こんな場面を想像してほしい。ある企業の新入社員は、名門大学を首席で卒業し、大手コンサルティングファームで2度の夏季インターンを経験、推薦状には誰もが知るパートナーの名前が並んでいた。
書類上では、採用担当者が夢見る理想像そのものだった。
ところが入社3カ月後、上司は私にこう話した。彼女は自分の判断で意思決定ができず、必ず承認を求めてくる。提案ではなく選択肢を送り、何を望むのかを聞いてから自分の考えを口にする。成果物は完璧だが、独自の発想がまったくないというのだ。
彼女だけが特別だったわけではない。教育コンサルタントとして働くなかで、私は同様のパターンを繰り返し目にしてきた。
クレデンシャルのパラドックス
新卒者を採用したことがあるなら、構造が消えた瞬間に一部の候補者がつまずくことに気づいているかもしれない。
実行はできる。だが、始動できない。
最適化はできる。だが、優先順位をつけられない。
求められたことは出せる。だが、何を求めるべきかがわからない。
Intelligent.comが2024年に実施した調査によれば、企業の75%が新卒採用者について「満足できない」と回答した。最大の不満は「意欲や主体性の欠如」だった。雇用主の10社中6社は、その年のうちに採用した卒業生を解雇したことがあるという。私の見立てでは、これは怠慢ではない。多くの優等生が「成果を出すための訓練」を受けてきた結果である。
パターンの正体
私は長年、学生が難関大学に入る手助けをしてきた。著名企業でのインターンにつながる紹介もしてきた。そして、その後に何が起きたかを見てきた。
成功する学生がいる一方で、職場に出た途端に苦戦する学生もいた。彼らは「あなたは本当は何を望んでいるのか?」という単純な問いに答えられない。「入ること」に集中しすぎて、「そこで成果を出す力」を育ててこなかったのだ。
冒頭の卒業生の例を考えてみよう。名門校に入るため、彼女は14歳の時点から戦略的である必要があった。あらゆる活動、あらゆる夏、あらゆる人間関係が、1つの質問でふるいにかけられる。「これはどう見えるか?」である。彼女は「視点を築く」前に「履歴書を築く」ことを学んだ。自分の判断を信じる前に、権威ある大人が何を求めているかを読み取ることを学んだ。そして「正しい答えは必ず存在し、自分の仕事はそれを見つけることであって、創り出すことではない」と学んだ。
18年間、そのやり方でうまくいった。だが、採点基準が存在せず、前進の道筋も示されない会社に入った瞬間、彼女の「OS」は機能不全に陥った。
企業が見落としがちな候補者
私が驚かされたことがある。最も粘り強く後押ししなければならなかった学生たちのほうが、職場で最も高い評価を得るケースがあったのだ。履歴書を見て眉をひそめられた自宅学習の学生、個人の価値観を前面に出した宗教系学校の卒業生、名声より自立を重視するプログラム出身の学生──私は彼らを推した。クレデンシャルでは捉えきれないものが、彼らの行動と優先順位に表れていたからだ。
これは、名門校出身で華々しいインターン経験を持つ卒業生が良い採用にならないと言いたいのではない。実際、多くは優秀である。ただし、伝統的でない候補者もまた、チームにとって価値ある存在になりうる点は見逃せない。彼らはクレデンシャルの「格」が低いとして早い段階で選考から外されがちだが、「正しい」インターン先の名前を挙げられない代わりに、道筋のない環境で機能する術を学んできた者が多い。
シラバスなしで目標を設定し、チャイムのスケジュールなしで時間を管理し、手を挙げずに問題を解く力を身につけた人材は、初日から必要とされる存在そのものである。
企業ができること
クレデンシャルには価値があるが、常に全体像を語ってくれるわけではない。採用を検討する際、企業が念頭に置くべきこととして私が推奨するのは次の点である。
クレデンシャルだけでなく「判断力」で採用する。面接では、きれいな正解のない本物のジレンマを提示する。候補者が面接官の望みを推測しようとするのか、それとも自分の思考を言語化していくのかを観察する。
曖昧さの中でオンボーディングする。最初の90日間を過度に構造化しない。手引きのない実際の課題を渡す。自分なりの見立てを持って戻ってくる人材は、将来のリーダー候補かもしれない。
独立した思考を、見える形で報いる。誰かが異議を唱えたり、計算されたリスクを取ったりしたときは、それを公の場で言語化して称える。主体性が「黙認」ではなく「称賛」されるのだという証拠が必要なのである。
間違えても安全な環境をつくる。小さな利害の意思決定に、現実の結果を伴わせて任せる。賭け金が大きくなる前に筋力を鍛えるのだ。
そのパターンをはっきり言語化する。ときに最も有益なのは、何が起きているかを説明することである。たとえばこうだ。「君は許可を待つよう訓練されてきた。ここでは、まず意見をつくり、その後で確認してほしい。居心地が悪く感じるだろうが、それでいい」。
結局のところ、卒業後に伸びる学生には共通点が1つある。誰かが、彼らに本物の自己感覚を育てる手助けをしていたということだ。彼らは「よく見えるもの」ではなく、「自分が本当に望むもの」を見つけていた。
クレデンシャルは入門の扉を開くかもしれない。しかし、その先を左右するのは、本人が自分で考える力を育んできたかどうかである。紙の上だけで輝く人材ではなく、職場でも輝く候補者を見つけるために、企業は採用戦略を調整する必要がある。



