マッキンゼーによれば、シニアリーダーの異動のほぼ半数は2年以内に失敗と見なされるという。その理由は、多くの場合、戦略の拙さや能力不足ではない。シニアリーダー自身が何を優先するかにある。
あるシニアエグゼクティブが、グローバル製薬企業に入社し、欧州の腫瘍領域におけるコマーシャル戦略を率いることになった。彼女は決断力とスピードで知られていた。新しい上司は、組織の足を引っ張ってきた「分析まひ」を打破できる人材が必要だと、あらかじめ明確にしていた。
そこで彼女は、状況を大きく動かした。着任後初めてのリーダーシップチーム会議で、18カ月間も結論が出ないまま議論されてきた価格戦略とマーケットアクセス戦略に異議を唱えた。国別のローンチ予定が、数週間ではなく四半期単位で先送りされ続ける理由も問いただした。
シニアリーダーたちは彼女を称賛し、GMも公然と支持した。第1四半期の終わりには、彼女は自分の存在感を示し、「耳の痛い真実を突きつける明晰な戦略家」という個人ブランドさえ築き始めたと感じていた。
しかし、称賛は一様ではなかった。彼女に突かれた側は、自分たちの弱点をさらされたと感じた。よくあることだが、結果はドラマチックな形ではなく、手続きとして現れた。彼女が必要とするデータは「作業中」のまま進みが遅くなり、部門横断の計画会議は何度も延期された。
その後、GMが昇進し、後任が就任した。新しいGMは、引き継いだ分断されたチームと、その周辺にまとわりつく機能不全を見極めたうえで、新たな最優先指示を出した。強気の成長を追う前に、協働を立て直せというのだ。この変化した空気の中で、製薬エグゼクティブの率直さは、もはや「明確さ」とは受け取られず、「分断を生む」と再解釈された。1年もしないうちに、新しいGMは彼女を問題視するようになった。
コーチングを始めたとき、彼女は自己評価を率直に語った。「合意形成をして、人を巻き込む方法はわかっています。10年近くそれで成功してきました。ただ、ここではそれを優先しなかっただけです」
根本問題は、協働する能力の不足ではなく、それを使わないという選択にあった。早期の成功は、必ずしも頼れる教師ではない。システムが称賛しているように見える行動を教えてくれるが、ルールが変わる瞬間までそれが続くとは限らない。状況が変わった時点で、彼女はすでに、欠かせない支援者たちを疎外してしまっていた。
新しいリーダー職の1年目が本当に求めるもの
移行期につまずくリーダーはたいてい、最初の1年が自分に何を求めているのか、つまり自分が何をすべきなのかを読み違える。
多くの人は、この移行を「実力のテスト」、すなわち即時に価値を示すための短距離走だと捉える。だが実際には、その後を左右する土台を築く投資期間と捉えるべきである。
これは往々にして、着任直後の反射的な「行動」への突進よりも先に、数週間にわたる深い傾聴を必要とする。この土台づくりを飛ばしたリーダーは、自分で生み出した抵抗と何年も格闘することになりがちだ。
移行に長けたリーダーは、1年目を計画を伴うキャンペーンとして扱う。印象づけようとする意図ではなく、好奇心をもって人に会う。話すよりも質問し、耳を傾ける。行間を読み、会議での関係性の力学を観察し、関係構築に時間を投じる。



