Mick HuntはMick UnpluggedのCEOである。
リーダーとして、私たちは実に多くのものを測定している。KPI、売上、ROI、市場シェア。ほとんどあらゆるものに指標がある一方で、正確に測るのが難しいのが、意思決定、戦略、組織文化において感情が果たす役割である。
職場で「感情的になりすぎる」ことは避けるべきだと教えられてきた。だが、それはなぜなのか。働きに行ったからといって、人間でなくなるわけではない。感情は、買い物の仕方、パートナー選び、他者とのつながり方など、人生で私たちが行うほかのあらゆることの中心にある。ならば、リードし、考え、マネジメントし、意思決定する際にも、感情を持ち込んでよいはずではないか。
感情知性を備えたリーダーが必要な理由
労働力の構成は変化している。ベビーブーマー世代の最年少層はいま60代前半となり、退職年齢に近づいている。今後数年で、ミレニアル世代とZ世代の従業員が就業人口のおよそ3分の2を占めると見込まれている。彼らは単に出世の階段を上りたいだけではない。キャリアを前進させるうえで最も重要なものとして、コミュニケーション、リーダーシップ、共感といったソフトスキルを挙げている。
こうした基礎的能力を「ソフト」と分類すること自体が誤解を招く。リーダーがほかの人々を効果的に導くには、これらのスキルが必要だ。「言うことを聞け」という権威主義的なリーダーシップは、もはや機能しない。従業員はリーダーに対して、信頼、透明性、弱さを見せる姿勢をますます求めるようになっている。問題は、多くのリーダーがそれらの領域で訓練を受けていないことだ。リーダーシップ、パフォーマンス、およびほかの肯定的な成果を高めるうえで感情知性が果たす役割を示す研究が増えているにもかかわらず、私たちはリーダーの能力を評価する際に感情知性を盛り込めていないことが多い。
Gallupの年次調査によれば、2025年に仕事へ積極的にエンゲージしていた従業員は31%にとどまり、前年から変化はなかった。出社はしていても、感情面ではそこにいない人があまりに多い。私はこれを何よりもリーダーシップの問題だと見ている。チームのエンゲージメントのばらつきの70%は、マネジメントに関連している。
リーダー育成の中核要素として、感情に関するトレーニングを組み込む必要がある。
私は最近、従来の指標では会社の業績が良好な、ハイパフォーマンスのエグゼクティブと仕事をした。売上は伸び、チームはKPIを達成していた。だが離職率も上昇し、数カ月のうちに主要なリーダーが4人離職した。
彼は自分をタイプAの達成者だと語った。週70時間働き、「俺のやり方に従え」という姿勢でリードし、チームからのフィードバックを日常的に封じていた。
私は彼にこう伝えた。「肩書があるから、従業員はあなたについてくる。しかし、それはあなたに鼓舞されているという意味ではない」。そして「ミラーチェック」を行い、こう尋ねた。「25歳のころのあなたは、いまのあなたについていくだろうか。いまのあなたは、いまのあなたについていくだろうか」。彼は言葉を失い、首を横に振った。
それ以降、彼は自分の行動のパターンが見えるようになり、感情のセルフコントロールがチームに与える影響への認識を高めていった。彼はそこに「いる」ようになり、従業員を単なる成果を出す人ではなく一人の人として知ろうとした。何に鼓舞され、何が動機づけになり、何が意欲を削ぐのか。反応する前に立ち止まるようにもなった。衝動的に命令を下す代わりに、確認の質問をした。相手が視点を共有できるよう促し、実際に耳を傾けた。
3カ月で、従業員エンゲージメントは27%から73%へ上昇した。さらに8カ月後には80%を超えた。離職は落ち着き、売上も伸び続けている。
感情をセルフコントロールできるリーダーを育てる4つの戦略
職場では、話を聞いてもらい、存在を認められていると感じたい人が多い。それはトップから始まる。私はコーチングのクライアントや自分のチームに対して、次の実践を用いている。
1. 心理的安全性を育む
組織内の誰もがコミュニケーションできる、心理的に安全な場をつくることだ。役職や在籍年数に関係なく、疑問、懸念、アイデアがあれば声を上げるよう促し、そうすることが安全だと感じられるようにする。
私の会社では、スタッフが遠慮なくコミュニケーションできる状態を何より望んでいる。物事がうまくいっているなら、そのことを話す。何かがうまくいっていないなら、そのことを話す。対話とチェックインが当たり前である。
私たちは各ミーティングの最後に、赤・黄・緑のシステムでチェックインし、全員に明確な前進の道筋があることを確認する。赤は「この課題について、まだ話す必要がある」。黄は「理解したが、追加の質問がある」。緑は「把握した。すぐ動ける」。会うたびにフィードバックを共有し、赤が1人でもいるなら、課題を解消するまで会議を終えない。
2. チームを信頼する
マイクロマネジメントの根底には、不安があることが多い。自問してほしい。本当に自分が参加すべき会議は何か。本当に自分がレビューすべきタスクは何か。カテゴリごとに1つか2つを超えて思い浮かぶなら、マイクロマネジメントしている兆候かもしれない。採用した仕事をこなすことを、チームに任せよう。
3. 落ち着いて、好奇心をもって伝えるコミュニケーションを実践する
会議中やメールを読んでいる最中に防衛的になりそうだと感じたら、返信する前に立ち止まる。好奇心を働かせ、相手の視点を本当に理解するための質問をする練習をする。「そういう意味じゃない」と言う代わりに、「私の発言をどう解釈したのか、理解できるように教えてほしい」といった言い方を試してみる。
私たちの会社では、メールを読んだら少なくとも3分は返信しない、という全社的な実践がある。最初の反応が良くても悪くても、この間が、より感情的に中立な状態へ戻る機会になる。1から10の尺度なら、すべてのメールに対して5か6あたりの状態で返信することを目指す。
4. 感情知性を文化に織り込む
私はよくこう言う。リーダーが動かしているのはビジネスではない。文化を動かしているのであり、その文化がビジネスを動かすのだ。感情知性は、文化と中核的価値観を映す鏡だと捉えている。文化全体で感情知性をどう示すかを意図的に設計してほしい。透明性、共感、好奇心を、他者に示せているだろうか。望ましい感情とソーシャルスキルを育めているだろうか。
組織のあらゆる階層に向け、感情知性のアセスメント、研修、能力開発に投資することだ。人々がさまざまな状況でどう反応し、意思決定するのかを理解する。そして、自分自身と他者の双方において、感情のセルフコントロールと成熟を促す文化を育むスキルを磨き続けてほしい。



