起業家

2026.03.10 11:43

成長の隠れたコスト──多くのリーダーが気づかない落とし穴

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私はこれまで、スタートアップの障害を創造的に乗り越える姿から、疲弊したチームを鼓舞する手腕、さらには経営の常識を根底から書き換えるような采配に至るまで、さまざまな形とスタイルのリーダーシップが発揮される場面を見てきた。だが、どれほど優秀なリーダーであっても一貫して不意を突かれることがある。それが「成功をマネジメントすること」だ。

ここで言う成功とは、個人として成功を管理することではない(もちろんそれも重要である)。スタートアップ段階での成功には特有のマインドセットも求められる。私がここで取り上げたいのは、最もマネジメントが難しい局面の1つである「スケーリング(事業拡大)」において、時間と資源の浪費を避ける方法である。

スケーリングは成功の証だが、同時に複雑さをもたらす

スケーリングの厄介な点は、最初に高揚感を伴うことだ。自社の製品やサービスに市場があることを証明し、その勢いに乗りたいと思う。

しかし、需要が存在していてもスケーリングは容易ではない。なぜなら、規模が10のときに機能していたことは、それを10倍にしようとしたときには同じようには機能しないからである。

成長はしばしば、アップグレードが実装される前に既存の技術やシステムを追い越してしまう。採用が追いつかず、結果として拙速になる。サプライチェーンは需要に引っ張られて逼迫する。カスタマーサポートは質が落ち、ロイヤルティを損なう。

量を増やすと、システムの弱点が露呈することがある。オーナーとして一歩引いてみると、成長が遅延を招き、新たな問題を生み出しているのが見えてくるかもしれない。責任の所在が不明確な箇所をあぶり出したり、あるいは私がよく目にする例として、ビジネスモデルの中核的な問題を解決するためにベンダーネットワークへ過度に依存していることを示したりする。

こうした気づきは衝撃的かもしれないが、珍しいことではない。私が多くの事業オーナーに共通して見てきた最大の問題は、スケーリングに追い込まれてから対応することだ。待ってはいけない。スケーリングが本格化する前に、円滑な成長のための土台が整っているかを確認し、手を打つべきである。

スケーリングを安定させる2つの要素

スケーリングに伴う懸念を早期に抑えたいなら、私は2つの領域に注力することを勧める。標準業務手順(SOP)と、シンプル化である。SOPは、効率と品質を犠牲にせずに成長するために必要なインフラとなる。シンプル化は、予測可能性とコントロールを高める。

スケーリングを乗り切る企業は、物事をシンプルに保つことへ投資するリーダーを擁している。彼らは責任の所在を明確にし、不要な会議を減らし、可能な限り全員に権限を与えようとする。

言い換えれば、成長によって不要な階層が増えることを望まないのだ。同様に、10の規模でも100の規模でも同じように機能するSOPを構築しようとする。

すでに触れた点だが、注意して見ておきたい領域の1つは、中核領域におけるベンダー依存を取り除くことだ。Tesla(テスラ)は自動車・製造業界でこのアプローチを示した。

この電気自動車ブランドは、ゼロタッチの販売体験から車両そのものまで、多数の革新的なアイデアを市場に投入してきた。さらに重要なのは、従来型の自動車サプライヤーのネットワークに依存していない点である。バッテリーやソフトウェア、製造スピードがボトルネックを生んだとき、テスラは自前の解決策を打ち出した。

現在、この自動車大手は独自のバッテリー技術、ソフトウェア、国際的な工場群を大規模に構築している。成長の力を活用して社内のSOPと製造インフラを整備し、それによって次にどこへ向かうかのコントロールを強めたのである。

Giga Energy(ギガエナジー)は、まったく異なる業界で同じ原則を適用した。同社はAIブランドなどの領域でエネルギーインフラと最適化を提供しており、事業運営にとって最も重要な業務のオーナーシップを握ることで成長した。このケースで焦点となったのは、変圧器の必要性である。

十分な変圧器を確保できずに進捗が鈍化したとき、ギガエナジーはベンダーとの会議を増やすことはしなかった。仕事の進め方そのものを再設計したのである。

自社で変圧器を製造すると決めたとき、重要な中核機能を内製化し、自らのコントロールの範囲に取り込んだ。これによりボトルネックが解消され、導入スピードが向上し、サプライヤーへの依存も低下した。その結果、より速く事業運営をスケールできるようになり、高効率な急成長期が生まれた。

産業用途以外でも、「シンプル化と標準化」という考え方は成り立つ。Netflix(ネットフリックス)がエンターテインメント業界で行ったことを思い出してほしい。

同社は他社のコンテンツを郵便で配送する事業からスタートした。デジタル化が進むと、ネットフリックスはストリーミングを主導し、スケーラビリティを一気に拡張した。スタジオ側がライセンス権を引き揚げ、アクセスを制限したときも、同社はそれに付き合わなかった。自社で番組制作を始めたのである。

業界が何であれ、製品であれ、サービスであれ、関係ない。スケーリングに臨むなら、強固なSOPを構築し、あらゆる段階でシンプルさを追求するために時間を割く価値がある。自社のワークフローを見直してほしい。初期のシステムの制約を考えるべきだ。成長を受け止められるよう、意図を持ってどのように拡張できるだろうか。

標準化とシンプル化でスケーリングを合理化する

成功している企業を経営しているなら、断言できる。物事はより複雑になる。スタートアップ期の細部に踏み込むリーダーシップの責務から一歩引くにつれて、問題や遅延が次々に表面化する。

重要なのは、成長の過程でこうした複雑さが不必要な形で足かせにならないよう、適切なシステムとマインドセットを採用することだ。

ベンダー依存(特にコアコンピタンスに関わる部分)を簡単に監査しよう。ワークフローを見直し、SOPを改善できる領域を探そう。チームメンバーがどれほど権限を与えられているか、あるいは細かく管理されすぎていないかも検討すべきである。

この領域で先手を打ち、賢いスケーリングに取り組めば、それが生み出す隠れたコストを回避できる。その結果、企業が勢いを得るなかで、可能な限り多くの機会を生かせる、より滑らかな成長フェーズへとつながるのである。

forbes.com 原文

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