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2026.03.10 10:48

なぜ私は再びCEOになったのか──コーチング経験が教えてくれた「整合性」の重要性

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2015年、大手国際メディアネットワークの事業部門CEOに就任したとき、私が足を踏み入れたのは一見順風満帆なポジションだった。強力なブランド、堅調な業績。しかし内側に入ってみると、別のものを感じた。足元の地面が動いているのだ。

D2C(消費者直接販売)は「将来のトレンド」ではなかった。すでに消費者行動と、注目(アテンション)の経済性そのものを変えつつあった。NetflixやAmazon Prime Videoのような企業は、視聴者に別の期待を学習させていた。即時に、個別に、オンデマンドで、という期待である。

このときの経験は、今も拠り所にしている教訓を強固なものにした。足元が動くとき、明確さは「あれば望ましい」ものではない。それが仕事なのだ。

恐怖を生まずに緊迫感をつくる

私は恐怖に駆り立てられる組織を望まなかった。目覚めた組織を望んだ。そこで私たちはデジタルサミットを開催した。形式的な企業イベントではなく、本当の学びの場として、破壊的変化、新興テクノロジー、そしてD2Cが私たちにとって何を意味するのかを探った。現実を一緒に言語化した。私の経験では、人は変化に抵抗するのではない。混乱と矛盾したシグナルに抵抗するのである。

やがて私は、いまコーチとしての仕事で常に目にするリーダーシップの逆説に突き当たった。ビジョンと戦略を経営チームに共同設計してもらう必要がある一方で、私がファシリテーターであり続けながら、同時に完全な参加者でいることはできなかった。

また、コンサルティング会社にスライド資料を作ってもらうことも望まなかった。チームが本当に成果を自分たちのものにできるよう、確かなプロセスを強く保持したかった。そのとき私が探し始めたのは、私たちのために「戦略をやってくれる」会社ではなく、私たち自身が難しい思考をやり切れるよう支援してくれるファシリテーターだった。

いまも鮮明に覚えている。ファシリテーターが、私の経営チームに対して、それまで見たことのないやり方で働きかけていた。高い温かさと高い基準の両立。プロセスは緊密で、トーンは人間的で、その結果、真の明確さが立ち上がった。この経験は、いまも私が信じている考えを形づくった。最高のファシリテーションは依存を生まない。集合的なオーナーシップを育てるのだ。

成果物(デジタルのビジョン、戦略上の選択、実行可能な計画)は、その役割における私の最大のレガシーとなった。次の2年間、私たちが勢いをもって実行できたのは、チームが単に「計画に足並みをそろえた」からではない。彼らがそれを一緒に創ったからだ。人間性を伴って守り抜かれる「いちばんシンプルに機能するもの」は、複雑さに常に勝る。

私が企業を離れた理由

40歳で、私はメディアを離れ、ポートフォリオ型のキャリアを築いた。取締役、エグゼクティブコーチング、アドバイザリー、教育である。目的を持った選択だったが、直線的ではなかった。最初の取締役ポジションで「イエス」を得るまでには、試行錯誤と忍耐、そして多くの不採用が必要だった。

柔軟性は自由をもたらすが、言い訳も奪う。既定の出世階段を登っていないとき、勢いの陰に隠れることはできない。選ぶしかない。

この時期に私はエグゼクティブコーチとして訓練を受け、活動した。キャリアの転換期、新しい役職、再出発に向き合うリーダーたちを支援した。この期間を通じて私は一つのことを認識した。私が最も愛した仕事は、戦略、リーダーシップ、そして実際の行動変容が交差する地点にあった。

この種の仕事を深めるための適切な基盤を探すにあたり、私は自問した。「なぜこれなのか、そしてなぜ今なのか」。答えは明確になった。自分の目的、経験、価値観と精密に整合していることが重要だ。私にとってそれは、コーチング、リーダー育成、組織変革だった。

文化的にも、清々しいほど本物に感じられた。専門用語に頼らない。見せかけではない。仕事は、出来合いの答えからではなく、発見と診断から始まる。私は厳格なアプローチで深く訓練を受けた。取締役会や経営チーム向けの戦略案件を担い、経営幹部をコーチし、ファシリテーションの卓越性についてリーダーを訓練し、取締役としての幅広い活動や高等教育の現場での活動と並行して取り組むようになった。

再び引き戻された

完全に独立したままでいることもできた。しかしあるパターンが繰り返し現れた。組織の内側に入ると、私は摩擦点に気づいてしまうのだ。提供価値を強化できる機会、顧客体験を研ぎ澄ませる余地、品質をスケールさせる方法、チームをより意味のある形で支える可能性。私はそれを気にかけた。抽象的にではなく、身体感覚として。

それこそが、人々がときにリーダーシップの選択について過小評価する点である。自分が得意なことだけを選ぶのではない。自分が背負う覚悟のあるものを選ぶのだ。

時間とともに、私の役割は拡大していった。変革の仕事を率いるところから、コーチングの実践を強化し、オペレーションのリーダーシップに踏み込むまでに。そして2026年1月、私はCEOになることを引き受けた。人からは時々こう聞かれる。「柔軟性を築いた後で、なぜまたCEOというフルの役割を?」。それは、柔軟性を築いた後だからこそ、私はインパクトとレガシーを選んだのだ。

要点:機会だけでなく「整合性」を検証する

大きなリーダーシップの転機を検討しているなら、私は4つの質問を書き出すことを勧めたい(頭の中で考えるだけではなく)。

1. なぜ今なのか? 市場、あるいはあなた自身の中で、何が変わったのか。

2. なぜこのミッションなのか? 肩書がなくてもそれを選ぶか。

3. なぜこのチームと文化なのか? ここでの働き方は、あなたが最高の仕事をすることを可能にするか。

4. なぜあなたなのか? この局面が求めるものに対して、あなたがもたらす具体的な優位性は何か。

それらの答えが明確になれば、前進力が生まれる。あなたのストーリーがうまく聞こえるからではなく、実際に良いからだ。人は整合性を感じ取る。私は現在の組織でCEOになった。何年にもわたり、ほかの組織が「現状から目指す姿へ」移行する支援を続けた結果、その仕事を毎日行う会社を自分が率いたいと気づいたからである。

柔軟性を築いた後、私はインパクトとレガシーを選んだ。なぜなら、ときに最も大胆な一手は方向転換ではなく、自分がすでにそれをするために築かれていることに全面的にコミットすることだからだ。

forbes.com 原文

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