経済

2026.09.08 22:12

提案された「5%の富裕税」、実現が困難な3つの主要理由

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バーニー・サンダース上院議員とロー・カンナ下院議員は、10億ドル超の資産を持つ米国のビリオネア約900人に対し、年5%の富裕税を課す法案を提出し、注目を集めている。「Make Billionaires Pay Their Fair Share Act」と題されたこの法案は、ビリオネアに毎年、保有資産の5%を税として支払わせ、その税収を医療、住宅、教育のニーズに充てるというものだ。このビリオネア税は一見シンプルな解決策に見えるが、実施に際しては3つの主要な問題に直面することになり、そもそもの実現可能性に疑問を投げかけている。


サンダース氏とカンナ氏が提案するビリオネア向け富裕税

民主党の両議員による富裕税法案は、設計も実施もシンプルだ。サンダース氏とカンナ氏は、暦年の総資産が10億ドル超(2026年以降はインフレ調整)の米国の高資産個人に対し、その資産の5%を米国に納めることを提案している。法案は、既婚の納税者を単一の納税者として扱う。また、富裕層の資産をより容易に追跡できるようにする「資産登録制度」の整備に加え、富裕税の納税義務を負う納税者の50%以上を監査するという厳格な監査率の規定も盛り込む。サンダース氏とカンナ氏は、938人のビリオネアがこの税の対象になると見積もっている。

このような富裕税から生み出される税収は莫大なものになりうる。たとえば、カリフォルニア大学バークレー校の経済学者エマニュエル・サエズ氏とガブリエル・ズックマン氏は、この法案が成立すれば今後10年間で4兆4000億ドルの税収が見込まれると試算している。これは、イーロン・マスク氏のようなビリオネアに5%を課税し、推定資産を8330億ドルから7920億ドルへと引き下げることで実現するという。

しかし、ビリオネアは毎年5%の富裕税の対象となるため、税負担は積み重なる。継続的な課税により、米国のビリオネアの資産は毎年5%ずつ徐々に目減りしていく。サエズ氏とズックマン氏は、15年間でビリオネアの資産が半減すると試算している。

その結果得られる財源は、米国全体の経済格差是正に活用できる。サンダース氏とカンナ氏の提案によれば、所得が15万ドル未満のすべての米国人に3000ドルの直接給付が支給され、4人家族では最大1万2000ドルとなる。また、最近の削減を踏まえると特に緊急性が高いメディケアとメディケイドの財源にも充当される。住宅については、700万戸超の手頃な価格の住宅の建設で対応するとしている。幼児期の保育・教育に関しては、どの家庭も保育費に所得の7%以上を支払わなくて済むようにするとともに、公立学校の教員全員に年6万ドルの最低年収を保証する。

提案された富裕税の3つの主要な問題点

サンダース氏とカンナ氏が提案する富裕税の論理や理屈は明快に見えるかもしれないが、実施には以下の3つの主要な理由から問題が生じうる。

(1)富裕税は合憲性の問題に直面する

米国憲法修正第16条は、連邦議会が所得に課税することを認めている。しかし、この修正条項は資産(wealth)への課税を認めていない。The Washington Postが報じたように、資産への課税には一定の可能性はある。だが、仮にこの提案が法制化されるという高いハードルを越えたとしても、同記事は、直ちに憲法上の異議申し立てに直面し、最高裁で脆弱になりうると示唆している。

この法律を憲法に組み込むには、はるかに高いハードルが必要となる。たとえば、単に上下両院を通過して大統領が署名し成立するのではなく、憲法改正には下院・上院の双方で3分の2の賛成に加え、州議会の4分の3の承認が必要だ。言い換えれば、この法案は連邦議会での圧倒的多数の支持と、州からほぼ全会一致に近い支持を必要とする。

この法案が連邦議会で成立した単なる法律にとどまる場合、反対派は直ちに、憲法修正第16条の対象外であるとして異議を唱えることができる。この考えは、Forbesが報じたように、多くの批判者が違憲だと指摘してきたカリフォルニア州のビリオネア税案への反対論とも並行する。

(2)個人の資産額の確定は容易ではない──富裕税の算定式を制約する

理論上は、ある人物の資産に課税することは、毎年12月31日の銀行口座を見て、いくらあるかを評価するだけで済むかもしれない。実際、株式保有によって巨額の資産を持つ人であっても、ポートフォリオに対して課税評価を行うだけで簡単に見えることもある。しかし難しさは、その他の資産をどう扱うかにある。

たとえば、不動産の価値は主観的で、評価が難しいことがある。この問題は、超富裕層が保有する極めて高額な不動産をめぐっては、比較可能な資産が存在しないため、さらに深刻化する。そして、美術品、宝飾品、家宝といった値付けが困難な資産を考慮すると、問題は不可能に近い領域に突入する。こうした資産に信頼でき、かつ正当化可能な評価額を付すことは非常に主観的であり、長期にわたる紛争につながりがちである。

この問題の究極的な難しさは、課税当局と個人の間で資産額の認識が一致しない場合にどうするかという点に集約される。最終合意に至るには、すべての関係者にとってコストのかかる長期の法廷闘争を要する可能性がある。

(3)富裕税の実際の実施は困難を伴う可能性がある

納税者側から見れば、毎年数十億ドルを支払うことを強いられても、日常生活に影響はないかもしれない。しかし、この納税者やその会社に流動資金がない場合はどうなるのか。この問題は現在カリフォルニア州で顕在化しており、提案された富裕税の影響を受けうる一部のビリオネアは、納税のために自社株の相当部分を売却せざるを得なくなる可能性があるとForbesは報じている。Nvidia、Tesla、Appleの株式が一夜にして大量に換金されれば、特に流動性の低い市場では下落圧力を生みうる。

政府側から見れば、実際にこの資金を徴収することが難題になりうる。American Enterprise Instituteが論じたように、10年で4兆4000億ドルという推計は、徴税計画の多くが過度に楽観的であるため、あまりに高すぎる見積もりだという。同記事は、富裕層の納税者は資産を隠すことに長けている点を強調している。

資本逃避への懸念もある。法案は、納税者が国外に逃れても納税義務が残るように書かれているが、2つの重要な考慮が見落とされている。第1に、納税者はそれでも国外に出て、税の支払いを拒み、米国に戻らないという選択ができる。この納税者には、出国税や国外移住に伴う罰則が適用されうる。それでも、この極端なシナリオであっても、数十億ドルを守るために市民権を放棄する納税者が少なくとも1人いることを想定するのは不合理ではない。第2に、富裕税は、納税者が米国で事業を行う意欲を削ぐ。キャリア初期の起業家は、事業が成功すれば富裕税の対象になることを恐れ、シリコンバレーではなく欧州やアジアで起業することを選ぶかもしれない。


以上の3点は、富裕税に伴う懸念の多くを要約するものだが、最後に考慮すべき重要な理由として、富裕税は設計通りに機能しないことが多い点が挙げられる。フランスを含む複数の国は、資本逃避への懸念や、行政コストに見合わない限定的な税収を理由に、富裕税を縮小または廃止してきた。理由が何であれ、この野心的な提案は現状に対する興味深い挑戦であり、米国の将来の課税のあり方について連邦議会に検討材料を提示している。

forbes.com 原文

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