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2026.03.25 16:00

発電する窓が拓く新市場。inQsが描くエネルギー自立社会の未来

窓として使える透過性を保ちながら、低照度の環境下でも発電し、部屋を涼しくしてくれる。そのような夢のガラスが実在している。東京都の「ゼロエミッション東京の実現に向けた技術開発支援事業」に採択されたinQsの取り組みは、単なる窓ガラスの進化にとどまらない。エネルギーの流れを都市に生み出す、「未来の社会構造を変える血流」を創出する第一歩となった。


狩猟社会(1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く、5番目の社会として位置づけられている「Society5.0」。その超スマートな社会を実現させるためには、いくつかのブレイクスルーが求められている。
そんな中、エネルギーハーベスティング(環境発電)という観点からブレイクスルーを果たそうとしている企業が存在する。

透明なガラスが発電し、遮熱するという革新

inQs(東京都港区虎ノ門)は、室内光や月明かりなどのわずかな光でも高効率に発電する「光発電素子」を世界ではじめて開発した会社だ。その技術が投下された「SQPV(Solar Quartz Photovoltaic)ガラス」は、透明なガラスでありながら屋内環境の微量な光でも発電が可能で、なおかつ遮熱効果まで備えているという画期的な産物だ。2024年1月に米国ラスベガスで開催された世界最大のデジタル技術見本市「CES®2024」で「ベスト・オブ・イノベーション・アワード」を受賞するなど、すでに世界から大きな注目が集まっている。

同社取締役であり、事業本部営業部の部長を務める中村陽和が本稿冒頭の写真で手にしているのは、まさにその「SQPVガラス」が使われたデモンストレーション用構造物だ。

「ご覧いただいたとおり、室内の限られた灯りからでも発電して(内側に収めた物体内の)LEDを光らせることができています。『SQPVガラス』は、30cm角のガラス1枚を1セル(最小単位)としています。SQPVガラス6枚を6面体のキューブにして、キューブ内の複数個のLEDを点滅させている状態です」

上記のデモンストレーション用構造物に用いた「SQPVガラス」には、わずかながら色が付いている。一般的なシリコン製太陽光発電パネルを想像していただきたい。光を受ける面は、濃色・不透明であるはずだ。

「『SQPVガラス』は、通常のガラスとほとんど変わらない透明度のものまで製造できます。さまざまな建物はもちろん、各種のモビリティの窓、都市インフラを支えるデジタルサイネージなどにおいても活用していただけると考えています」
※2026年2月現在では建材や車載用としての「性能規定」などの認定を受けていないので高層ビルの外側のガラスには使用できない。

透明度が高くなれば、その分だけ発電効率は低くなるが、「ガラスなのに発電する」という機能性は大いなる可能性と同義である。ほぼ無色透明からカラフルにデザインされたバージョンまで幅広い展開が可能であり、まさに次世代の素材として計り知れないポテンシャルを有しているのだ。窓だけでなく、壁面や室内に置かれるパーテーションなど、さまざまな場所での利用が期待される。

「『SQPVガラス』は透明なガラスとしての採光機能を維持しながら発電する『光発電ガラス』です。目に見えない光(紫外線・赤外線)を光発電素子の主原料となる二酸化ケイ素などで受け止めて電気に変えています。つまり、紫外線や赤外線を発電に利用しているので遮熱効果も有しているのです。例えば、既存の窓の内側に『SQPVガラス』を後付けすることにより、採光・発電・遮熱の効果を併せもった機能窓へと刷新することができます」

真夏の酷暑時のエアコン稼働による多大な電力消費は、地球環境にとって深刻な課題だ。

「『SQPVガラス』は空調制御による消費電力の削減にも貢献します。室内に流れ込む熱をカットすることで、夏季の冷房負荷(エアコンの電力消費)を減らす効果があるのです。真夏の窓際の床温度が普通のガラスで33度だったのに対し、『SQPVガラス』では27度になって約5度も低いことが実験でわかっています」

中村陽和 inQs 取締役 事業本部営業部部長
中村陽和 inQs 取締役 事業本部営業部部長

「SQPVガラス」のストロングポイントをさらに強化

これまでにinQsは「SQPVガラス」の発電効率や耐候性といった性能面の向上、量産性と安定生産の検証、適用・応用領域の検討などを積み重ねてきた。そうした研鑽をさらに推し進める契機となったのが、令和4年度に東京都の「ゼロエミッション東京の実現に向けた技術開発支援事業」に採択されたことだった。

「『次世代ECO透明発電ガラスの開発』という事業名で採択していただきました。可視光を透過しながら屋内・屋外両方向の可視光以外の光もエネルギー源として発電でき、同時に遮熱効果によって省エネを促進する——。本事業では、東京都から補助金などの支援を受けながら、この『SQPVガラス』ならではの強みをさらに強化していくことができました」

