経済

2026.03.11 12:15

売上5割増「オニツカタイガーの聖地化」戦略 異質を掛け合わせて描く日本発ラグジュアリーの勝ち筋

オニツカタイガーカンパニー長 庄田良二

併設されたギャラリーとショップでは、ブランドの歴史や職人技を体感できるアーカイブ展示やカスタムオーダーサービスを展開する。また、アジアや欧州の海外拠点から研修生を受け入れ、製造技術だけでなくブランドの姿勢やアイデンティティなど、「オニツカらしさ」の伝承にも注力していくという。

advertisement

「消費財としてではなく、生活そのものを豊かにするものだという実感をもっていただけるか。オニツカタイガーという人格に共感してくれる人が広がること。それがブランドとしての本当の意味の成長だ」(庄田)

みんなが反対することにこそ、新しい価値がある

ブランドが成長する原動力となってきたのが、「違いにこそ価値がある」という庄田の哲学だ。

OIFでは、匠の技を「守り」としつつ、最先端のテクノロジーとデザインとの相乗で「攻め」のヴィジョンを描く。スポーツ分野で独自素材と機能開発を行う「アシックススポーツ工学研究所(ISS)」、最先端のデザイン開発を担う「ミラノデザインセンター」とのイノベーショントライアングルと呼ぶ三位一体の連携体制で、クラフトマンシップとテクノロジー、伝統と革新といった異質なものを組み合わせて新しい価値を創出していく。

advertisement

異なる機能をもつ部門同士、ぶつかることもありそうなものだが、庄田はそれを厭うどころか、チャンスとして生かす。「ブランドの哲学に合致するか」議論を尽くし、安易に品数を増やさず、納得のいく商品のみを市場に送り出すという。

「オニツカタイガーのテーマは『Discover the Difference(違いを見つけろ)』。他にはないもの、他社がやらないことをやる。例えば匠の技とスポーツをかけ合わせることは、我々にしかできない。混ぜ合わせて1つにしてしまうとダメだが、各々の良さをきちんと残して作り上げていく。守るべきものと進化すべきものを両手にもつ」(庄田)

その言葉通り、庄田は2011年の入社以来、ブランドの象徴「オニツカタイガーストライプ」に頼らないデザインや直営店戦略といったそれまでの経営慣習を覆す改革を打ち出してきた。こうした取り組みには反対意見があがったというが、「みんなが反対することは、それまでにない新しい価値である」として推し進めてきた。

一方、オニツカタイガーでは「匠の技」と「効率化」も両立する。工業製品としての精度と安定供給が求められるモデルは、アジアとヨーロッパに分散する5カ所の工場で量産ラインに乗せる。また、需要予測にはAIを活用し、無駄な在庫をなくしている。そうして得た利益を原資に、OIFで高付加価値ラインへ重点的に投資しているのだ。

ブランド価値を生む非効率をいかに許容するか。効率化は、その使い所を設計することが重要になる。効率化を図りながら、それに飲み込まれることなく価値を創出する。この構造的な強みから、境港に凝縮されるオニツカタイガーのブランド価値は、海外の主要都市に展開する旗艦店をはじめ、ブランド体験の空間を通じて世界中に届けられる。

「我々は強く儲けようとか、売上をあげようとは考えないが、利益率も高い(25年1〜12月期の粗利益率74.6%)。結果それがお客様からいただける対価につながっていく。このキャッチボールがすごく大事」(庄田)

次ページ > 「血」と「地」が織りなす物語

文= 本田賢一朗 編集=大柏真佑実 撮影=西川節子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事