最も極端なシナリオは、機雷の敷設やミサイル攻撃によるホルムズ海峡の完全封鎖だが、この可能性は低いとみられている。独金融大手ドイツ銀行によると、こうした事態が現実のものとなれば、原油価格は1バレル200ドルに近づく可能性がある。だが、市場がそのような極端な水準に達することはまれだ。しかし、歴史が示すように、最悪の事態に至らなくとも経済的な衝撃の波が起きることは十分にあり得る。
天然ガスとエネルギー危機
懸念材料は石油だけではない。ペルシャ湾岸地域は、世界の天然ガス市場でも極めて重要な役割を担っている。カタールは世界有数の液化天然ガス(LNG)輸出国の1つであり、世界のLNG供給量の約5分の1をホルムズ海峡経由で出荷している。
カタールのLNG輸出に何らかの混乱が生じれば、特にロシアからのパイプライン経由の天然ガス供給が途絶えたことで他国からの輸入に依存している欧州の天然ガス価格は大幅に上昇する可能性が高い。ガス価格の上昇は、世界中の電力市場や工業生産、家庭の光熱費に波及するだろう。
忘れられた切り札、ベネズエラ
皮肉なことに、国際市場に実質的な原油供給量を追加できる数少ない国の1つは、中東から何千キロも離れた場所にある。南米のベネズエラだ。
ベネズエラは世界有数の原油埋蔵量を誇るが、長年にわたる制裁や投資不足、政情不安により生産量は激減した。だが、適切な地政学的条件が整い、制裁が緩和され、国際企業が同国の油田開発に復帰すれば、ベネズエラの原油生産量は再び増加に転じる可能性がある。このような変化は中東の大規模な混乱による供給不足を直ちに埋め合わせるものではないが、ベネズエラ産原油供給量の増加は、最終的に世界の石油供給の安定化につながるかもしれない。
市場の教訓
エネルギー市場は一見平穏に見えるものだ。投資家は、極端な混乱が起こる可能性は低いと考える傾向がある。しかし、近代史における主な石油危機は全て、同じ誤った認識に端を発している。
原油価格が100ドル、120ドル、あるいはそれ以上に高騰するかは、最終的には紛争がいつまで続くか、そして供給経路が完全に遮断されるかどうかに懸かっている。冒頭のJPモルガンの警告は、有用な注意喚起となろう。石油市場も投資の世界と同様、今回は例外だということはめったにない。


