AIの活用が世界的に広がるなか、日本企業はそれとどう向き合えばいいのか。
NTTデータ代表取締役社長の鈴木正範が、りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長兼グループCEOの南 昌宏を迎え、AIが切り開く金融の未来について語り合った。
「デジタルの力で日本を元気に」——NTTデータが目指す社会の実現を加速させる原動力として、今、最も期待されているのがAIだ。企業でも導入は広がるが、多くは試行段階にあり、個別業務の効率化にとどまる例も少なくない。組織や業務プロセス、さらには企業文化や意思決定の変革に踏み込めている企業は限られている。
そうしたなか、全社規模でAIを経営の中核に据え実装を進めているのが、りそなグループである。NTTデータの鈴木正範(写真左。以下、鈴木)がりそなホールディングスの南 昌宏(写真右。以下、南)を迎え、AI時代の経営、金融の進化、そして人とテクノロジーの調和について語り合った。
価値創造型のワークスタイルへ
鈴木: 日本は少子高齢化や地域の過疎化、環境問題など多くの社会課題を抱えています。NTTデータはデジタルの力でその解決に貢献することを目指していますが、AIはその動きを一段と加速させる武器になります。
南: 日本は「社会課題先進国」です。特に成長制約はふたつ。確実に進む労働人口の減少と、生産性の低さです。AIはこれらの制約を乗り越え、日本が再成長に向かうための大きな力になるでしょう。人口構造の変化は不可逆的だからこそ、一人ひとりが生み出す価値やその生産性を高めていく必要があります。
鈴木: 新しいテクノロジーが台頭するなか、りそなグループは、どのような未来像を描いていますか。
南: 中堅・中小企業や個人のお客さまの成長を力強くサポートしていくためには、私たち自身がいち早く変化に適応し、常に変化の一歩先を走る存在でなければなりません。りそなグループは、パーパスとして「金融+で、未来をプラスに。」を掲げて、地域社会、それからお客さまの未来を少しでも豊かなものにしたい。そして、次世代リテール金融のフロントランナーになるという強い思いをもって取り組んでいます。
鈴木: まさに、私たちの「デジタルの力で日本を元気に」の考えと通じます。金融とテクノロジーはAIによってさらに融合していくでしょう。
南:私たちは10年前からリアルとデジタルの融合を進めてきました。営業店や人がもつ力を最大限に生かしつつ、デジタルで可能性を拡張する。AIもその延長線上にあります。「銀行がここまでできるのか」という驚きの顧客体験を届けたいと思います。
鈴木: 私たちは、従来の人を中心とした開発ではなく、AIを中心とした「AI ネイティブ」な開発にチャレンジしています。AIは日常的な業務の効率化から新しい付加価値の創出までさまざまな可能性があり、日本を元気にするための力になります。りそなグループでは、具体的なAIの活用についてどのように考えていますか。
南: AIはいまやCXやDXの中核技術であることは確かです。ただし同時に、黎明期だからこそ、倫理や透明性、説明責任といったAIガバナンスも不可欠です。テクノロジーとその統制は両輪であり、信頼を前提とした実装が重要です。
鈴木: 私たちも政府会合への参画やガイドライン整備を進めるなど、AIガバナンスに取り組んでいます。人間とAIが共生する社会を前提にした設計が重要です。
南: AIの活用として、「顧客体験の変革」「新たな価値の創造」「圧倒的な生産性の向上とアウトプットの質量の拡充」の3つを考えています。まず社内では、バックヤードの業務プロセスにAIを組み込むことで人海戦術からの脱却を目指します。業務プロセスの再設計、価値創造型のワークスタイルへの転換が、今後のグループの競争力向上につながっていくと考えています。
AIと人が補完し合う組織へ
鈴木: 非常に大きなチャレンジですね、実際に取り組みを始めているのでしょうか。
南:業務インフラを刷新し、全従業員に生成AIを開放しています。まずは、個々人の能力にAIの知的レバレッジをかけ合わせていきます。そのためにグループ内に散在するデータを再整理し、活用しやすい基盤に再構築しています。さらに、これらの取り組みを加速させるためには、AI時代を支える人財が不可欠。この人財育成が、今後のグループの成長を左右する喫緊の課題のひとつです。
鈴木:NTTデータでは、生成AIを活用しビジネスをリードできる高度人財の育成プログラム「りそな GenAI Academy」を提供させていただいています。
南:はい。全従業員向けの研修とは別に、グループ各社から選抜した150名に2カ月間、集中的にAIエージェントの構築など実践的なスキルを習得させています。いずれ各部署に戻り、AIドリブンでの業務改善の担い手となっていきます。同時に、経営サイドからも大きな変革を推し進めることで、トップダウン、ボトムアップの双方向から取り組みを加速させていきます。
鈴木:育成後の実装支援も重要です。どのような領域でAI活用を考えていますか。
南:まだまだ、AIだけで完結できる業務はありません。AIと人の補完関係を最適化することが鍵です。まずバックヤードの再構築と、二次情報を収集・分析・加工する本部系業務については、いち早くAIシフトを図りたいと考えています。
鈴木:今、一緒にチャレンジしている、法人営業の高度化ですね。
南:AIによる営業の高度化は、銀行の企業文化を変えることにつながります。営業のスキルは属人的で、経験値や暗黙知も数多い。それらをAIで標準化するとともに、データ起点でのサポートを圧倒的に拡充させます。そのうえで個々人の能力とセンスが加わる次世代型の営業スタイルを確立していきたいと思います。
鈴木:私たちは、「提言・実装・成果」にこだわっています。社会課題や経営の課題を解決していくには、お客さまや社会から要請されたものをつくるだけではなく、まず私たちが提言をする必要があります。そして、しっかり実装して、お客さまの成果創出へと結びつける。それが、社会やビジネスの変革パートナーであるNTTデータだと考えています。りそなグループが描く未来の実現に向けて伴走していきたいと思います。
南:ぜひ、お願いします。今後は、お客様に対して、パーソナライズされたサービスを、いかに適切かつスピーディに提供できるかが勝負の分かれ目です。そのために、リアルとデジタルを一体化させ、データやAIをフル活用していきます。
鈴木:AI活用によって、いろいろな可能性が広がります。最後に経営者として大切にしていることを教えてください。
南:これまでの価値観や常識に固執せず、常に外部の優れた方々とつながることを心がけています。金融の枠にとどまることなく、最先端の情報に触れ続けることは、次世代を考えるヒントになり、「このままでいいのか」という危機感を醸成する機会にもなります。
鈴木:その姿勢は大切ですね。日本を元気に盛り上げていくパートナーとして、これからの時代を一緒に楽しみましょう。
すずき・まさのり◎NTTデータ代表取締役社長。1988年、日本電信電話入社。NTTデータ執行役員第二金融事業本部長、執行役員事業戦略室長、取締役副社長執行役員 公共・社会基盤分野担当 金融分野担当などを経て、2025年6月より現職。
みなみ・まさひろ◎りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長兼グループCEO。1989年、埼玉銀行(現りそなグループ)入社。グループ戦略部長などを経て2020年、取締役兼代表執行役社長 事業開発・DX担当統括に就任。25年4月より現職。




