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2026.03.08 12:19

パンダのぬいぐるみ1つで痛感した越境決済の壁──上海出張での体験から

AdobeStock

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数週間前、私は出張で上海を訪れていた。娘にパンダのぬいぐるみを買って帰ると約束していたので、地元のショッピング街で50元、約7ドルのものを見つけた。ところが、その支払いは、ぬいぐるみを見つけることよりも大変だった。

現金は持っていたが、誰も20ドル札の両替に応じようとしなかった。クレジットカードも持っていたが、店側は当初、外国発行のカードを信用することに消極的だった。本当に必要だったのは、中国では生活の一部となっているWeChat PayやAlipayのようなローカルのデジタル決済アプリだった。しかし、私はどちらも持っていなかった。

その瞬間は衝撃的だった。だが、それは不便さが珍しかったからではない。むしろ、予見できて然るべきことだったからである。そして、決済の摩擦を最小化しようとするフィンテック企業のCEOとして、私は想定しておくべきだった。

越境決済

長年にわたり決済業界には、暗黙の前提があった。国内決済は簡単で、越境決済は難しいという前提である。自国内で支払うなら、決済のレールは滑らかで、体験は迅速かつ簡単で、誰も深く考えたりしない。だが国境を越えた瞬間、すべてが変わる。商品と引き換えにお金を支払うという本来は単純な行為が、必要以上に複雑なものになってしまう。

国内決済と越境決済の間にある隔たりは、些細な不便ではなく、構造的な問題である。越境決済は、ほぼあらゆる面で一貫して国内決済に後れをとっている。すなわちコスト、スピード、アクセス、透明性である。場合によっては、国際送金の決済完了に数日を要し、コストが国内取引の最大10倍に達することもある。

これは、低ボリュームのコリドー、すなわち決済トラフィックが不規則または低頻度の国と国の間で支払いが行われる場合に、特に大きな課題となる。そうしたケースでは、送金元と送金先の国の間で複数の金融機関が仲介として必要になることがあり、結果として時間がかかり、コストも高くなる傾向がある。

口座間決済(A2A):国際購入を円滑にする

安い土産を探す出張者として、私個人にとっての利害は小さかった。しかしグローバルで見れば、越境決済は決して小さな話ではない。2027年までに250兆ドルを超えると見込まれている。

そして、それらの決済を行う人々は、あらゆる階層・あらゆる立場に広がっている。私のような出張者に加え、休暇中の家族、海外で暮らす大学生や退職者、家族を支えるために帰郷送金をする農業労働者、介護従事者、エンジニアもいる。また、母国以外の小売事業者から、スニーカー、サングラス、携帯電話の充電器、そして多種多様な他の商品を購入する世界の買い物客の59%も含まれる。

口座間(A2A)決済は、デジタルウォレットに支えられることも多く、資金移動の未来を担う。これにより、消費者は海外にいても自国のデジタルウォレットで支払えるようになる。A2A決済は、ある銀行口座から別の銀行口座へ、ほぼ即時に資金を直接移転できる。これは越境決済や送金にとり、とりわけ有益である。取引が速いほど為替レートへのエクスポージャーが小さくなるからだ。

越境決済の簡素化へ

越境決済の改善は非常に重要な目標であり、G20は2020年にこれをグローバルな優先課題として掲げた。そして、業界もようやく追いつき始めている。G20の金融安定理事会(Financial Stability Board)が公表した2025年の進捗報告は、国から国への支払いを簡素化するうえで一定の改善があったとした一方、さらなる簡素化の余地があり、国外への送金も国内と同じくらい容易にすべきだと指摘している。

例えば進捗報告によれば、サブサハラ・アフリカは送金を受け取る最速の地域である一方で、コストは高く、ホールセールの越境決済を受け取る地域としては最も遅い。対照的にアジア太平洋では、スピードには改善の余地があるが、コストは最も低い部類に入る。

私が多くの越境決済に伴う摩擦を体験した中国でも、より円滑な国際デジタル決済への移行は始まっている。実際、中国を訪れる旅行者が、紐付けた海外カードでスキャンまたはタップして支払えるQRコードベースの非接触決済ソリューションを用いた決済は500%増加した。また中国の中央銀行は、2025年上半期に同国を訪れた訪問者のうち1000万人超がモバイル決済のアクティブユーザーであり、取引回数が2024年より162%多かったとしている。

中国の居住者が中国国外へ旅行する際にも、海外での支払いが国内と同じくらい簡単になる世界を体験し始めている。昨年のある休暇期間には、中国国外へ旅行した中国居住者のうち、国を離れていた人々の半数が中国のデジタルウォレットを使い、衣料品、食料品、宝飾品、外食、化粧品などの購入代金を支払った。

あらゆる支払いを「ローカル」のように感じさせる

中国で娘のためにあのパンダを買おうとしたとき、店側は最終的に外国のクレジットカードを信用することへの躊躇を乗り越えた。もちろん、私がカードを使おうとするとすぐに、換算手数料に関する通知が届いた。それもまた不要な障害に感じられたが、私は結局その贈り物を購入した。

決済業界が、複雑で高コストかつ遅い国際取引を、ローカル決済と同じくらいシンプルで簡単、そして迅速にすることへ近づくなかで──越境決済プラットフォームであるNeemaのような企業が解決に取り組んでいる課題だが──私は、新たな常識になると期待するものを楽しみにしている。国境を越えても摩擦のない購買である。

forbes.com 原文

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