成長企業を見極め、長期投資を信条とするスコットランドの老舗資産運用会社「ベイリー・ギフォード」。同社が重視するのは、投資先企業との「対話」だ。2025年10月、同社はラテンアメリカ最大級のEC企業「メルカドリブレ」との対談を行った。
スコットランド・エディンバラに本社を構える1908年創業のベイリー・ギフォードは、独立系運用会社だ。ファンドマネジャーによる銘柄選択を重視したアクティブ投資を行う同社は、“資本を入れて終わり”ではなく、対話を通じて企業の未来を共にかたちづくるパートナーシップの構築に強みをもつ。
その姿勢を投資家に示すために、同社は定期的に投資先との対談イベントを行っている。2025年10月には、ラテンアメリカにおけるEコマースおよびフィンテック分野のリーディングカンパニーである「メルカドリブレ」のアリエル・サルフシュテイン(写真右)と、ベイリー・ギフォード投資マネジャー/パートナーのローレンス・バーンズ(写真左)が対談を行った。
1999年に創業したメルカドリブレは、同地域における技術革新を牽引する存在であり、サルフシュテインは2026年1月に同社のCEOに就任した。その就任を前に、ふたりがメルカドリブレの競争力の源泉や未来について語り合った。
トレンドを追うだけでなく市場そのものを創造
アリエル・サルフシュテイン(以下、サルフシュテイン):私たちはラテンアメリカ最大級のECプラットフォーマーですが、自分たちを小売業者だとは思っていません。域内最大級のフィンテック企業ですが、銀行でもありません。
また、最大級の物流リソースを抱えていますが、サードパーティロジスティクス(3PL)企業でもありません。私たちは自分たちを、ECと金融サービスを通じてラテンアメリカの人々の生活を変える「テック&プロダクトカンパニー」ととらえています。
ローレンス・バーンズ(以下、バーンズ):メルカドリブレはたくさんのタッチポイントをもった、まさにエコシステムのような会社です。その会社にサルフシュテイン氏は17年に入社し、数々の重要な役割を担ってきました。
サルフシュテイン:入社してまず感じたのは、私たちの将来がうまくいくかどうかは、ふたつの戦略にかかっているということでした。
ひとつ目は、物流部門の強化です。当時は配送を国営郵便に依存していましたが、事業をスケールさせていくには、自前の物流インフラを構築する必要がありました。ふたつ目は、自社ウォレットの構築です。
バーンズ:私がサルフシュテイン氏にはじめてお会いした当時、御社は物流網の構築に取り組んでいました。それがその後の成功を支える重要な要素になっていますね。そして、いまだに毎年30〜40%の成長率(メルカドリブレ推計)を実現しています。
メルカドリブレは26年前にEC事業を開始しましたが、市場はいまだに初期段階にあるように思います。英国では売り上げの30%がオンラインですが、ラテンアメリカではその半分にも満たない状況です。
ただ、御社は単にECの成長トレンドの恩恵を受けているだけではなく、市場そのものを創造しています。
サルフシュテイン:ラテンアメリカのECは、英国より10年ほど遅れていますが、いずれは英国、あるいはアジアの水準に達すると考えています。
つまり、私たちには成長を続ける十分な余地がある。それを維持するためには、価値提案を進化させ続けなければなりません。カテゴリーを超えた販売、地域で最も信頼性の高い物流ネットワーク、最高のユーザー体験といった事業の核となる部分を、もっと強化していく必要があります。
同時に、さらなる成長を生む可能性のある分野にもベットしていかなければなりません。数年前に始めた越境ECは大きな成果を上げています。
また、中間業者を介さずに工場と購入者を直接つなぐスーパーマーケット事業も進めています。私たちは非常に多くの施策を打っていますが、重要なのは、エコシステム全体を活用して顧客のエンゲージメントを高めることです。
バーンズ:米系EC大手もブラジル市場で着実に存在感を高めてきましたが、そのシェア拡大は比較的緩やかなものにとどまっています。一方、メルカドリブレは同期間にシェアを大きく押し上げ、ブラジルEC市場における支配的な地位を確立しています。なぜ米EC大手をも上回る競争力を発揮しているのでしょうか。
