「アイスクリーム頭痛(英語では「ブレインフリーズ)」と呼ばれる、一時的な痛みを伴う感覚体験ほど、すぐにそれとわかるものはそうそうないだろう。なんらかの冷たいごちそうを味わうやいなや、即座に額のあたりに刺すような痛みが走る、あの現象だ。だが奇妙なことに、その痛みは、現れたときと同じくらいあっというまに消え去る。
すぐに消えるその性質ゆえに、ランダムに生じる生理作用の気まぐれのように思えるかもしれないが、この頭痛は実際のところ、進化と神経科学によって形作られてきた、独特かつ複雑な生物学的メカニズムだ。
神経科学者の研究によりこの現象は、もとをたどれば、特定の神経回路と血管反応に行きつくことがわかっている。以下では、生物学研究をもとに、アイスクリーム頭痛の一時的な痛みの裏にあるプロセスを解説しよう。
「アイスクリーム頭痛」とは何か
英語の「ブレインフリーズ」という俗称とは異なり、アイスクリーム頭痛は、脳そのもののなかで起きているわけではない。実際には、口や顔で生じた突然の温度変化に対する、頭部の神経系における反応のあらわれだ。その反応は、脳の血液供給や防御反射と密接に結びついている。
この現象は科学用語では翼口蓋神経節痛と呼ばれており、感覚の伝達に関わるとされる神経節の名に由来している。
『Current Neurology and Neuroscience Reports』で発表された2019年の研究で説明されているように、この名称そのものが、アイスクリーム頭痛を生み出す解剖学上の真のプレイヤーたちを表している。つまり、三叉神経の枝である翼口蓋神経節と、脳を覆う組織(髄膜)に必要な物質を供給する髄膜血管だ。
すでにご存じの方も多いだろうが、口蓋(口の天井部分)もしくは中咽頭(口の奥にある喉の空間)に対する寒冷刺激であれば、どんなものでもアイスクリーム頭痛の引き金になり得る。以下に例を挙げるが、これに限定されるわけではない:
・アイスクリーム
・フローズンドリンク
・氷の入った水
・アイスキューブ(製氷機でつくった氷)
・急に吸いこんだ冷たい空気
・冷蔵庫のチルドルームで冷やした果物
アイスクリーム頭痛を理解するための鍵は、神経系が突然の温度変化をどう解釈するか、という点にある。
三叉神経は、顔の主要な感覚神経だ。顔や口腔の接触刺激、圧力、痛みを感知するほか、温度刺激の検出の役割も担っている。そのため、アイスクリームやフローズンドリンクなどにより、冷たさを感知する口蓋や喉の温度受容体が急に活動すると、三叉神経が集中砲火のように信号を脳幹へ送ることになる。
重要な点は、そうした突然の活動が、単に冷たさの感覚としてコードされているだけでなく、脳がしばしば痛みのインプットとして解釈することだ。そしてそうなるのは、温度変化が唐突かつ強烈であることに起因する。神経系はだいたいにおいて、緩やかな変化よりも急激な変化をよく感知するように適応している。これは、多くの状況で生き抜くために必要不可欠な特質だ。
そうした神経信号は、翼口蓋神経節の近くで一点に集まってから上方へ送られる。そのため、痛みを処理する領域を活性化すると同時に、近くを走る血管で拡張反応を引き起こす。
簡単に言えば、摂取した飲食物の種類は重要ではない。脳が重視するのは、温度変化のスピードなのだ。口の受容体は、絶対的な温度よりも、急激な冷却に強く反応する。したがって、温度がゆっくり低下する場合には、それほど強烈な反射作用は生じない。
注目すべきは、急激な変化に対するこうした敏感さが、感覚生物学分野の一要素として幅広く見られることだ。われわれの神経系は、環境で生じる急激な変化を感じとるように配線されている。なぜなら、そうした変化は多くの場合、大きな意味があるかもしれない出来事を告げているからだ。



