AIが今後さまざまな業界にどのような影響を与えるかについて、いま盛んに議論が交わされている。過度に楽観的な意見もあれば、逆に露骨に批判的な意見もある。
私自身はどちらの立場なのか。実は長い間、自分でもその答えを探し続けてきた。ある対話に出会うまでは。
「もし私が、あなたが質問する前に答えをつくってあげられるとしたら?」と彼は私に問いかけた。「意思決定の文化を根本から変革できるとしたら?」
まるで未来予知の話に聞こえるだろうか。私もそう思った。しかし、パヴィ・グプタは水晶玉も魔法の鏡も持っていない。では何を持っているのか。データ、テクノロジー、そしてリーダーがどのように意思決定すべきかについての斬新な視点だ。
パヴィ・グプタとは何者か。彼はコカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、SCジョンソン、そして直近ではギリシャヨーグルトのチョバーニといった世界的ブランドで、30年にわたりデータを分析し、インサイト(消費者の隠れた本音)を発掘してきた人物だ。
「私はキャリアを通じて、意思決定に役立つインサイトの発見に注力してきました」とグプタは語った。「しかし、今こそそのプロセスを再構築すべき時です。現在、多くの企業は意思決定が必要になったときにインサイトを探し始めます。しかも多くの場合、根本原因ではなく表面的な指標だけを見ています。より深い要因に関する情報が、すぐに入手できないことが多いからです。その結果、まず決定を下してから、チームに並行して検証作業をさせることになります。ここでプロセスが崩壊するのです。検証プロセスに確証バイアスが忍び込み、最適とは言えない結果を招きます」
答えにたどり着くまでの時間が長くなるほど、バイアスのかかった答えになる可能性が高まる。インサイトが意思決定に影響を与えるのではなく、意思決定そのものがインサイトに影響を与え始めるのだ。
もちろん、ほとんどの企業は長年にわたりデータを分析してきた。しかし、AIが登場するまで、私たちはタイムリーな意思決定を行うことにあまり長けていなかった。
「それをもう少し説明してください」と私は応じた。「何か深い洞察が出てきそうな気がします」
「もちろんです」とグプタは明らかに情熱を込めて答えた。「トッド、ほとんどの企業がどのように意思決定を行っているか考えてみてください。多くの企業は、過度に単純化された指標を見て意思決定に臨みます。しかし、これらの指標はデータであり、『何が起きているか』を定義するものです。データは『なぜ起きているか』を説明しません。それこそが私たちがインサイトと呼ぶものであり、発見するのに時間がかかるのです。その意図せぬ結果として、企業は問題を解決するのではなく、指標を追いかけることになってしまいます」
この言葉は私の胸に刺さった。「ちょっと待ってください」と私は言った。「これは興味深い。つまり、これは……私が何年も不満に思ってきたことと同じです。従業員エンゲージメントがそうです。ギャラップは30年間、世界の従業員エンゲージメントスコアを発表してきました。企業は従業員エンゲージメントを向上させるために数十億ドル(数千億円)を費やしてきました。それなのに30年経ってもスコアは改善していません。なぜでしょうか?」