サルフシュテイン:まずベースとなっているのは、ラテンアメリカの加盟店と消費者の双方に対して、非常に優れた価値提案を提供していることです。
そして、私たちは100%ラテンアメリカに集中しています。ここでの成果が私たちの生死を左右するため、各国に対する深い知識をもっている。それが大きな要因だと思います。
ラテンアメリカはひとつの地域として語られがちですが、実際には20カ国以上から成り、それぞれ文化も規制も事業環境も異なります。私たちは、そうした不確実性への対応を熟知しているのです。
バーンズ:ラテンアメリカは過小評価されがちです。人口は6億5,000万人で、経済規模は約7兆ドル。もし単一国家だとしたら、米国、中国に次ぐ世界3位の経済大国です。
サルフシュテイン:メルカドリブレの利用者はそのうちの1億人であり、オポチュニティは非常に大きいのです。
バーンズ:金融サービスにおけるオポチュニティは、EC以上に大きい可能性があると聞いています。ラテンアメリカがこれほど有望なのは、従来の金融システムがあまりにも非効率だからです。
サルフシュテイン:ご指摘の通り、銀行は非効率で、サービスレベルが非常に低い。
そもそも多くの人は、十分な金融サービスを受けられていません。銀行は、高い収益をもたらす一部の顧客を相手にすることに満足してしまっている。私たちはこの問題を解決し、デジタル口座、投資、クレジット、保険などを通じて金融包摂を実現したいのです。
バーンズ:ECとフィンテックという巨大なオポチュニティに加えて、広告という第3の柱も立ち上がりつつあります。
サルフシュテイン:広告売り上げは、マーケットプレイスの流通取引総額(GMV)の約2%に過ぎません。私たちは顧客体験を何よりも重視しており、アプリ内を広告で埋め尽くしたいとは考えていません。
ただ一方で、広告事業を拡大する余地は、非常に大きいとも考えています。
将来的には自社アプリ内だけでなく、動画配信サービスなど外部にも広告サービスを広げていきます。ラテンアメリカ全域にわたる消費者データへの独自のアクセスが、さまざまなブランドや商品において、最適なオーディエンスを構築します。その結果、巨大な広告プラットフォームに成長できると考えています。
私たちは、おそらくラテンアメリカで最高、そして世界でも屈指のチームです。共に素晴らしい成果を生み出せると確信しています。
バーンズ:非常に刺激的なお話でした。私たちは今後も、メルカドリブレが大陸規模で小売り・金融・広告の変革を続ける姿を見守っていきたいと思います。
“世界を変える企業”に長期投資
サルフシュテインの言葉は、ベイリー・ギフォードが投資哲学として掲げる「世界をよりよくする企業は、長期で卓越したリターンを生む」という考え方そのものだ。
ベイリー・ギフォードは市場の流行に左右されるのではなく、本質的な変革力をもつ企業を見極め、10年以上にわたって伴走し続けることを信条としている。メルカドリブレのような“世界を変える企業”に長期投資することで、財務的な成果と社会価値的なインパクトの両方を生み出す後押しをしているのだ。
ベイリー・ギフォード
https://www.am.mufg.jp/lp/bg/?aic
※三菱UFJアセットマネジメントHPに遷移します
アリエル・サルフシュテイン◎メルカドリブレCEO。旅行サイトDespegar、ボストン コンサルティング グループを経て、2017年にメルカドリブレ入社。物流部門やコマース部門の責任者などを歴任し、26年1月より現職。
ローレンス・バーンズ◎ベイリー・ギフォード投資マネジャー/パートナー。2009年にベイリー・ギフォード入社。長期視点での革新的・高成長企業への投資を専門とし、上場・未上場を問わず、世界の変革企業に注目する。
※本記事は、特定の金融商品の購入やその他の投資行動を勧誘するものではありません。また、投資にはリスクが伴い、元本および収益は保証されませんので、投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事で言及しているメルカドリブレ社は、ベイリー・ギフォードの投資先の一例です。



