Nikolay Seleznev(Uzum共同創業者、最高戦略・事業開発責任者)
5年前、ウズベキスタンの地方で小さな事業を営む起業家が、地域コミュニティの外にいる顧客へ販売することは、ほぼ不可能に近かった。物流は限定的で、マーケットプレイスは分断され、小売は主に現金取引だったため、多くの事業は地理的条件に縛られていた。だが今日、その現実は急速に変わりつつある。アンディジャンの職人、フェルガナ盆地の繊維生産者、サマルカンド郊外の家族経営の食品事業者であっても、スマートフォンとインターネット接続さえあれば、全国の顧客にリーチできるようになった。
この変化は、ウズベキスタンで進行する、より大きな変革の一部である。同国のEコマース市場は相対的にまだ小さく、小売総取引高の約3%にすぎない。しかしこの数字は、強い勢いを覆い隠している。KPMGによれば、ウズベキスタンのEコマース市場は2027年までに最大7倍に拡大し、22億ドルに達する見通しで、推定年平均成長率(CAGR)は2023年から2027年にかけて40%超とされる。つまり、いま目にしているのは成熟ではなく、この地で商取引が機能する仕組みそのものが変わっていく、構造変化のごく初期段階なのである。
何十年もの間、主要都市から遠いということは、顧客が少なく、コストが高く、成長見通しが限られることを意味していた。デジタルプラットフォームはいま、その結びつきを断ち切りつつある。Eコマースは、郵便番号ではなく商品の品質で競えるようにする「水平化の力」となっている。これは、小売取引の84%が依然として伝統的なバザールや屋外市場で行われ、主要な都市圏以外では近代的な小売が限定的であるこの国において、重要な意味を持つ。
私たちのウズベキスタン企業では、数百万人のユーザーと中小企業(SME)向けに、Eコマース、フィンテック、銀行サービスを統合したデジタル・エコシステムを展開しているが、この変化がプラットフォーム上で事業を行う出店者を通じて、日々、現実のものとして立ち現れている。
ウズベキスタンの企業がEコマースに参入する前に知っておくべきこと
プラットフォームを選ぶ前、あるいはマーケットプレイスを立ち上げる前に、ウズベキスタンの企業は、同国のEコマースが急速に進化しつつも、なお発展途上の市場環境の中で運営されていることを認識すべきである。Eコマースに参入したい人々に向けた、私の主な提言は次のとおりだ。
初日から複数の決済手段を用意する
ウズベキスタン市場は価格に非常に敏感で、デジタル決済の普及も移行期にある。企業は、カード、分割払いソリューション、代替的なデジタル決済を含め、立ち上げ時点から複数の支払い方法を可能にすべきである。決済時の摩擦はコンバージョン率に直結し、とりわけ初めてオンラインで買い物をする層に影響が大きい。
価格競争力は「任意」ではないことを理解する
オンライン顧客は価格を瞬時に比較できる。透明な価格設定と競争力あるポジショニングは不可欠だ。購買力の幅が大きい新興市場では、価値の認識がスケールの決定要因となる。
顧客だけでなく、出店者とパートナーを考える
Eコマースのエコシステムは、買い手だけでなく、売り手である事業者を中心にも構築される。多くのウズベキスタンの中小企業にとって、オンライン小売は未知の領域だ。オンボーディング、明確なルール、教育、予見可能な経済条件などでパートナーを支援することは、顧客獲得と同じくらい重要である。
物流には投資が必要だと理解する
ウズベキスタンの物流インフラは改善しているが、特に主要都市圏の外では依然としてギャップがある。Eコマースに参入する企業は、倉庫、ラストマイル配送の提携、在庫システムへの投資を覚悟すべきである。信頼できる配送は、リピート購入と離反の分かれ目になることが多い。
信頼を築かなければならない
多くの消費者は、オンラインショッピングにまだ比較的慣れていない。明確な商品情報、透明な返品ポリシー、一貫したサービス基準は、市場における長期的な顧客行動を形づくるうえで決定的に重要である。
より迅速な意思決定に備える
Eコマースは、より速い意思決定とデータドリブンなマネジメントを求める。オンラインでスケールさせる前に、オペレーション、財務、マーケティング、テクノロジーの各領域で社内の足並みをそろえるべきである。
「出店者配送」モデルを検討する
従来、オンラインビジネスをスケールさせるには、大きな拠点に倉庫を構え、複雑な物流ネットワークをさばく必要があった。Delivery by Seller(DBS)モデルは、私たちも採用しているが、異なるアプローチを取る。出店者が地元で在庫を管理しつつ、全国規模のマーケットプレイス、デジタル決済、信頼できるラストマイル配送へのアクセスを得られる。これにより起業家は、多額の先行投資や主要都市への移転なしに成長できる。
私たちの経験では、DBSは大手小売業者、メーカー、ディストリビューターにとって特に有効である。このモデルは、在庫のコントロールを維持し、既存インフラを活用しながら、オンライン販売への参入と拡大を可能にする現実的な方法となる。
一方で小規模事業者は、運用の複雑さを下げるために、フルフィルメントを委ねたいと考えることが多い。確立されたプロセスや物流能力がない場合、出荷や在庫を自前で管理することは、利点ではなくボトルネックになり得る。DBSは間接費を抑えるが、運用の成熟度と規模がすでに備わっている企業で最も効果を発揮する。
コミュニティへの影響を考える
Eコマースの影響は、利便性をはるかに超える。現在、国家展望プロジェクト庁(National Agency of Perspective Projects)によれば、Eコマース市場の総規模は18億ドルを超える。デジタルプラットフォームを使う多くの出店者は、初めてフォーマルな商取引に参入し、需要の高まりに対応するために生産を拡大し、新たな雇用を生み出している。とりわけ製造業と繊維分野で恩恵は顕著で、地場生産品のオンライン販売が急伸していることは、小規模生産者が全国・地域市場へアクセスできることを反映している。
こうした成長は波及効果をもたらす。小さな企業がスケールすると、地域社会への再投資が起こりやすい。地元で雇用し、近隣のサプライヤーから調達し、世帯所得を押し上げるのだ。デジタル決済や金融サービスがなお発展途上にある国において、Eコマースを近代的な決済ソリューションと統合することは、より多くの起業家をフォーマル経済へ引き込み、透明性と長期的な持続可能性を高める助けになる。
ウズベキスタンの物語をとりわけ魅力的にしているのは、市場の現状と、明日あり得る姿とのギャップである。近隣国では、オンライン販売がすでに小売取引高の14%から20%を占める。ウズベキスタンははるかに低い水準からの出発であり、それは包摂的な成長の機会がさらに大きいことを意味する。課題であり責務でもあるのは、この成長が大都市の大手プレーヤーだけでなく、国中あらゆる地域の起業家にも恩恵をもたらすようにすることである。
結びに
私たちが築こうとしている未来は、すべてのウズベク人が、買い手であるだけでなく売り手にもなれる未来である。プラットフォームは単に需給をつないでいるのではない。新興国における起業の「社会契約」を書き換えることにも寄与している。機会が地理によって制約されなくなったとき、結果として生まれるのは、より包摂的で、強靭で、躍動的な経済である。それを駆動するのは、つい最近まで成長の周縁に置かれていた人々なのである。



