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2026.03.09 10:41

平方ミリメートル単位で農薬を制御──農業AIの超精密化がもたらす革命

AdobeStock

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農業への人工知能(AI)の適用では、大きな変化が起きている。そのいくつかは、進化した大規模言語モデル(LLM)が、非常に複雑で拡散したシステムをレーザーのような精度で特定するのに、いかに役立つかをより広い視点で示している。

そうした例の1つで標的となるのが、作物の散布だ。これは悪名高いほど扱いが難しく、精密な分析を長らく回避してきた作業である。除草剤などの散布は「エーカー当たりガロン」といった単位で行われ、要するに薬剤があちこちに飛散する。それがどれほど目的地、すなわち植物の表面や周囲の土壌に到達しているのかは推測にすぎない。しかも残念なことに、これらの化学物質の多くはかなり腐食性が高かったり、人の健康に害を及ぼす可能性があったりする。

世界全体で毎年、作物散布に費やされる額は推定600億ドルにのぼるが、こうした化合物が正確に何であるのかは必ずしも明らかではない。だが、巨大なビジネスであることは間違いない。ここで登場するのが、AI駆動の作物散布においてゲームチェンジャーとなっているAgZen(アグゼン)という企業だ。

スマートスプレー

AgZenはこのほど、シリーズBの資金調達ラウンドで1000万ドルを調達し、フィードバックに基づく情報を取り入れ、AIで最適化した散布システムを展開している。

「私たちの目的は、効果的な害虫管理を犠牲にすることなく、散布する農薬の量を減らし、農家の財務負担を軽減することだ」。こう語るのは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の教授でAgZen創業者のクリパ・バラナシである。より精密な成果を狙ううえで、ドリフト(飛散)や流出、散布効率の低さといった課題に言及しながら、この最先端の科学を前に進めている。

このプロジェクトの規模を考える1つの見方がある。AgZenは、作物散布の視点を「エーカー当たりガロン」から「平方ミリメートル当たりマイクロオンス」へと移そうとしているのだ。では、それをどう実現するのか。

AIの「リーシーズ・ピーナッツバターカップ」

菓子にたとえるのを許してもらえるなら、ここで言いたいのは、AgZenのモデルがAIの中核的要素を1つではなく2つ用いて機能している、ということだ。

1つはコンピュータビジョンである。同社の取り組みでは、散布を監視するために多数のセンサーや機器を設置する必要がある。そして畳み込みニューラルネットワーク(CNN)と光学式文字認識(OCR)の台頭以来、コンピュータビジョンは重要な領域になってきた。これは、コンピュータビジョンが極めて精緻な空間分析を支援することを示す数多くの用途の1つにすぎない。

AgZenがRealCoverageと呼ぶ独自サービスで用いるマイクロカメラは、150ミクロンの微小な液滴を検出でき、作物空間の約90センチ先まで捉える。速度は時速約29キロまで動作する。

もう1つの主要技術が「レコメンデーションエンジン」である。AIが得意とする洞察力を活用し、散布が実際にどこに行われたのか、それが作物にとって何を意味するのか、そしてシステムをどう再調整すべきかを見極める。

「現場では状況が絶えず変化する」。AgZenのCEOであるヴィシュヌ・ジャヤプラカシュはこう語る。「私たちは散布のカバレッジを測るだけでなく、どう適応すべきかも推奨している。80年にわたる推測の散布に終止符を打ち、ループを閉じるのだ」

パートナーとの協業

AgZenは農家にサービスを提供するにあたり、世界90カ国以上で事業を展開するグローバルな作物取扱・種子企業、シンジェンタ・グループと連携している。

「あらゆる葉の上の、あらゆる液滴を見て制御できる能力は、作物保護の用途において真に変革的だ」。シンジェンタ・グループの最高情報・デジタル責任者フェローズ・シェイクはこう述べる。「生産者が効率性の向上や廃棄の削減を実感し、収量の最適化と収益性の強化へ向かううえで、計り知れない可能性を提供する」

感銘を受けているのは、他にもいる。

「AgZenは、作物保護における測定可能なパフォーマンスという新カテゴリーを生み出している」。農業分野の投資を持つVC(ベンチャーキャピタル)であるDCVC Bioのパートナー、ジャスティン・カーンは、農家にとっての財務面にも触れつつこう語った。「散布カバレッジを実行可能な知識へと変換することで、AgZenは生産者に明確なROI(投資対効果)をもたらすと同時に、商業規模で強力なデータ資産を確立している」

ほかの用途

これは実に驚異的な技術である。AIが行う作業はあまりにも微細に標的化され、あまりにも超精密で、人間の能力を何桁も上回る。

この種の展開は収穫に対して何をもたらすだろうか。おそらく、人手を不要にでき、精度の目に見える低下も起きない。

Forbes寄稿者のニール・サホタは、AIが「未来を収穫する」として、こうした革新の一部が実際に動いている様子を報じている。

「農業が手作業と伝統的知恵だけに依存していた時代は終わった」とサホタは書く。「いまやAIは農家の伴走者であり、犂(すき)や鍬(くわ)と同じくらい不可欠な道具となっている。農家が土地や作物と関わる方法を変え、効率性、持続可能性、収量の向上という未来を約束している。その最前線にあるのが精密農業だ。AIアルゴリズムを用いることで、農家は土壌条件から天候パターンまで膨大なデータを分析し、情報に基づいた意思決定ができるようになった」

まさに言い得て妙である。

AIとロボティクスは、ニューラルネットの力によって、近い将来、夢を現実にするだろう。続報に注目したい。

forbes.com 原文

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