経営・戦略

2026.03.10 09:51

AIリストラの勝者と敗者:人員削減で株価が上がる企業の真実

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先週、ジェイミー・ダイモンは投資家の前に立ち、多くのCEOが口にしないことを言った。JPモルガン・チェースではAIによってすでに従業員の仕事が置き換わった、というのだ。続いて彼は、その後に起きたことを説明した。同行は彼らを解雇しなかった。別の役割へと配置転換したのである。総従業員数はおよそ31万8500人で横ばいだった。オペレーション部門とサポート部門の人員はそれぞれ4%と2%減少。顧客対応および収益創出に直結する職務は4%増えた。その結果、オペレーション担当者は1人あたり扱う口座数が6%増加し、単位あたりの不正コストは11%低下、ソフトウェアエンジニアの生産性は10%向上した。

これこそが、実際にうまく機能するAI主導の人員変化である。だが、多くの企業が実行しているのは、このバージョンではない。

市場が支払っているのは成果ではなく「解雇通知」だ

2026年には、異例のことが起きている。企業が「自動化」や「変革」を掲げて数千人規模の人員削減を発表すると、株価が上がるのだ。必ずしも自動化が機能しているからではない。投資家が、人件費が縮み利益率が拡大する未来を織り込むからである。自動化の「意図」そのものが、自動化が実際に機能する前から、企業価値評価を押し上げる触媒になってしまった。

UPSが最もわかりやすい例だ。同社は2025年に4万8000人の雇用を削減し、その内訳はオペレーション職がおよそ3万4000人、管理職が1万4000人である。さらに同社は、より小規模な施設を巨大な自動化ハブへ統合する「Network of the Future」構想を通じて、2026年に最大3万人を追加削減する計画だ。キャロル・トメCEOは、およそ200の施設を閉鎖し、最終的には完全自動化の建物400棟を運用する計画だと説明している。同社はロボティクスに1億2000万ドルを投じ、2028年までに30億ドルのコスト削減を見込む。

フェデックス(FedEx)も、別の角度から似た物語を語る。同社のDRIVE変革プログラムは、2025年度に22億ドルの恒久的なコスト削減を実現し、2026年度はDRIVEとNetwork 2.0を通じてさらに10億ドルを目標としている。同社は2027年末までに475超の拠点を閉鎖すると見込み、これは施設全体の約30%に相当する。株価は最近387ドル近辺で推移し、直近30日でおよそ24%上昇した。投資家向け説明会で2029年までに営業利益80億ドルへの道筋を示したことが背景にある。

いずれのケースでも、市場が評価しているのは成果ではなくロードマップである。UPSはいまも旧ネットワークの解体に取り組んでいる。フェデックスは通期見通しを引き上げたが、売上高の伸びは依然として控えめだ。株価の動きは、自動化が今日もたらしているものではなく、自動化が完全に展開された後に企業がどう見えるかという投資家の期待に左右されている。

実際にうまく回っている企業

期待と実態のギャップが重要なのは、すでに一部の企業が「人員の自動化」から「AIが測定可能な売上を生み出す」段階へ越境しているからだ。

際立つのはメタ(Meta)である。同社のGEM(Generative Ads Recommendation Model)は2025年半ばに広く展開され、いまではメタの従来のランキングモデルに比べて、広告パフォーマンスを引き上げる効率が4倍だと説明されている。2025年第4四半期には、メタの動画生成ツール群が合算で100億ドルの売上ランレートに達し、広告売上全体の伸びのほぼ3倍のペースで成長した。GEMの学習を支えるGPUは倍増し、増分アトリビューション機能によって増分コンバージョンが24%増となった。第4四半期の広告売上は581億ドル。マーク・ザッカーバーグCEOは、この成長をAI統合に直接帰した。

メタが異なるのは、AIが単にコストを削っているのではない点だ。クリエイティブ制作からオーディエンスのマッチング、最適化まで広告配信チェーン全体を自動化し、新たな収益を生み出している。広告主はもはやターゲットオーディエンスを定義する必要がない。システムが「誰が何を見るべきか」を割り出し、有料・オーガニック双方のインタラクションから学習し、継続的に改善する。人の役割は、機械を操作することから、より良いクリエイティブの入力を与えることへと移った。

JPモルガンは、同じ原理の制度的なバージョンを体現している。同行は2026年にテクノロジーへ198億ドルを投じ、前年比10%増とする。これは銀行業界で最大のテック予算である。15万人の従業員が社内AIプラットフォームを毎週利用し、1人あたり週におよそ4時間の節約になったと報告している。生成AIのユースケースはこの1年で倍増し、カスタマーサービスとソフトウェアエンジニアリングに集中している。同行は社内ポータルを通じ、OpenAIとAnthropicの双方のモデルを使う。ダイモンの競争に関する言い回しは率直だった。「75の分野では勝者になり、25の分野では敗者になるかもしれない」

