そして、松村氏は李強氏の発言には「台湾の親中派と反中派」のほかに、もうひとつ「日本と米国」の分裂を誘う狙いが込められていると語る。李氏が演説原稿にあった「覇権主義と強権政治に断固として反対する」という部分を読み飛ばしたからだ。「あえて読み飛ばして、米国への配慮をにじませた。李氏がイラン問題にも触れなかったことなども含め、対米配慮の意図があったことは間違いない」(松村氏)。同時に、李氏が指摘した「台湾独立の分裂勢力」には日本も含まれている。高市早苗首相の昨秋の台湾有事を巡る発言以降、中国がしばしば、日本を「台湾独立の分裂勢力」の支持者と決めつけているからだ。中国が最近、日本への軍民両用(デュアルユース)品目の輸出管理強化を決めたことも、対日強硬策が続いていることを示している。
万が一、台湾が騒乱状態になって親中派が中国の介入を要請すれば、反中派は米国の介入を求めるかもしれない。松村氏は「米国による介入の是非が大きな分かれ目になるが、仮に軍事支援に踏み切ろうとした場合は、日本が支援拠点になる。中国は在日米軍基地を使えないようにしたいと考えるだろう」と語る。そのために、あらかじめ「日本国内で反米の空気を広げるなどし、米軍基地を使いにくい状況に持ち込もうとする可能性がある」と指摘する。
日本政府関係者によれば、かつての中国は「日本は米国に脅されて、仕方なく反中政策を展開している」という考えに立ち、米国に強硬に出る一方、日本には融和策を展開していた。今や、中国の戦術は全く逆になり、米国に融和策を展開する一方、日本には強硬に出ることで日米の離間を図っている。
高市氏は19日、ワシントンで日米首脳会談に臨む。高市氏には、トランプ氏が今月末に訪中した際、中国との間で貿易や台湾問題で一方的な合意に至らないよう、強く働きかけることが期待されている。松村氏は「トランプ氏に意見するような形で直接さとすことは感情的な反発を招きやすい。シンクタンクなどあらゆるチャンネルを使い、オーストラリアなどの諸国と連携したり、米国内の知日派を利用したりするなど、からめ手で米国が中国のハイブリッド戦にはまらないような注意を促すことが求められる」と語った。


