暗号資産

2026.03.18 17:30

通貨危機の国でインフラ化するステーブルコイン、人々の生活と貯蓄を守る「もう1つの通貨」へ

akif - stock.adobe.com

新興国でステーブルコインを利用するユーザーの多くは、労働者や商人

新興国でステーブルコインを利用する典型的なユーザーは、投機家ではない。その多くは労働者や商人、あるいは家族に送金する人々だ。

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世界のステーブルコイン取引の件数ベースで約40%を処理しているBNB Chainでは、送金の82%が1000ドル(約16万円)未満で、99%は1万ドル(約159万円)未満だ。平均取引手数料は約0.05ドル(約8円)にすぎない。また、加盟店が受け取るステーブルコイン決済の約3分の2は、消費者の取引所口座から直接送金されている。新興国の暗号資産ユーザーの50%以上はBinanceやOKXを通じて市場に入った。

BNB Chainの成長部門ディレクターのニナは、同チェーンが扱う取引額のシェアに比べて取引件数が非常に多い理由について、ユーザー層が反映されていると説明する。「私たちのユーザーは必ずしも機関投資家ではない。いわゆる普通の人々が多い」と彼女は語る。

地域レベルのデータも同じ傾向を示している。調査会社Venturebloxxが2026年2月に発表したレポートによると、ラテンアメリカのステーブルコイン取引額は2021年から2024年の間に9倍に増え、約270億ドルに達した。

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従来の金融システムが抱えるコスト構造の問題を示す海外送金市場

従来の金融システムが抱えるコスト構造の問題を最もはっきりと示している分野の1つが海外送金市場だ。フィンテック企業の中でも比較的手数料が低いとされるWiseを使ってコスタリカに40ドル(約6360円)を送金すると、手数料は約8ドル(約1272円)かかる。最も単純な送金でさえ、20%の手数料を支払わなければならない計算だ。

PolygonのCEO、解決策としてステーブルコインを挙げる

Polygonのマーク・ボワロンCEOは、こうした問題の解決策としてステーブルコインを挙げる。「私たちには、国際送金を国内送金と同じ感覚で行えるものに変えるチャンスがある」と彼はインタビューで語った。その仕組みは単純だ。「世界中の支払いを、単一のグローバル台帳で処理すればいい」。

Polygonは最近、ウォルマートなどの小売店舗に設置された現金の「オンランプサービス」を運営する企業CoinMeの買収に動いている。利用者はレジで現金を渡し、バーコードを読み取ることで、数ドル(数百円)の手数料でステーブルコインを受け取れる。ボワロンによると、2026年1月にはPolygon上のアプリケーションで20億ドル(約3180億円)以上の決済取引が処理された。

ボワロンが描く将来像は、単に送金コストを下げることにとどまらない。彼は、将来的には受取人がステーブルコインを自国通貨に交換する必要すらなくなると考えている。利用者はステーブルコインをそのまま保有し、加盟店で直接支払ったり、分散型金融(DeFi)のプロトコルに預けて利回りを得たりするようになるという。

そうなれば、自国通貨への交換手数料(オフランプ手数料)は消える。そもそも自国通貨に戻す必要自体がなくなるからだ。

ステーブルコイン決済のコンプライアンスには、「より高い基準の原則」と呼ぶ考え方が必要

一方、低コストな決済手段だからといって、監督が弱まるわけではない。暗号資産カード企業Rainに勤務し、米財務省で6年間働いた経験を持つケビン・カーは、ステーブルコイン決済のコンプライアンスには、彼が「より高い基準の原則」と呼ぶ考え方が必要だと語る。これは、各国の規制の中で最も厳しい要件を取り入れ、それを世界全体に適用するというものだ。

ただし、この原則は実際の運用では障害に直面する。例えばコスタリカには、標準化された住所表記が存在しないため、多くの人はWhatsAppの位置情報を使って場所を示している。この状況で本人確認(KYC)の仕組みを構築するのは不可能に思えるが、カーはこうした問題は決して新しいものではないと指摘する。

「コスタリカのように住所が標準化されていない地域に対応できない仕組みでは問題だ。米国の規制も、標準的な住所が存在しない地方の郵便局などを前提に設計されている。同じ発想は世界でも通用するはずだ」と彼はインタビューで語った。

本人確認の仕組みは、実際の取引を継続的に監視するプロセス

カーはまた、KYCは1度きりの確認ではなく、継続的なプロセスだと説明する。まず顧客を特定し、その顧客の取引プロファイルを作成する。そのうえで、実際の取引がそのプロファイルと一致しているかを継続的に監視する。取引がプロファイルと一致しなくなれば、そこで調査が行われる。

利用者との関係を中間業者の層で切り離すほど、不正を見つけにくくなるリスク

彼は、フィンテック特有のリスクにも言及する。「フィンテック企業には、最終的な利用者との関係を中間業者の層で切り離してしまう傾向がある」とカーは語る。「その“中抜き”には明確なリスクがある。コンプライアンス担当者と実際の顧客の間に入る層が増えるほど、不正や問題を見つけにくくなるからだ」。

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翻訳=上田裕資

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