マーケティング

2026.03.10 10:34

なぜ競合分析だけでは不十分なのか──B2Bポジショニングの新常識

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ベストプラクティスでは、ポジショニングは4つの重要なレンズ――カテゴリー、顧客、競合、自社の能力――を通じて診断し、構築すべきだとされる。

多くの企業は、競争が重要であることを理解している。競合を分析し、機能の同等性を追跡し、違いを強調するメッセージングを構築する。問題は、意味のあるポジショニングをつくるのに必要な競合セットではなく、「明らかに見えるもの」を基準に競合を定義してしまう点にある。

彼らは注目を集めている競合――アナリストレポートを席巻するカテゴリーリーダー、資金力のあるスタートアップの喧噪、頻繁に目にするマーケティングを展開するベンダー――に固執する。そして次の2つの誤りのどちらかを犯す。1社だけを選んでその相手に対してポジショニングするか、あるいは競合それぞれに対して個別にポジショニングし、対戦カードごとに異なるポジショニング資産をつくってしまうのだ。前者は定義上、射程の狭いポジショニングになる。後者は、私たちが「ポジショニング統合失調」と呼ぶ状態――矛盾する物語が買い手を混乱させ、社内の足並みを崩す――を生む。

欠けているのは、体系的な競合診断である。案件で一貫して顔を出す実証済みの直接競合、変化がリスキーに感じられるときに買い手が既定路線として選ぶ現状維持の代替、同じ「仕事」を別のやり方で解決する間接的な解決策、そして暗黙の期待を形づくる憧れの基準。重要なのは、買い手の意思決定を形づくる力の総体を理解し、それらすべてに対して独自の選好を生み出すポジショニングを構築することだ。

これが緊急の課題である理由がある。Harvard Business Reviewの研究によれば、B2Bの購買プロセスの40%〜60%は「何も決めない」で終わる。競合に負けるのでもない。現状維持を選ぶのでもない。完全な麻痺である。真の競争課題とは、買い手がそもそも誰も選べない状況を生む惰性、混乱、リスク回避を打ち破ることにある。

4層の競合マップ

ここでは、4つの異なる競合レイヤーに焦点を当て、ベストプラクティスの診断アプローチを解きほぐしていく。

・直接競合:購買プロセスに一貫して登場する、実績あるプレイヤーである。ショートリストに並び、価格比較の対象となり、買い手が能動的に評価する代替案だ。彼らを理解することは不可欠だ。しかし彼らだけを相手にしたポジショニングは、買い手がすでに「動く」と決めている場合にしか機能しないメッセージングを生む。

・間接競合:異なるアプローチや文脈で、同じジョブ・トゥ・ビー・ダンを解決する売り手である。隣接する技術やカテゴリーであることもある。たとえばマーケティングオートメーションのプラットフォームは、スプレッドシート、フラクショナルCMO、社内チームがポイントソリューションをつなぎ合わせて運用するやり方とも競合する。こうした代替案をポジショニングが認識していなければ、あなたは自社カテゴリーで能動的に買い物をしていない市場の大多数に対して不可視になる。

・憧れの競合:まったく別のカテゴリーで事業を行っていても、買い手の頭の中で卓越性の基準をつくる存在である。「ワールドクラス」とは何かを定義するブランド――Appleのプロダクト体験、Amazonのオペレーション効率、Salesforceのカテゴリー支配のようなものだ。買い手は口にしない場合でも、常にそれらと比較している。だからこそ、ポジショニングはこうした暗黙のベンチマークを踏まえる必要がある。買い手は心の中で問いかけている。「私が使っている最高のソフトウェアと同じくらい、よく設計されていると感じられるか?」と。

・置き換え価値の競合:変化そのものがもたらすコストとリスクを表す選択肢である。「十分に良い」レガシーシステム、非効率でも安心に感じられる既存プロセス、そして組織変革に伴う強い惰性が含まれる。あらゆるB2B購買では、現状を崩すことを誰かが擁護しなければならない。ポジショニングがその攪乱を「やる価値が明らかだ」と思わせられなければ、現状維持がデフォルトで勝つ。

「何も決めない」が40%〜60%に達するのは、問題を認識してから解決にコミットするまでのギャップにおいてである。多くの企業は、競合情報レポートやアナリストのクアドラントには現れないため、この力を体系的に過小評価する。そしてそれは、ポジショニングの対応として扱わなければならない。

単一競合を相手にするポジショニングが失敗する理由

一部のポジショニングコンサルタントは「集中」を唱え、主要な競合を1社選んでその相手に対してポジショニングすべきだと助言する。その特定の比較を軸にメッセージを組み立て、選択を二者択一にするのだ。この助言は、買い手は対応可能で、整然としたカテゴリーへ事前に分類された状態で現れるという前提に立っている。現実はそうではないし、そうならない。

あなたのソリューションを評価する見込み客は同時に、直接の代替案、内製するかどうか、現状のやり方が本当に直すべきほど壊れているのか、そしてあなたのソリューションが、彼らが体験してきた最高のソフトウェアがもたらした暗黙の基準を満たすかどうかを考えている。

1社に対してしか機能しないポジショニングは、買い手が現実のトレードオフを行き来した瞬間に崩れる。さらに悪いことに、競合の組み合わせごとに異なるメッセージを用意してしまうと、「自分たちは何者で、何を真に重視しているのか」が曖昧になり、混乱を招く。

社内のアラインメントには、何と戦っているのかについての共通理解が必要であり、買い手があなたを選ばないようにしている力の総体を認識することが求められる。チームが、直接の競合、現状維持、DIYの代替案、憧れの基準に対して、1つの首尾一貫したポジショニング・ナラティブで「なぜ勝てるのか」を語れるとき、圧力下でも崩れないアラインメントを生み出せる。

あらゆる相手に勝つポジショニングを構築する

ポジショニングは、買い手がどの競合に言及したかによって変わるべきではない。中核となる差別化要因――解決する喫緊の問題、創出する価値、そしてそれをあなたが独自に実現できる理由――は、競合セット全体にわたって一定であるべきだ。

変わるのは、その下流の強調点と証拠である。直接競合に対しては、相手が真似できない能力の組み合わせを強調する。現状維持に対しては、不作為のコストを定量化して強調する。内製の代替案に対しては、スピードとサービス提供を強調する。憧れの基準に対しては、彼らが卓越性として認識する水準を、あなたが発揮できる具体的な文脈を強調する。

ここで求められるのは、買い手が行き来するあらゆる競争文脈に対して守り切れる、識別しやすく記憶に残る「ポジショニングの錨」を1つ持つことだ。そのうえで、ユースケースのレベルでメッセージングによって価値提供を調整できる柔軟性を備える。

ポジショニングで勝つ企業は、優柔不断、惰性、そして買い手がショートリストに到達する前に検討していた何十もの代替案に打ち勝つ。それこそが、「真の競合勢力」を診断することの本当の意味である。

forbes.com 原文

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