アルジェリアでは、米ドルに連動するステーブルコインの価格が公式為替レートを97.4%上回っている。これは、ステーブルコインが自国通貨よりも価値を保ちやすいと見られているため、プレミアム(通常価格よりも高い価格)を支払ってでも保有したい需要が高いためだ。ボリビアではそのプレミアムが70.5%、ベネズエラでは40.6%に達している。
この価格差は、新たなトークンで利益を狙う暗号資産トレーダーが生み出した投機的なプレミアムではない。価値が急速に下落する自国通貨から逃れるために、人々が支払っている代償だ。
2025年第4四半期の「Orbital Stablecoin Premium/Discount Index」によると、(米ドルに連動する)ステーブルコインの実際の購入価格と本来の価格との乖離は、国家通貨がすでに実質的に機能不全に陥っている国々を映し出している。危機的状況にある経済圏ほど数値が高く、規制整備が進んだ国の数値はゼロ(数ベーシスポイント)に近い。この数値はステーブルコインが「限られた人のための避難先」から「すべての人のための決済手段」へと社会実装されるプロセスを測る物差しともされる。
開発途上国の多くで、ステーブルコインが並行通貨として機能し始めている
ステーブルコインは現在、開発途上国の多くで静かに並行通貨として機能し始めている。取引の99.9%以上は米ドル建てで行われており、ドルは銀行支店が存在しない地域や、自国通貨が価値保存の手段として機能していない国々にまで影響力を広げている。
2025年には、1万ドル(約159万円。1ドル=159円換算)未満の小口ステーブルコイン取引が約10倍に増え、件数は3億1600万件から32億件に拡大した。その増加の大半は新興国市場で起きていた。BNB ChainやPolygonといったブロックチェーンでは、1回の取引手数料は0.05ドル(約8円)未満にとどまる。多くの地域では、そのコストは最寄りの銀行まで行くバス代よりも安い。
経済の実態を浮き彫りにする、ステーブルコインと購入プレミアム
ステーブルコインに付くプレミアムは、GDP統計やインフレ率では見えにくい経済の実態を浮き彫りにしている。アルジェリアで観測された97.4%の購入プレミアムは、通貨安と厳しい資本規制が重なった結果だ。公式ルートではドルをほとんど入手できない状況にある。ボリビアの70.5%のプレミアムも、数年にわたる通貨危機の影響を反映している。この危機は同国の経済を崩壊寸前まで追い込んできた。
ベネズエラでは、2025年に現地通貨ボリバル建てのドル価格が約480%上昇した。資本規制が続く中で、ステーブルコインには40.6%のプレミアムが付いている。
地域別に見ると、中東・北アフリカの平均購入プレミアムは16.3%だった。ラテンアメリカは7.6%で、ボリビアとベネズエラが平均を押し上げている。アジアの平均は、4.2%だが、タジキスタン(19.6%)やトルコ(約18%)はそれを大きく上回った。欧州は、2.3%にとどまり、先進国の金融市場が比較的効率的に機能していることを示している。ラテンアメリカで唯一ディスカウントで取引されていた国は、コロンビアで、マイナス0.34%だった。
購入プレミアムと規制環境の密接な関係
ステーブルコイン決済企業Orbitalの共同創業者、ルーク・ウィングフィールド・ディグビーは、このプレミアムが規制環境と密接に関係していると説明する。「ステーブルコインや暗号資産の扱いがグレー、あるいは違法に近い市場では、プレミアムははるかに高くなる。銀行が関連取引を禁止していることが多く、ステーブルコインを購入するのが非常に難しいからだ。規制が明確になり始めると、プレミアムは急速に縮小していく」と彼はインタビューで語った。
メキシコとブラジルはその典型例だ。両国はデジタル資産の規制整備を進めており、現在では、ステーブルコインの価格はスポット為替レートとほぼ同水準で、プレミアムも数ベーシスポイント程度にとどまっている。



