暗号資産

2026.03.18 17:30

通貨危機の国でインフラ化するステーブルコイン、人々の生活と貯蓄を守る「もう1つの通貨」へ

akif - stock.adobe.com

ステーブルコインの大部分が米ドル建てであることは、政治的な弱点となる可能性

ステーブルコインの99.9%が米ドル建てであることは、その強みである一方、政治的な弱点にもなり得る。Orbitalのウィングフィールド・ディグビーは、ドルが支配的であることには実務的な理由があると筆者に説明した。「これらの送金ルートで行われる国際取引の大半は、もともと米ドル建てだからだ」。

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自国通貨建てのステーブルコインの発行を可能にする規制

しかし、新興国の中央銀行は、たとえそれがステーブルコインであっても、金融活動の大部分が米ドルへと移っていく状況を快く思っていない。ウィングフィールド・ディグビーは、今後は次のような流れが生まれると見る。

まず、ブロックチェーン上の商取引が広がり、それが需要を生む。次に、現地通貨建てのステーブルコインが必要になる。そのためには地元銀行の支援が不可欠であり、最終的には現地の規制整備が求められる。

「こうした市場では、自国通貨建てのステーブルコインの発行を可能にする規制が整備されるだろう。そして、それが米ドル建てステーブルコインへとつながる入口になる」と彼は語った。

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すでにドル以外の成功例もある。ユーロ建てステーブルコイン「EURC」の月間取引件数は、2025年に5万件から44万5000件へと約10倍に増加した。Orbitalの第4四半期レポートによると、EURCは現在、ドル建て以外のステーブルコイン取引の99%を占めている。

ただし、市場規模は依然として小さい。3110億ドル(約49.4兆円)に達するドル建てステーブルコイン市場に対して、ユーロ建てステーブルコインの時価総額は約5億ユーロ(約915億円。1ユーロ=183円換算)にとどまっている。ステーブルコイン市場におけるユーロとドルの格差は、従来の外国為替市場よりもはるかに大きい。新興国通貨が独自のステーブルコイン市場を築けるかどうかは、各国の規制当局がどれだけ迅速に動くかにかかっている。

米国市場が開かれるまでは、金融システム周縁で使われていた技術

ウィングフィールド・ディグビーは、現在の状況をこう位置づける。「米国市場が開かれるまでは、この技術は金融システムの周縁で使われていただけだった」と彼は語る。

しかし、その「周縁」こそが、この技術が最も必要とされる場所でもある。アルジェリアの首都アルジェでステーブルコインを通常の倍の価格で購入する労働者は、投機をしているわけではない。自分の貯蓄を守ろうとしているのだ。ボリビアのラパスで70%のプレミアムを払う家族も、高い利回りを追い求めているわけではない。週末まで価値を保てるかどうかも分からない自国通貨に備えるため、ステーブルコインに頼っている。

主流の金融業界も動きに目を向け始め、ステーブルコインの発行に関する枠組みが成立

そして現在、主流の金融業界もこの動きに目を向け始めている。決済大手ストライプはステーブルコインプラットフォームBridgeを11億ドル(約1749億円)で買収した。VisaやWorldpay、Revolutもステーブルコイン決済のインフラを取り込みつつある。米国では2025年7月、ステーブルコインの発行に関する連邦レベルの枠組みを定めるGENIUS法が成立した。

こうした動きが秩序ある規制につながるのか、それとも利用を地下へと追いやるのか。その行方が、ステーブルコインが正式な金融システムへの「橋」になるのか、それとも並行して存在するもう1つの金融システムにとどまるのかを左右する。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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