プロフェッショナルや上級幹部が別の都市への移住を検討する際、意思決定が単一の要因に集約されることはほとんどない。キャリアの見通しは重要だが、教育、住環境の質、法制度の確実性、そして長期的に成長の余地があるかどうかも大きく影響する。香港が世界の人材に向けて掲げる提案は、そうした選択肢を漏れなく満たすことに基づいている。
直近のランキングは、そのアプローチが支持を広げつつあることを示している。香港は2025年のIMD世界人材ランキングで世界4位、アジア太平洋地域で1位となった。
香港労働福祉局長官のクリス・サン氏によれば、このランキングは都市の中核的な強みに加え、近年の政策措置が組み合わさった結果を反映している。強みとしては、香港が科学、金融、経営分野で多数の卒業生を輩出し続けていることによる強固な人材供給基盤、そして金融、教育、ビジネスにまたがる厚い専門能力が挙げられる。
加えて、香港は流入する人材に対してより開かれた姿勢を採用している。「さまざまな要因が組み合わさり、人材誘致という点で香港をアジアで1位にしている」とサン氏は語る。
競争が激しいレースで際立つ優位性
近年、人材をめぐる世界的な競争は一段と激化し、シンガポール、ロンドン、ニューヨークといった都市が同じプロフェッショナル層を奪い合っている。香港がこの戦いで優位に立つのは、世界の人材に対し、複数の利点を動的に組み合わせて提示できる点にある。
経済パフォーマンスや暮らしやすさに加えて、香港固有の強みのひとつは、広大な中国本土市場へのゲートウェイという役割だ。「一国二制度」の枠組みの下、香港は国際基準に沿った法制度・金融制度・教育制度を運用しつつ、本土へのアクセスも提供している。
「香港に来れば、世界と中国本土市場の両方にアクセスできる。この二重のアクセスは、他の地域で再現するのがなお難しい」とサン氏は説明する。
この位置づけは、企業がグローバルと中国向けの両オペレーションを統括するシニアマネジャーを求めるようになるにつれ、重要性を増している。香港であれば、それらの役割を複数市場に分断するのではなく、1つの拠点から運営できる。
門戸をさらに広げる
香港の強みが世界の人材を引きつけ続ける一方で、人口動態の現実も当局の対応を必要としてきた。香港は高齢化と、地元労働力の縮小に直面している。
これに対処するため、政府は2022年後半に一連の人材受け入れ措置を開始した。高所得のプロフェッショナルや、世界トップ100大学の卒業生を対象とする「高端人才通行証計画(トップタレントパススキーム)」もその一部である。
また、労働福祉局の下に置かれる香港人才服務弁公室(HKTE)は、プロモーション、採用、入境後の支援サービスを担う組織として2023年に設立された。
「不足を埋め、経済成長を維持するため、若く活気あるプロフェッショナルに香港へ来てもらう必要がある」とサン氏は言う。
これらの施策への反応は心強いものだった。2025年末までに、政府は各種スキームを通じて58万件超の申請を受理し、その結果、約26万人のプロフェッショナルが香港に到着した。なかには家族を伴い、香港に定住するケースもある。トップタレントパススキーム単独でも、12万件超が承認され、10万5000人超が到着している。
政府は、トップタレントパススキームの参加者だけでも地域の国内総生産に約1.2%上乗せし、約340億香港ドル(44億米ドル)に相当すると見積もる。さらに、流入するトップ人材の70%以上が40歳未満だとサン氏は述べ、人口動態の圧力が高まる局面で労働力の強化につながっている。
新たに到着した人材が参入するセクターも重要だ。多くが金融、テクノロジー、商業分野で働いており、香港がすでに規模と国際的な存在感を持つ領域を一段と強化している。
香港の人材戦略は、2026年3月のグローバルタレントサミットウィークで、より目に見える形で世界の舞台に乗ることになる。今年のサミットは、国際人材フォーラム、キャリアコネクトエキスポ、そして一連のサテライトイベントで構成される。HKTEが主催する同サミットには、ノーベル賞受賞者、世界の産業界リーダー、著名な学者、起業家、プロフェッショナルが一堂に会し、国際的な人材ハブであると同時に、この地域の機会へのゲートウェイでもあるという香港の役割を強化する。
長期的に人材を定着させる
人材獲得は方程式の一部にすぎない。人材を引き留められるかどうかは、プロフェッショナルがその都市でキャリアと生活を築けるかにかかっている。この点で、移住を計画する家族にとって教育制度の質は重要な検討事項であり、香港はこの分野で一貫して高い評価を得ている。香港には世界トップ100に入る大学が5校あり、強固な教育基盤を備えている。
支援サービスも役割を果たす。HKTEは、流入する人材を求人機会につなげ、問い合わせには48時間以内に対応し、90を超えるパートナーと連携して住まい、教育、日常生活に関するガイダンスを提供している。
今後についてサン氏は、新興技術が将来の人材需要に影響を与えるとみている。人工知能(AI)はすでに、企業の運営や必要とされるスキルに影響を及ぼしている。この点で香港は、AI専門人材の誘致と同時に、地元の労働力に関連能力を身につけさせることにも注力している。
次の一手を検討する世界のプロフェッショナルに対し、香港は国際標準、地域へのアクセス、そして人材とその家族への支援を1つの場所で提供する。サン氏はこう語る。「香港は世界の人材ハブである。そして、いま私たちが目にしているのは、その旅路の始まりにすぎない」