混沌とした「中間地帯」

先行組と出遅れ組の間には、データ基盤を持たないまま、人が担っていた仕事を置き換えられないのに人を解雇している企業群が大きく横たわる。ここで「生産性という賭け」が危険になる。

AIシステムが機能するには、クリーンで構造化され、適切にガバナンスされたデータが必要だ。だが大企業の多くは、それを持たない。情報は数十年かけて構築されたレガシーシステムに散在し、各部品がどうつながるのかを理解する人々の組織知によって維持されている。その人々が、データが整理される前にいなくなれば、企業は旧システムとAIの野心をつなぐ唯一の橋を失う。コスト削減は損益計算書に即座に現れる。業務の劣化は2〜3四半期後に表面化する。

デロイトの「2026 State of AI in the Enterprise」レポートは、24カ国のシニアリーダー3200人超を調査し、2025年に労働者のAIアクセスが50%増えた一方で、多くの企業は主として構造改革ではなく教育で対応していることを明らかにした。AIに合わせてキャリアパスを再設計したと答えたリーダーは33%にとどまり、AI利用パターンが示す内容を踏まえて組織を再構想していると答えたのは30%だった。多くは研修プログラムを走らせ、テクノロジーがリストラに追いつくことを願っている。

いま株式市場が見落としているのは、この違いである。メタとJPモルガンは、まずデータ基盤を構築し、そこにAIを展開したことで、測定可能な生産性向上と収益増をいま得ている。UPSとフェデックスは、古いネットワークを壊して新しいネットワークを築いている最中で、節約は前倒し、成果は後ろ倒しだ。そして第三のカテゴリーとして、目立たないが規模はおそらくより大きい企業群がある。短期の利益率目標を達成するために人員を削減しつつ、失われた組織知をどう補うのかについて信頼できる道筋を持たない企業である。

当事者にとって何を意味するのか

この移行の裏にある数字は抽象的なものではない。米国の雇用主は2025年に120万超の雇用を削減し、2008年の金融危機後の余波以来の高水準となった。解雇は第4四半期に加速し、2026年初頭にかけて強まっている。失業率の表面上の数字は4.3%前後と低いままだが、そこには構造変化が隠れている。待遇の良いオペレーション職やミドルマネジメント職が、完全に機能するまで何年もかかる自動化プロジェクトに置き換えられているのだ。

最も大きな打撃を受けているのはミドルマネジメント層である。企業は、経営の意思決定とAI主導の実行の間にある人的レイヤーを取り除くために、明確に階層をフラット化している。UPSの管理職1万4000人削減は、エントリーレベルの職ではない。従来、戦略と現場の間を調整してきた監督的役割である。AIエージェントがその調整をより速く、より安く担えるというのが論旨だ。その論旨が成り立つかどうかが、これらの企業が持続可能なものを築くのか、それとも自らを空洞化させるだけなのかを決める。

ダイモンの思考実験は、じっくり考えるに値する。もし自動運転トラックが一夜にして現れ、200万人のドライバーを置き換えたらどうなるか。「次の仕事は年収2万5000ドルで、棚に商品を補充する仕事だ」。年間200億ドルをAIに投じる世界最大の銀行のCEOが、移行を意図的に管理しなければ勝者より敗者の方が多く生まれるリスクを公に指摘している。JPモルガンが、置き換えられた労働者を捨てるのではなく配置転換しているのは、必然ではなく戦略的選択である。多くの企業は、31万8000人の従業員規模や200億ドルのテック予算を持たず、この衝撃を吸収できない。

投資家としてどう読むべきか

市場はいま、リストラ発表を買いシグナルとして扱っている。その取引は、通用しなくなるまで通用する。保有に値する企業は、AIがすでに測定可能なアウトプットを生み出している企業であり、人を解雇して節約を捻出し、自動化は後から届く企業ではない。見るべきものは3つある。従業員1人あたり売上が増えているか(従業員1人あたりコストが下がっているだけではないか)、人員削減に先立ってデータ基盤への投資が行われたか、そして見込みのコスト削減ではなく、具体的なAI起点の収益増を示せるかどうかだ。

土台を先に築いた企業と、いま削って後から築こうとする企業の差は、2026年の評価を分ける決定的な境界線になるだろう。現時点では市場は両者を等しく報いている。だが、それは長くは続かない。

(Forbes.com 原文)

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