キャリア

2026.03.08 21:58

若手が次々と職場を変える「リリーパディング」、その功罪とは

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ほんの10年前まで、キャリアの道筋は飛び石というより、はしごに近かった。直線的で上向きではあるものの、苛立つほど遅いこともしばしばだった。だがパンデミック以降、企業はキャリア初期の働き手のあいだに新たな傾向を見いだしている。「リリーパディング」と呼ばれるそれは、若手プロフェッショナルが、腰を据える前にスキルを磨き柔軟性を享受するため、役割や企業、場合によっては業界すら意図的に移りながら経験を積む動きである。

Randstadによれば、Z世代の従業員がキャリア最初の5年間に同じ職場に在籍する平均期間はわずか1.1年で、ミレニアル世代の1.8年や、上の世代のほぼ3年と比べても短い。さらに3人に1人が、今後1年以内に転職する予定だという。実際、リリーパディングは従来型のキャリアパスからの転換という、より大きな流れの一部と捉えられる。例えば、Glassdoorの調査では、Z世代の労働者の約10人に6人が副業を持ち、68%が「報酬が大幅に増えるのでなければ管理職は目指さない」と答えている。

なぜ今、この変化が起きているのか。変動の激しいビジネス環境のなかで、従業員が雇用主と結ぶ心理的契約は変容した。終身雇用という概念が薄れ、長期在籍が安全を保証しなくなったことで、従業員は忠誠心よりも雇用され続ける力(エンプロイアビリティ)を優先する。リリーパディングは若年層と結び付けて語られがちだが、働き方の捉え直しという、より広い動きも映し出している。リーダーが無視できない変化である。

もちろん、仕事や業界を短いスパンで移ることへの受け止め方は、業界や、キャリアの長さに対する国ごとの考え方によって異なる。文化によっては、雇用主を変えながら得たスキルの幅広さよりも、同じ役割での長い在籍のほうが今なお重視される。欠員補充の採用コストや、戦力化までの立ち上げコストが高くつくこともあり、より良いオファーの兆しがあればすぐに移りかねない候補者への投資に慎重な企業があるのも不思議ではない。転職の理由と得たものについて説得力ある物語を築けていない場合、平均在籍期間が1年未満の応募者を見て、リーダーが「コミットメントが欠ける」と受け取るのも理解しやすい。

一方で、リリーパディングには明確な利点もある。テクノロジーやAI、デジタル変革によって多くのスキルの陳腐化が早まったいま、役割を移ることで従業員は時代に取り残されず、経験を多様化し、停滞を避けられる。肩書ではなく「何ができるか」を軸に、より強いパーソナルブランドを築くことにもつながり、各雇用主に新しい発想と業界横断の洞察をもたらす。企業が、適応力や、無関心な集団ではなくダイナミックな労働力を生み出すといったリリーパディングの良い側面を育てられるなら、それは機能し得る。

とはいえ、トレードオフがないわけではない。役割をより速いペースで移る働き手は、同じ場所にとどまる人ほどの知識の深さを獲得できない可能性がある。加えて、新しい環境で常にオンボーディングされ、自分の価値を証明し続けることによる燃え尽きのリスクもある。シニアリーダー候補として検討される、あるいは学習の道筋に腰を据えて取り組むといった、長期的な機会を逃すこともあり得る。企業側にとっても、移動が計画されず管理されない場合、チームの不安定化というリスクがあり、後継者育成のパイプラインを築きにくくなる。

中間解はあり得るのか。キャリアの初期段階では、複数の企業文化やアプローチを経験することは、ギャップイヤーやインターンシップのような豊かな経験として肯定的に捉えられるのと同様、プラスになり得る。だが数年が経つと、リリーパディングは利点以上に、職業的な前進への脅威となる可能性も出てくる。相補的なスキルを積み上げ、知見を応用できる戦術的な移動は当初こそ機能するが、必ずしも長期的なキャリア戦略ではない。うまくいく場合、従業員は軌道に勢いをつけるだけでなく、意味を加える役割を選ぶ。
リリーパディングはリーダーに重要なメッセージも突きつける。従業員はもはや、状況が良くなるまで「耐えて待つ」ことに満足しないということだ。労働力に対する統制を強めて応じるリーダー(厳格な出社義務への回帰、生産性が落ちた際の降格の脅し)は、離職を防ぐどころか、むしろ退出を加速させるリスクがある。Chartered Institute for Personnel and Developmentの調査では、柔軟性の欠如を理由に400万人が転職したことが明らかになっており、従業員が必要としているのは、生活に仕事を合わせることではなく、生活に合う仕事であることが示されている。

結局のところ、リリーパディングを単なる世代特有の一過性の流行として切り捨てるのは容易だが、実態はそれ以上である。仕事とキャリアはかつてないほど流動化しており、幅広い経験とスキルの導入が、チーム全体に火をつけるきっかけになり得る。

forbes.com 原文

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