リーダーシップ

2026.03.10 16:11

医療の連続性を支える縦断的データの重要性

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ジュリア・ストランドバーグはフィリップスのConnected Care担当チーフ・ビジネス・リーダーである。

医療分野はいま、世界の総データ量のほぼ30%を生み出しており、病院におけるデータ量は前年比でおよそ47%増えている。理論上は、この急増が医療を変革するはずだ。だが現実には、むしろ分断を招くことが多い。

臨床医は散在する患者データをかき集めることに過度な時間を費やし、患者は受診の遅れや検査の重複、予防医療の取りこぼしや混乱に直面する。情報が異なるシステムに分散していると、医師は全体像を持たないまま意思決定を迫られがちであり、重要な既往歴や傾向、過去の評価を見落とす。これは不確実性を高めるだけでなく、深刻で防げたはずのエラーにもつながる。さらに臨床医は、患者ケアに集中する代わりに、不完全だったりアクセスしにくかったりする情報を探すために、毎年何週間分もの時間を失っている。

こうした失敗は、より深い構造的問題を示している。医療はいまなお「人生」ではなく「エピソード」を軸に組織化されており、データをどのように整備し、信頼し、交換するかに関する共通のガバナンスがなければ、デジタル投資が増えても分断は続く。

私の立場から言えば、縦断的データ(ケアを縦割りではなく横断してつなぐデータ)こそ、現代の医療提供を結び付ける「結合組織」である。病院からクリニック、在宅へ、そして再び病院へと情報が循環すると、臨床医は摩擦を減らし、より良い意思決定を行うために必要な文脈を得られる。その連続性は、単なるアクセスだけでなく、システムをまたいだ品質、由来、臨床的な信頼性に依存している。

エピソード型医療を超える

医療は本質的には縦断的であるが、設計上はエピソード型になっている。ケアは孤立して起こるものではない。患者は時間の経過とともに複数のケア環境を行き来するが、多くのシステムはいまなお各やり取りを単発の出来事として扱っている。この不一致が、予防、継続性、長期的アウトカムを損なう。

このギャップは業界全体で認識されつつある。OpenAIとAnthropicによる最近の発表は、患者記録を統合し、縦断的な健康データをシステム間でよりアクセスしやすく、活用可能にすることに共通して焦点を当てていることを示している。縦断的な記録は、バイタル、検査、画像、記録、患者が生成する情報を、統一されたタイムラインに結び付ける。これにより臨床医は、今日の症状を患者の過去の経過や将来リスクと関連付けられる。

これは情報を増やすことが目的ではない。意思決定の瞬間に、文脈に沿った適切な洞察を届けることが目的である。

相互運用性は依然として重大なボトルネックである

デジタル投資を重ねてきたにもかかわらず、相互運用性は医療における最もしぶとい課題の1つであり続けている。情報は、標準が一貫しないサイロ化したプラットフォームに存在し、臨床文脈から切り離されていることが多い。

業務上の影響は測定可能である。フィリップス「Future Health Index 2025」によれば、「医療従事者の77%が、不完全またはアクセス不能な患者データの問題により臨床時間を失った」とされる。約3分の1は「シフト当たり45分超」を失い、それは「医療従事者1人当たり年間23日分の損失」に相当する。

患者も同様に影響を受ける。同報告書では、73%が「専門医の受診を待ったことがある」と回答し、最長待機時間の平均は70日に迫った。また外部調査も問題の規模を裏付ける。KLAS Researchによれば、真の相互運用性を達成している米国の医療システムは約40%にとどまり、病院は平均して4つ以上のITシステムにまたがって運用している。

相互運用性は、臨床医の業務負荷、意思決定の質、患者体験に直接影響する。臨床医がプレッシャー下で病歴を再構築しなければならないとき、認知負荷は増大し、燃え尽きが後に続く。

病院の壁を越えてケアを拡張する

ケアが病院の外へ移行するにつれて、継続性は安全性と品質の前提条件となる。モデルは縦断的データに依拠して、患者を時間軸でモニタリングし、悪化の早期兆候を検知し、環境をまたいでケアを調整する。これにより、従来の入院医療と同等かそれ以上のアウトカムを、費用をおよそ38%低く抑えながら実現できる。

ケア環境間の移行は依然として高リスクの瞬間であり、薬剤エラーのほぼ70%が引き継ぎ時に発生する。縦断的な服薬照合は、そうしたエラーを約68%減らし得る

患者は、アウトカムを改善するならテクノロジーに前向きである。私たちの指数では、患者の73%がより多くのテクノロジーを歓迎する一方、52%は臨床医と対面する時間が失われることを懸念している。縦断的データは、やり取りをより情報に基づき、より個別的なものにしつつ、ケア移行時の安全性も高めることで、この緊張を解消する助けとなる。

また、健康の公平性も支える。縦断的な洞察がなければ、格差は見えないままだ。縦断的データがあれば、医療システムはコミュニティ全体のパターンを特定し、介入を調整し、従来の壁を超えてケアを拡張できる。

なぜAIは縦断的文脈に依存するのか

縦断的データは、患者の歩みの全幅を覆う。受診や環境をまたぐ臨床記録に加え、時間の経過に沿った関連する非臨床データや患者生成データを組み合わせたものである。整備された縦断的データへのアクセスは、診断エラー率を最大30%低減することが示されており、縦断的なフォローアップは、特に複雑な状態の患者において再入院を減らす。

加えて、AIは文書作成支援から業務自動化まで、医療全体でワークフロー効率をすでに改善している。しかし、臨床アウトカムを改善できるかどうかは、文脈に完全に依存する。

この違いは実務で重要になる。たとえば息切れという同じ症状で2人の患者が救急外来に来たとしても、既往歴、併存疾患、縦断的なトレンドによって必要なケアの道筋は大きく異なり得る。その文脈がなければ、高度なアルゴリズムであっても誤った方向へ導きかねない。

その結果、縦断的データのプラットフォームは、AIが予測的洞察をより早期に提示し、より正確な鑑別診断を支援し、推奨を臨床ワークフローに統合することを可能にする。

効率向上は重要である。しかし、より大きな機会は、縦断的データを用いて臨床判断を改善し、害を減らし、より良いアウトカムを大規模に提供することにある。

医療リーダーにとっての戦略的必須事項

縦断的なケア・コンティニュアムの構築は、長期の戦略的コミットメントである。医療リーダーは、デバイス、システム、ケア環境をまたいだ安全な集約を支える、オープンで相互運用可能でベンダー中立なデータ戦略を優先すべきだ。なぜなら、強固なデータ・ガバナンスが重要だからである。マッキンゼーの報告によれば、成熟したガバナンスの実践を持つ組織は、AIの取り組みを成功裏にスケールさせる可能性が3倍高い。

設計は、エピソードではなく、連続する人生を生きる人々を中心に据えなければならない。個人が生きる現実を反映した統一的な患者タイムラインは、ケアのギャップを埋め、進歩を持続させるために不可欠である。

医療は本質的に縦断的である。データをその現実に合わせて設計することは、より良いアウトカム、持続可能な臨床実践、そしてケアの未来の基盤となる。

forbes.com 原文

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