近年の状況はかなり改善されたとはいえ、女性は職場で不当な扱いを受けている。白人女性は今でも男性が1ドル稼ぐところを77セントしか稼いでいない。黒人、スペイン系、ネイティブアメリカンの女性の場合は、更に少ない。ヨーロッパでは企業の育児休暇制度はより進歩的で柔軟だが、アメリカのそれは大きく後れを取っている。
その上、女性が創業に携わった企業は、男性のみで興した企業より業績が良いというデータがあるにも関わらず、ベンチャーキャピタルからの投資対象としては、女性はわずか7%だ。
とは言えミレニアル世代の女性たちは、従来男性が主力だったSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)などの分野において、またeコマースやビューティー関連などの隙間市場にスタートアップとして進出する形で、攻勢に転じている。
フィラデルフィアで開催されたフォーブス主催のアンダー 30サミットでは、自力で巨万の富を築いた女性としては世界最年少のエリザベス・ホームズをはじめ、偉業を成し遂げた女性たちが登壇し、観衆らにアドバイスを送った。
現在31歳のホームズは、Theranosという企業を創業し、45億ドル(約5,400億円)の財を築いた。「医療界のスティーブ・ジョブズ」と呼ばれる彼女は、ごく少量の血液で様々な病気を調べることができるサービスをTheranosで提供している。しかも価格は割安だ。Theranosでは10ドル未満で200以上の検査を受けられるのだ。
質疑応答の場でホームズは、人から批判されることも、自らの成長につなげられると述べた。
「打ちのめされることが何度も何度もあるでしょう。でもその度に立ち上がるのです。私もこれまでに幾度となく打ちのめされて来ました。そして、これこそが私のしたいことだということが実に鮮明になりました。必要であれば、私はこの会社を1万回でも1から作り上げます」
YouTubeで大注目を浴びた28歳のミシェル・ファンは、市場価値5億ドル(約600億円)と言われる、自身が立ち上げた化粧品の定期配送サービスIpsyについて聴衆に語った。競合がひしめく中、Ipsyは今や、毎月150万以上の「glam bag」をカナダとアメリカ国内に出荷している。
「インターネットの素晴らしさは、どの分野においてもニッチ市場が存在する点です。そのニッチ市場に徹底的に取り組めば、存続可能なビジネスを構築することができます」とファンは話す。
VCで活躍する若い女性たちも、会場の女性たちにアドバイスを送った。投資家のSarah Kunstは、テック業界で働く黒人女性として、自らをダブル・マイノリティと表現した。偏見に対処する最善の策については、「非の打ちどころがないほど素晴らしい人物になる手段を考えるのです」と彼女は答えた。そして、フォーブスのアンダー30サミットに名を連ねたことで、誰にも奪えないタイトルを得られたと語った。「特許を申請する。学位を増やす。そういったタイトルは必要です」と彼女は言った。
若い女性のコスメティック産業改革に関する公開討論では、VC企業MaveronのパートナーであるRebecca Kadenがアドバイスを行った。彼女は、直接消費者を相手にするスタートアップは、ソーシャルメディアでのバイラルをうまく活用することで、マーケティング費用を削減できると語った。
「商品やサービスについて熱心に評価をしそれを公言する顧客は、あなたに代わって宣伝活動をしてくれます」と彼女は言う。
当サミットのステージに立った最も若い起業家のひとりである19歳のタヴィ・ゲヴィンソンは、雑誌『Rookie』の編集者で、女優でもある。彼女は、読者に心を開き心情を吐露した経験について語った。「自分の思いを語ったり、弱い自分を見せたりすると、読者はそれに共感するということがわかったのは、嬉しい驚きでした」と彼女は話した。
3Dプリンターで作った靴の中敷きのスタートアップSOLSを率いるKegan Schouwenburgは、どのビジネスを始める際にも共通の注意点をあげた。彼女はただ一人で試作品を作成し、会社を立ち上げ、2年で従業員70名の企業に育て上げた。そのSOLSは今では毎週2種類の新製品を生産している。
「成功の秘訣は、小さいことを繰り返し素早く行うということです」と彼女は言った。