Forbes JAPAN 2026年3月号は「20 HOT CREATORS 進化するクリエイター経済」特集。本稿は、本特集内の記事の転載である。
個人あるいは少人数のチームで制作されるインディーゲームの市場が、世界的に盛り上がっている。Video Game Insightsのレポートによると、世界最大級のゲーム配信プラットフォーム「Steam」においてインディーゲームの売り上げは2020年から毎年成長し、24年時点で49億ドルに達したと予測されている。そうしたなかで、日本から市場を盛り上げているのが、ゲームクリエイターチームのチラズアートだ。
チラズアートは、日本の身近な施設や日常風景を舞台にした「和風ホラー」と呼ばれるホラーゲームを開発する3兄弟のチームおよび合同会社。2018年に最初の作品をリリースし、これまでに30作品ほどを発表。累計ダウンロード数は世界で約170万本に達する。日本だけでなく海外での人気も高く、売り上げのトップが米国という作品も複数ある。
なかでもダウンロード数が20万本にのぼるヒット作「夜勤事件」(20年)は、ゲーム実況者やVTuberによって多くのプレイ動画が投稿され、実況動画の総再生数は6000万回を超えるなど大きな話題に。26年2月には実写映画の公開も決定している。大規模スタジオに依存せず、ゲーム実況文化と結びつくことでインディーゲームを世界的なIPへと押し上げてきたのだ。
17年まで米国に住んでいた兄弟がホラーゲームに興味をもったのは、英語圏のYouTuberのゲーム実況動画を見たことがきっかけ。自分たちでもプレイしていたが、日本を舞台にしたホラーゲームがあまりないことを残念に思っていた。そこで、海外から見た日本の魅力や不気味さを反映したホラーゲームがあればと考え、本格的に「和風ホラー」の世界観をつくりあげていった。まず兄がゲーム制作をはじめ、弟2人がそれを手伝うかたちで会社にジョインすることとなった。
現在は主に兄が3Dモデリング、弟2人がプログラミングを担い、世界観やゲーム性については兄弟で議論しながら考案しているという。技術はほぼ独学で、YouTubeなどを通して身につけた。特に彼らの知名度を大きく上げた20年リリースの「夜勤事件」と22年の「閉店事件」ではプレイの“面白さ”にこだわり、ゲーム実況者がリアクションを取りやすいポイントもちりばめた。
「怖いだけでなく、ツッコミたくなるような笑い要素、驚き要素を入れることを意識して制作しています。20年ごろはホラーゲームにコメディ要素を入れるというアイデアが新しかったので差別化になりました。『夜勤事件』では、舞台であるコンビニが“日本っぽさ”を感じられるとして海外ファンに刺さっているようです」(弟)
最近はマーケットイン思考を取り入れながら、Z世代のエンタメトレンドを踏まえた作品を制作する。「あまりに怖すぎると遊んでもらえないので、最新作の『ウミガリ』は“ちょっと不気味”くらいの温度感を目指しました。これまでにいろいろな作風を試して得られた知見を生かして、ニッチに閉じずたくさんの人に遊んでもらえる作品をつくりたいんです。自分たちがというよりは、業界のクリエイター全員でインディーゲームを盛り上げていきたいですね」(兄)



