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2026.03.25 11:00

「使うAI」から「共に働くAI」へ——NTTデータグループ × OpenAIが語るビジネス変革の現在

AIエージェントの登場により、業務のあり方が劇的に変わろうとしている。その変革の時代に、企業はどう対峙していけばいいのか。
NTTデータグループ代表取締役社長の佐々木裕が、OpenAI Japan代表執行役社長の長﨑忠雄を迎え、AIがビジネスにもたらす可能性を探った。


「インターネットが社会の構造を変えたように、AIエージェントは業務のあり方を変革するゲームチェンジャーです。AIを通じて、社会や企業の変革を前進させていきます」

そう語るのは、NTTデータグループ代表取締役社長の佐々木裕 (以下、佐々木)だ。変革を加速させるため、NTTデータグループは2025年5月、OpenAIとの戦略的提携を開始。グローバルも含めた社員3万8,000人が「ChatGPT Enterprise」を使用するとともに、日本初の販売代理店として企業への提供も進めている。AIを前提とした業務設計の転換までを視野に入れた取り組みだ。OpenAI CEOのサム・アルトマンもその挑戦に期待を寄せている。

「私の願いは、企業のリーダーたちが企業と経済を強化するかたちで、AIの活用方法を主体的に構築することです」

AIは、ビジネスに新たな価値創造をもたらす。では、それを経営レベルの変革へ昇華させるには何が必要なのか。佐々木とOpenAI Japan 代表執行役社長の長﨑忠雄 (以下、長﨑)がAIの実践と未来像を語り合った。

AIが業務のOSに

佐々木:AIの進化はホワイトカラーワークを代替する「認知能力の向上」とエッセンシャルワークを代替する「物理空間への実装」に分けられます。推論モデルの進展で前者は高度化し、複雑な業務や暗黙知にも対応可能になってきました。一方、ロボットなどの物理実装はやや時間を要すると見ています。認知領域で進化を続けるOpenAIは現状をどう見ていますか。

佐々木裕 NTTデータグループ 代表取締役社長
佐々木裕 NTTデータグループ 代表取締役社長

長﨑:ChatGPTは複数機能や外部ツールを横断できる“業務のOS”のような存在になりつつあります。エージェント化により業務は直線型から試行錯誤を重ねるスパイラル型へ移行。単なる効率化ではなく、仕事の進め方そのものの再設計が始まっています。

佐々木:進化のスピードは驚異的です。

長﨑:大きな更新は数カ月〜半年に一度、性能改善や機能追加は日々行われています。企業側も“導入して終わり”ではなく、継続的に学び、使い方を進化させる姿勢が重要です。

佐々木:どう活用すべきかお考えはありますか。

長﨑:アメリカでAIを積極的に取り入れている企業は、価値創造をゴールにしています。自動化はひとつの通過点であり、企業のトップは、顧客体験を変えることを念頭に置いておかなければならない。例えばアメリカのインテュイットという会社は、顧客データを基にAIエージェントが資産管理の提案を行い、ユーザーの意思決定の時間を短縮。ウォルマートはChatGPT上で検索・閲覧・購入まで完結する「エージェントコマース」を実装し、新しい顧客体験を実現しています。

佐々木:当社でもディープリサーチ機能を活用し、分析だけでなく課題提起まで実施。従来1週間かかった提案資料が1時間で作成可能になりました。

長﨑:反復作業をAIに任せ、人は意思決定やクリティカルシンキングへ集中することで、新しい価値創造を提案できます。

佐々木:OpenAI社内でも高度活用が進んでいるとか。

長﨑:私たちの技術の進化は非常に早く、社内ナレッジ検索はすべてチャット経由です。またグローバルでのWAUが8億人超のユーザーを抱えるなか、サポートの7〜8割をAIが処理し、人は例外対応や新たな価値提供に集中しています。