令和7年度末までの取り組みの成果はいくつもあるが、本稿ではまさに「SQPVガラス」の特性である「①発電性能」「②透過性」「③遮熱性能」という3つのポイントに着目したい。

「①については、0.1SUN(真夏の直射太陽光の10分の1程度)以下という低照度環境下において両面受光による『発電効率1~3%以上』を目標としていましたが、これを達成しました。②については、SQPVガラス30cm角サイズあたりの『平均可視光透過率50%以上』という目標値を達成し、内窓としての機能を損なわない透過性を維持しています。③については、既存の単板ガラス(日射熱取得率0.88)に内窓として後付けした状態で『日射熱取得率0.64以下』という数値を達成しました。『日射熱取得率0.64以下』とはすなわち、太陽の熱の流入を3割以上カットできる性能があるということです」

本開発で行うモジュール化のイメージ(既存の光発電ガラスシステムのモジュール化を東京都の施設で検証した際の様子)
本開発で行うモジュール化のイメージ(既存の光発電ガラスシステムのモジュール化を東京都の施設で検証した際の様子)

本事業が進展したことにより、下記のような未来まで想像できるようになった。窓に貼られたセンサーが日射量や室温を検知し、自動で空調や照明を制御している。そのセンサーは「SQPVガラス」で動いていて、遮熱効果によって空調の負荷を減らすことにも貢献している。

Society5.0の超スマート社会を動かすための血液になる

従来の太陽光パネル(メガソーラー)は「既存の配電網を通じて大量の電力を売電する」ためのインフラとして発展してきた。inQsが目指しているのは、その延長線上にない。「あらゆる場所にエネルギーを自立させ、配電網や電池の制約から人間を解放すること」である。

これこそ、まさに、エネルギーハーベスティング(環境発電)の本義と言えるだろう。巨大な発電所や配電網から電力を買うのではなく、身の回りにある光や熱をその場で収穫し、その場で消費する。究極の地産地消であり、この自立したエネルギー循環が「手間(電池交換)」からも「場所(送電線の有無)」からも人間を解き放ち、さらには社会をも変革していく。

さらに特徴的なのは、地域単位の地産地消(マイクログリッド)よりも、はるかにミクロな「デバイス単位」「窓一枚単位」の地産地消を志向している点だ。

「私たちが『SQPVガラス』に投入している技術は、これから先のスマートシティ実現を支え得るエネルギーハーベスティング技術であると自負しています。これから先のIoTやAI、Society5.0の超スマート社会において、街や建物などの各所に配されるさまざまセンサーは、スマートシティを形成し、機能させていくうえで必須のピースになっていくのではないでしょうか」

物理的な世界(フィジカル空間)で起きていることをAIが処理できるデータ(サイバー空間)へと変換する窓口がセンサーだ。サイバー空間とフィジカル空間をつなぎ、Society5.0の実装を担うキーファクターであることは間違いない。

「今、センサーは『単なる計測器』であることを超えて、スマートシティの神経系を構成する『重要な細胞』になりつつあります。『SQPVガラス』が生み出す電気は、この細胞を働かせていく血流=エネルギーとなり得るのです。inQsは、オフィスビルや商業施設、公共施設、住居といった建物、自家用車やバス、タクシー、電車といった乗り物などの多様な場所に設置されたセンサーと『SQPVガラス』がつながり、スマートシティが真に機能する未来を創造していきます」

日射量や室温を検知するセンサーだけではない。「SQPVガラス」は人々の暮らしをより便利に、快適に、安全に、豊かにしていく多様なセンサーとつながることができるのだ。


ゼロエミッション東京の実現に向けた技術開発支援事業
※後継事業である「ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業」ホームページにリンクしています。

2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現に向け、脱炭素事業等に取り組む都内のエネルギー/環境系ベンチャー・中小企業が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化するゼロエミッションに向けた技術開発を対象に、都が経費の一部を補助。ゼロエミッションの実現の推進と新規ビジネスの創出を図る。

inQs
低照度環境でも発電可能な独自技術を強みに、光を新たな資源として活用し、次世代のエネルギー価値の創出に挑む。自立電源技術の社会実装を通じ、エネルギーの地産地消と持続可能なエネルギー社会の実現を目指す。


なかむら・はるやす◎半導体デバイス分野の企業で営業と役員経験を経て、2020年にinQs株式会社に入社。25年同社の取締役に就任(事業本部営業部 部長兼務)。「未利用の光を電気に変える革新的な技術」で社会に貢献すべく世界に普及を進めている。

Promoted by 日本総研 | text by Kiyoto Kuniryo | photographs by Shuji Goto | edited by AkioTakashiro