軍事衝突がエネルギー供給を遮断し、インフレの連鎖を引き起こす可能性
先に述べたような世界的な戦争が株式市場や経済に与える影響は比較的軽微に見えることが多い。しかし、その背後には見過ごせない重要な懸念が潜んでいる。軍事衝突がエネルギー供給を遮断し、インフレの連鎖を引き起こす場合、被害ははるかに大きくなる可能性がある。
1973年の石油の禁輸では、S&P 500指数は12カ月で37%下落
例えば1973年のアラブ諸国による石油の禁輸では、石油不足が長期化してスタグフレーションを引き起こし、S&P 500指数は12カ月で37%下落したとJ.P.モルガン・プライベート・バンクは指摘している。
世界の石油供給の約20%はホルムズ海峡を通過している。そして、イランをめぐる衝突はその航路を遮断しかねない状況にある。そのため、この紛争が投資家のポートフォリオに与える影響は、過去の平均である「19日後に4.7%〜5%下落して底を打つ」というパターンよりも大きくなる可能性が高い。Insider Monkeyによれば、中東情勢がポートフォリオに与える最大のリスクは、エネルギー価格の変動を通じて生じる。
短期的に恩恵を受けやすい銘柄は、エネルギー、防衛、航空宇宙関連
地政学的な不安定さの中でポートフォリオを守る最も確実な方法は、あらかじめ分散の取れた構成にしておくことだ。ただし、現在のポートフォリオが今回の紛争による「勝者」や「敗者」に大きく偏っている場合、資産価格は通常より大きく上下する可能性がある。短期的に恩恵を受けやすいのは、エネルギー、防衛、航空宇宙関連の銘柄だ。
金融情報プラットフォームFinancialContentによれば、中東で紛争が起きた局面では、S&P500の11セクターのうち上昇したのはEnergy Select Sector SPDRだけだった。市場全体が下落する中でも、このETFはプラスのリターンを記録したという。ホルムズ海峡のリスクが高まった局面では、オクシデンタル・ペトロリアム、エクソンモービル、シェブロンの株価が過去最高値を更新する場面もあった。
地政学的な衝突で、防衛関連株も大きく上昇する傾向
地政学的な衝突が起きると、防衛関連株も大きく上昇する傾向がある。U.S. News & World Reportによれば、SPDR S&P Aerospace & Defense ETFは過去12カ月で56.5%のリターンを記録した。Global X Defense Tech ETFは2023年の設定以来、年率換算で59%のリターンを記録している。
軍事衝突が起きるとサイバーセキュリティ需要は高まる
サイバーセキュリティや海運・物流、保険などの企業もイランをめぐる紛争の影響を受けるが、投資家にとって短期的なメリットは必ずしも明確ではない。
中東で軍事衝突が起きるとサイバーセキュリティ需要は高まる。イランとの戦争が始まって以降、関連銘柄は約3%上昇した。CSISの調査によれば、2025年にイランへの軍事攻撃が行われた後には、イスラエルを標的としたサイバー攻撃が700%増加したという。Investing.comによれば、こうした攻撃を受けると企業はサイバーセキュリティへの支出を拡大する傾向があり、その後に削減されることはほとんどない。
中東の緊張は物流コストも大きく押し上げ、主要海運会社の株価が上昇
中東の緊張は物流コストも大きく押し上げる。米タイム誌によれば、ホルムズ海峡で混乱が起きた際、大手海運会社はコンテナ1本当たり2000〜4000ドル(約31万8000~約63万6000円。1ドル=159円換算)の緊急紛争サーチャージを課していた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によれば、運賃の高止まりが予想される中、主要海運会社の株価は今回のイラン戦争の開始以降、約10%上昇した。
保険料の上昇は急激だが、海上保険会社の株価はまちまち
保険料の上昇は急激だ。Global Banking and Insurance Reviewによれば、ホルムズ海峡の緊張が高まった2026年3月初め以降、戦争リスク保険の保険料は80%から300%上昇した。一部の保険料は、船舶価値の約0.125%だった水準から2%〜3%以上へと急騰している。ただし、紛争開始以降、海上保険会社の株価はまちまちの動きとなっている。