佐々木:例えば、コールセンターでは人間の抑揚と変わらない声を再現できるようになってきています。

長﨑:苦情処理など負荷の高い業務はAIが担い、人は関係構築や提案に注力します。生成AIの良さは、人と話しているようにチャットができる点です。さまざまな情報を集約したほうが、アウトプットの精度は高まります。AIをOSのように使うことで、AIがデータベースとなり、すべての情報がAIを経由してアウトプットされる世界が近い将来くるのではないかと思っています。ただし、AIに何を任せるかの判断は、人間が担います。その判断は非常に難しいですが、アウトプットに対して責任をもつ必要があります。

佐々木:先日、ダボス会議でお会いしたマッキンゼー・アンド・カンパニーのグローバル・マネージング・パートナーであるボブ・スターンフェルズは、AI時代に人間が発揮する能力は「向上心」「創造性」「判断」の3つだと話していました。彼も最後は人間が判断する必要があると。

長﨑:繰り返しの作業から解放されることで、創造性は間違いなく高まるでしょう。日本企業の社員エンゲージメントは低いとよくいわれています。創造性が高まることで、そうした状態から脱却できるのではないでしょうか。

長﨑忠雄 OpenAI Japan 代表執行役社長
長﨑忠雄 OpenAI Japan 代表執行役社長

責任あるAIで世界をリードする

佐々木:多くの会社は、社員を前提に事業を設計しますが、OpenAIは、全体を設計する人がいて、 その人がAIの活用を推進しているのでしょうか。それとも、皆さんが自由にAIを使う環境を用意しているのでしょうか。

長﨑:後者です。当社には、最高AI責任者(CAIO)は存在しません。我々はAIネイティブであり、社員全員がAIを使いこなすことが前提です。それができてこそ、お客さまへの提案に真の説得力が生まれます。

佐々木:採用でも、AIを使える人を選ぶのでしょうか。

長﨑:営業やカスタマーフェイシングのスタッフは、AIスキルよりも好奇心やクリティカルシンキングを重視します。OpenAIは、人をいたずらに増やしません。その結果、誰でもAIをアシスタントとして使えるようになります。AIの普及によって人が減るという話がありますが、そうではなく、従来の10倍のパフォーマンスを発揮できるようになるのです。

佐々木:AIインフラやAIシステムの飛躍的な進化が業務のあり方を変えるのは間違いありません。一方で、多くの企業がAIの導入に失敗しているというデータもあります。そこで私たちは、昨年12月、シリコンバレーに「NTT DATA AIVista」という新会社を設立しました。さまざまな業界で先進的なAIの活用事例をつくり、ラストワンマイルの成功をリードする。そして、そのテンプレートを日本に移植し、高いコストパフォーマンスで実装していきます。

長﨑:とても楽しみです。日本の強みである安全性と品質。それをスピードと両立できれば、世界でも高い競争力になります。

佐々木:企業がさらに進化していくためには、機密データをどのようにAIに学習させるかが課題です。公開データはパブリックAIに、機密データはプライベートAIに学習させる。このハイブリッドで価値をつくり出していくことが、将来のAI活用の姿ではないかと考えています。私たちNTTグループは、独自に開発した日本語特化型の大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi 2」をプライベートAIとして提供する仕組みを構築しています。きっと世界でも先進的な取り組みになると信じて、責任あるAIで世界をリードしていきます。

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ささき・ゆたか◎NTTデータグループ代表取締役社長。製造ITイノベーション事業本部長、取締役常務執行役員コーポレート統括本部長などを経て、2024年にNTTデータグループ社長、国内事業会社のNTTデータ社長を兼任。25年6月からはNTTデータグループ社長に専念。

ながさき・ただお◎OpenAI Japan代表執行役社長。メーカー勤務を経て1998年、デル・テクノロジーズ入社。2000年、F5ネットワークスジャパンに入社し、06年に代表取締役社長兼米国本社副社長に就任。AWSジャパン代表を経て、24年3月より現職。

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