経済・社会

2026.03.09 17:15

台湾の分裂あおる中国、日本にも仕掛ける中国のハイブリッド戦争

DC Studio - stock.adobe.com

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中国の李強首相は5日、全国人民代表大会(国会)の開幕式での演説で「台湾独立の分裂勢力に断固として打撃を与える」と宣言し、従来の「断固反対」という表現から踏み込んだ。中国は今後、どのような動きを見せるのか。最近、中曽根平和研究所が発表した「台湾有事抑止のための対応要領及び多国間抑止態勢の構築 ―不可欠なハイブリッド戦対処」に携わった松村五郎元陸将は「李強氏の発言はまさに(軍事手段だけでなく、様々な非軍事手段をからめる)ハイブリッド戦の一環だ」と語る。

松村氏によれば、李氏の発言はまず、「台湾の親中派と反中派」の対立をあおる意図があるという。李強氏が「台湾同胞が(中国と)同等の待遇を享受する政策を実施する」とも語ったからだ。松村氏は「台湾の独立分裂勢力に打撃を与えると同時に、中国との統一を目指す人々には経済的繁栄を享受させることで、対立をあおっている」と語る。

中国が台湾内の分裂をあおる政策を展開している背景には香港を巡る「一国二制度」政策の有名無実化がある。台湾国内で中国に対する警戒感が強まった。中国も、台湾全体を親中派にすることは難しいと判断し、分裂をあおる政策に転じたとみられる。

同じ現象はロシアを巡る動きでもみられる。松村氏が2024年に訪れたラトビアは、全住民のうちロシア語話者が約3割、ロシア系住民が約2割をそれぞれ占める。松村氏が面会したラトビアのロシア研究者は「2014年のロシアによるクリミア強制併合を契機に、ラトビア国民のロシアへの警戒感が一気に高まった」と語ったという。ロシアは従来、ラトビア全体を親ロ派にしようと動いていたが、2018年ごろを境にラトビア国内の分裂を誘うハイブリッド戦の戦術に転換したという。

ロシアの場合、ウクライナに対してはロシア系住民が多い東部ドンバス地方で分裂をあおった。ドンバス地方のロシア系住民の要請を受ける形でウクライナ戦争をしかけた。松村氏は「中国は台湾でも暴力を含む深刻な対立・騒乱状態に持ち込み、親中勢力の要請を受けた形で民兵か、場合によっては正規軍を送り込む内乱介入型を狙うだろう」と指摘する。

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文=牧野愛博

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