の境界にある結合組織などをリアルタイムで識別し、画面に強調表示するシステムを開発しています。研究や教育、医師のトレーニング用である『EUREKA X(ユーリカ エックス)』は、創業初期から大学病院や研究機関との共同研究・実証実験で活用されてきました。また、24年4月に厚生労働省から医療機器製造販売承認を取得し、日本初の手術視覚支援AI搭載の医療機器として同年7月に提供を開始したのが『EUREKA α(ユーリカ アルファ)』です」
※独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開する令和5年度までに承認された品目一覧及び令和6年度の承認医療機器をアナウト社が確認する限りの情報(2024年4月17日時点)

24年7月、日本の臨床現場でAI視覚支援を用いたはじめての手術が行われた。今、まさに日本の手術の現場は、大きな転換期を迎えているのだ。

この時代の転換期を生み出す変革は、単なる知的作業ではない。大いなる熱量がなければ成し得ない挑戦だった。

「アナウトを立ち上げる以前の私は、虎の門病院などで8年半にわたって消化器外科医として手術に携わってきました。熟練の医師に見えている世界をテクノロジーで可視化できれば、より安心できる手術を届けられるのではないかと考えていました。しかし、それは前例のないことでした。約2年間の技術開発期間を経て、20年7月にアナウトを立ち上げました」

現在、さまざまな業界において「匠の技のデジタル化」に向けた取り組みが進行している。小林は、外科医の暗黙知をAIに学習させて、手術の現場で「間違いのない地図」を提供するための試みに取り組んでいる。

「これまでの手術は、正しい道が示された地図をもたずに行うようなものでした。私はAI技術者の力を借りながら、目的地へ導く地図をつくり始めたのです。そのためには、熟練の外科医による膨大な数の手術事例(動画)をAIに学習させる必要があります。事業化の目処が立ってアナウトを立ち上げるまで、そして立ち上げてからも、『もうだめだ!』と何度もあきらめかけました」

手術支援が可能なレベル、エキスパートが驚くレベルにまでAIの画像解析能力をもたせる道のりは、気が遠くなるほどのものだったという。それでも、小林は来る日も来る日も開発を続けた。「どうして技術開発に成功できたのか、その最大の要因は?」と問うと小林が答えたのは、次のひと言だ。

「あきらめなかったからです」

SDIケーブルを手術支援ロボットまたは内視鏡システムに接続するだけで「EUREKA α」をインストールしたワークステーションが働いてくれる。画期的なシステムだ。
SDIケーブルを手術支援ロボットまたは内視鏡システムに接続するだけで「EUREKA α」をインストールしたワークステーションが働いてくれる。画期的なシステムだ。

エキスパートの地図をより進化させる

23年度(令和5年度)、あきらめなかった外科医が率いるアナウトは、東京都の「ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業」に採択された。同事業には、再生可能エネルギーの基幹化などを支援する「ゼロエミッション枠」と、AI、ロボティクス、情報通信、ヘルスケア・ライフサイエンスなど分野横断で革新的な製品・サービスを対象とする「大学発ベンチャー・一般枠」がある。アナウトは後者での採択を果たした。

「東京都に採択していただいた事業名は『内視鏡外科手術支援AIシステムの改良と普及』です。まさに今、アナウトはシステムの改良と普及を力強く推進していくフェーズに入っています。補助金を活用しながら、より高いAI解析度を目指し、解析対象となる構造物(内臓)を増やし、リアルタイムに解析する性能の強化を行ってきました」

すなわち、「解析の正しさ」「活用範囲の広さ」「解析の早さ」という3点において「EUREKA α」の改良を進めてきたというわけだ。

「25年(令和7年)度末までに、これらの性能向上、機能拡張が果たせることを確認できています。また、ふたつの特許について海外での権利化を実現しました。さらには、欧州や国内の学会・展示会においてセミナー活動などを行い、私たちの技術の周知にも努めています。今後は『EUREKA α』の拡販体制をさらに強化していきます」

EAES2025(欧州内視鏡外科学会)にて「EUREKA」の技術をアピール。確かな手応えを得たという。
EAES2025(欧州内視鏡外科学会)にて「EUREKA」の技術をアピール。確かな手応えを得たという。

小林がアナウトを立ち上げる前から続けてきた日本全国の医療機関との連携は今、さらに拡大していくフェーズを迎えている。

「性能向上、機能拡張を果たしていくにあたっては、多くの医療機関で精度評価を受けることが必要です。私たち一社だけでは、成し遂げることができません」

今、開発のための数々の障壁を乗り越え、決してあきらめることのなかったアナウトに対し、日本の高度な医療機関から多くの支援が集まっている。かつては夢だった「EUREKA α」の性能向上および機能拡張は、そうした支援機関の総意でもあるのだ。

「日本でエキスパートとされる外科医の技術は世界でも最高峰と言えるものです。その技術の基盤となるのが、これまではエキスパート医の頭のなかだけにあった地図でした。アナウトは、その地図に描かれていた道を、より詳細に、より広い範囲で、より早くビジュアライズしていくことに、これからも挑み続けていきます」

世界が「EUREKA!」と叫ぶ日は近い

患者にとって大きな苦痛をもたらす手術合併症(術後に起きる症状や何らかの好ましくない状態)は、11%以上の手術において発生しているという。当然ながら、合併症が起きると入院期間は長引くことになり、患者には精神的・身体的に大きな負荷をもたらすことになる。

こうした事態は、執刀医のキャリア形成においても大きな影を落とす。入院期間が長引くということは医療費の増大にもつながり、大きな経済的損失の要因にもなる。

「26年1月、私たちは『EUREKA α』の第二世代となる新バージョンをリリースすることができました。今回の東京都の事業で得られた成果の数々は、これから先の第三世代に盛り込まれていくことになるでしょう。アナウトは、25年11月に米国カリフォルニア州パロアルトに現地法人を設立しています。日本の手術室から生まれた技術を海外にも届けて、『外科⼿術を必要とする全ての患者さんに、今まで以上の安全と安⼼を届ける』という私たちのミッションを世界中で成し遂げていきたいと考えています」

「EUREKA(ユーリカ)」は、古代のギリシャ語で「我、発見せり」という意味をもつ感嘆詞であるという。古代ギリシアの数学者であり発明家であるアルキメデスが王冠の金の純度を測る方法を発見した際に叫んだとされている。

今、世界で「EUREKA!」と叫ばれる時代が訪れようとしているのだ。


ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業
都内のベンチャー企業や中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する革新的なプロジェクトを対象に、その経費の一部を補助することにより、大きな波及効果を持つ新たなビジネスの創出と産業の活性化を図る事業。

アナウト
https://anaut-surg.com/


こばやし・なお◎1982年、北海道札幌市生まれ。2009年、横浜市立大学医学部を卒業。東京・虎の門病院などで8年半にわたって外科医として経験を積んだ後、2年もの基礎技術の開発期間を経て、20年7月にアナウトを設立。AI技術による外科医療の発展に尽している。

Promoted by 日本総研 | text by Kiyoto Kuniryo | photographs by Shuji Goto | edited by Akio Takashiro