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2026.03.10 11:51

通信業界は「AIネイティブ」へ、MWC 2026が示す次世代ネットワークの姿

AdobeStock

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バルセロナのモバイル・ワールド・コングレス(MWC)では、AIが「ネットワークを動かす」という売り文句を何年も聞かされてきた。だが今回は違って感じられた。MWC 2026は、AIを通信業界の議論の中心に据える3つの考え方にスポットライトを当てた。第一に、AIが通信業務を補助する段階から、実際に制御ループの内部に組み込まれる段階へと移行しつつあるという点が強調された。また各社は、通信の無線ネットワークが単なる周波数帯域の提供にとどまらず、コンピューティング能力を持つようになりつつあることを示した。そして最後に、通信業界のサプライチェーンが変化しており、半導体企業と通信機器ベンダーがAIネイティブな6Gのルール策定を主導しようとしていることが明らかになった。

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通信業界は、単にパケットやデータを移動させることだけを目的としてきたわけではない。ネットワークが小規模で、トラフィックパターンが扱いやすく、エンジニアがアラートを監視する時間があった時代には、その方針で十分だった。しかし今日のモバイルインフラは、社会の複雑な中間層に位置している。ネットワークは低負荷から高混雑状態へと瞬時に変化し、トラフィックは音声やメッセージングから大容量データ通信へとミリ秒単位で切り替わる。この混雑は、売上の損失、地図アプリの不具合、決済端末のフリーズ、そして急増するカスタマーサポートへの問い合わせという形で表面化する。通信事業者が求めているのは、問題を早期に発見し、封じ込め、しかも電力を湯水のように使わずにそれを実現するシステムである。

半導体と周波数帯域が交差し、誰も取り残されたくない

今週最も重要だった発表は、単一製品の発表ではなく「アライメント(足並みの一致)」をめぐるものだった。Nvidiaは、オープンでセキュアなAIネイティブ・プラットフォームを基盤とした次世代ネットワークの構築に向けて、12社以上のグローバル通信事業者と主要業界プレイヤーからコミットメントを取り付けた。支持企業は業界の勢力図を横断する顔ぶれで、BT Group、Deutsche Telekom、Ericsson、Nokia、SK Telecom、SoftBank、T-Mobile、Cisco、Booz Allenなどが名を連ねた。

Nvidiaのメッセージは、ジェンスン・フアンCEOが各業界で繰り返し述べてきた主張と一貫している。AIがコンピューティングの形を変えつつあり、通信業界もその変化の一部だというものだ。ネットワークの観点から彼は次のように述べた。AI推論とトレーニングがトラフィックの生成・消費される場所に近づくならば、無線アクセスネットワーク(RAN)はAIコンピューティングパワーをホストする戦略的な場所になる。これは新たな経済性、新たなベンダーの影響力、そして新たな統合の課題をもたらす。

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Nvidiaは連合形成にも注力しており、現在130社以上が参加するAI-RAN Allianceの創設メンバーでもある。さらに米国では、FutureG Office主導のOCUDUイニシアチブにも参加し、オープンでソフトウェア定義型のAIネイティブな6Gアーキテクチャの加速を目指している。標準化団体の動きは遅い一方、ベンダーのエコシステムはより速く動く。通信事業者が選択肢を求めているからだ。

ツールとモデル、そしてネットワーク運用の地味な現実

ハードウェアの物語は、この変化の一部にすぎない。NvidiaはMWC 2026で、AIを単に試すのではなく実運用に移行したい通信事業者に向け、オープンソースのツール群を発表した。注目を集めたのは、AdaptKey AIと共同開発した300億パラメータの「Nemotron Large Telco Model」である。このモデルは通信データセットでファインチューニングされ、業界標準に基づき、エッジケースをカバーするため合成ログで学習されている。

ネットワークオペレーションセンター(NOC)の業務はノイズが多い。チケットは不完全で、ログは一貫性がなく、根本原因は連鎖的な障害の背後に隠れている。通信特化モデルは、「ネットワークの専門知識」を再利用可能な推論パターンに凝縮し、通信事業者が採用できるようにするという賭けである。だからこそ、付随する「手引き」が重要になる。NvidiaとTech Mahindraは、NOCエンジニアのように振る舞うAIエージェントの構築を支援することを目的に、オープンソースのガイドを共同で公開した。

いくつかの導入事例と試験は、これが研究室のデモを超えつつある証拠として位置づけられた。Cassava Technologiesは、アフリカのマルチベンダー環境で自律型ネットワーク・プラットフォームを展開している。これはまさに統合ミスが即座に表面化するような環境である。NTT DATAは、日本のティア1通信事業者と同様の設計図を適用し、ネットワーク障害後のトラフィック急増を管理している。これは意思決定の遅れがコストに直結するシナリオだ。

MWCはAIの顧客接点側にも踏み込んだ。Deutsche TelekomとElevenLabsはAI電話通話のデモを行い、ネットワークがリアルタイムで音声とコンテキストを処理できる様子を示した。Indosat Ooredoo Hutchisonは、イベント会場で東南アジア初となる「AI-RANで動くレイヤー3の5G通話」を披露し、AIとRANのワークロードが共有GPUインフラ上で同時に稼働する様子を見せた。同社のヴィクラム・シンハ社長兼CEOは、これをより多くのインドネシア国民にデジタルとAIの恩恵を届ける手段だと位置づけた。

エネルギーとコストという動機

AI-RANが注目を集めている最もシンプルな理由の1つは、エネルギーとコストへの配慮である。通信事業者は電力に数十億ドルを費やしている。基地局はあらゆる場所にあり、トラフィックは断続的で、需要は夜間に落ち込み、イベント時に急増する。AIが未使用セクターのシャットダウン、出力電力の調整、容量の無駄が生じている場所の予測を支援できれば、通信事業者は最適に活用されていない大容量システムに費用をかける必要がなくなる。

SoftBankのデモは、収益面の利点にも踏み込んだ。同社は、AITRAS Orchestratorが特定した余剰コンピューティング能力を、サードパーティのAIワークロードの実行に活用できることを示した。つまり、通信事業者はRANをエッジコンピューティングのマーケットプレイスに変えられる。ネットワークが静かなときに処理サイクルを販売し、オンデマンドのAIコンピューティングデータセンターとして運営できるということだ。もちろんリスクも同様に明白である。通信事業者は、他者の推論ジョブを実行するために顧客体験を犠牲にすることはないだろう。

Ericssonは対照的な戦略で臨んだ。GPUアクセラレーションに傾倒する代わりに、専用設計のシリコンで構築された10種類の新しいAI対応無線機を発表した。特定のネットワークタスクには、専用チップのほうが効率性と低レイテンシを実現できるという賭けである。

これは新しい議論ではない。クラウドプロバイダーは何年も前からこの問題と向き合ってきた。汎用コンピューティングは柔軟性を提供する。専用シリコンは、演算あたりの消費電力(watts-per-operation)と予測可能なパフォーマンスを実現する。通信業界はいま、同じトレードオフに直面している。ただし、アップグレードのペースはより遅く、既存の設備基盤からの要求は厳しい。

MWC 2026が実際に示したもの

MWC 2026は、来年AIが通信を自律的に運用するようになることを証明したわけではない。しかし、業界がAI機能を着実にネットワークに組み込んでいることを示した。オープンインターフェースを中心に連合が形成されつつある。ベンダーは共有コンピューティングモデルをテストしている。通信事業者は本番環境でトライアルを実施する意欲を見せている。これは、通信ネットワークの中心へのAIの移行が、単なる理論上の可能性ではなく、必然であることを意味している。

forbes.com 原文

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