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2026.03.11 08:15

「たまたま日本発」だと思わせられるか、スタートアップが世界で勝つ必須条件と進出タイミングの見極め方

左からファシリテーターのSBIインベストメント取締役執行役員の加藤由紀子氏、Coral Capital 創業パートナー澤山陽平氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの今野 穣氏

もう一つ、同社の成功要因として澤山氏が挙げたのが、ビジネスモデルの「明確さ」だ。SmartHRには、アメリカに類似モデルが複数存在している。「あの会社の日本版ね、という分かりやすさがありました。こういうナラティブ(物語)を作れるかも重要なポイント。それがないディープテックなどの領域では、難易度は上がります」(澤山氏)

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今野氏は澤山氏に同意した上で、グローバル投資家が日本のスタートアップに投資する際に求める要件を整理した。一つ目は、澤山氏が語ったようにグローバル共通の指標で理解されやすいか。二つ目は競合度が低く、一定の領域でドミナントを取れるか。三つ目は、その領域で日本が強いと思わせられるか。「この3つのすべてが揃えば言うまでもありませんが、どれか一つでも満たせば、海外資本は動きます」(今野氏)

日本のスタートアップかどうかなんて気にしない

今野氏は日本のスタートアップの強みとして、プロダクトの品質やオペレーションを挙げるが、海外進出の勝敗を分けるものは別にあると語る。それは「人材」だ。

「日本の企業とアメリカの企業では、資本のスケールも人の層も違います。例えば採用に関しても、年俸1000万円の人を10人集めるより、年俸1億円の人を1人雇った方が高いパフォーマンスが出るケースがある。そういう人材を資本を使ってどれだけ集められるか?というパワーローに追随できれば、日本のスタートアップにもチャンスがあります」(今野氏)

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さらに今野氏は、創業者自身が事業を展開したい海外のマーケットに最低でも1〜2年間は身を置き、事業の立ち上げをやり切る覚悟をもった人材であるかも重要だと説明。「海外でのゼロイチの立ち上げは、最も摩擦係数が高い。日本の10倍の大きさのマーケットには、10倍の厳しさがあります。誰かに任せてちょっとアメリカに行ってきて、という話ではない」(今野氏)

澤山氏が重視するのは、CxO人材の英語力だ。投資家に対し、自社のサービスや商品がなぜその国で通用するのか、理由を適切に伝えることはもちろん、コミュニケーションや自らの振る舞いを通じ、自社の経営基盤が世界標準にあると証明する必要がある。

澤山氏はSmartHRがグローバル展開を成功させるキーマンとして、取締役CFOの森 雄志氏を挙げた。楽天出身で英語力堪能な森氏は、シリーズCの資金調達後に同社にジョインしてIR体制を整え、海外投資家と厚い信頼関係を構築。同社の資本政策推進を牽引したという。

他にも好例として、核融合スタートアップの京都フュージョニアリング創業者、長尾 昂氏や小西哲之氏、次世代リチウムイオン電池を開発するテラワットテクノロジーの創業者、緒方健氏の名を挙げた。

さらに、澤山氏はグローバルで勝てる人材を採用できているスタートアップはまだ一握りだと指摘。カルチャーをはじめターゲットとする人材の背景を理解し、英語でその熱量を引き出し、巻き込んでいく力がCxOたちには求められていると述べた。

一方で今野氏は、「いかにローカライズできるか。日本である程度のシェアが取れたから、そのまま海外でも行けると思ったら大間違い」だと釘を刺す。そして、カルチャーやマーケットの商習慣は、日本とアメリカ、あるいはそれ以外の国々で大きく異なるため、各国のマーケットのKSF(キー・サクセス・ファクター)、すなわちどういう攻め方をすれば勝てるかを事前にプランニングすることが大切だと強調した。

「アメリカ人は日本のスタートアップかどうかなんて気にしない『たまたま日本で発祥した会社』だという状態にできるかです」(今野氏)

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文=真下智子 編集=大柏真佑実

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