マーケティング

2026.03.08 09:49

ソーシャルコマースの転換点 AIが発見を拡大し、クリエイターが売上を牽引する

AdobeStock

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マーケターは常にリーチを追い求めてきた。だがAI生成の画像や、アルゴリズムによって作られた「トレンド」が至る所にあふれるいま、マーケターが直面する問いは「何人があなたのコンテンツを見たか」ではない。誰かがそれを信じたかどうかなのだ。

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この問いこそが、OrcaとそのCEOであるマックス・ベナターが主催するソーシャルコマース会議「SoCom Live 2026」の中心にあった。Orcaは小売とビューティー領域のブランドに向けてライブ配信とソーシャルコマースのプログラムを支えており、その最前線の知見こそがSoCom Liveの議題を形づくっている。

Eコマース戦略、クリエイターマーケティング、パフォーマンスメディアが交差する数少ないイベントの1つでもある。参加したエグゼクティブたちは、ソーシャルコマースの未来を机上で論じていたわけではない。彼らはすでにそれを構築しているのだ。

今年の登壇者には、娘のサリッシュとともにSephoraでスキンケアラインを立ち上げたジョーダン・マターや、自身のビューティーブランド「Cay Skin」を築いたウィニー・ハーロウといったクリエイターが名を連ねた。ライブコマース運営のWhatnotとeBay Liveは、大規模に機能している手法を共有した。Gapやe.l.f. Cosmeticsといったブランドは、クリエイター戦略とパフォーマンス戦略をいかに統合しているかを語った。そしてAmazon、YouTube、Meta、TikTokといったプラットフォーム大手も会場にいた。ソーシャルコマースがいまや彼らのビジネスの中核だからだ。

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基調講演には、アフィリエイトの巨大企業LTKの共同創業者兼社長であるアンバー・ベンツ=ボックスが登壇し、「信じられるか」という問いに真正面から向き合うところから始めた。

フォロワーは死んだ。マーケターに次に訪れるもの

ベンツ=ボックスは、インフルエンスを世界的な経済圏へと変えた人物として知られる。彼女は「人の推薦は購買につながる」というシンプルだが強力な洞察をもとに、LTKを60億ドル規模のクリエイター・コマース事業へと育て上げた。

「私は最近『フォロワーは死んだと信じている』と言って、多くの人を動揺させた」とベンツ=ボックスは語った。「だが、いまこの時点でそれが真実であることには、皆が同意できると思う。あなたがコンテンツを配信される基準は、誰をフォローしているかではなく、何と相互作用しているかだからだ」

プラットフォームが時系列フィードをアルゴリズムの推薦へ置き換えたことで、誰かをフォローしても、その人のコンテンツが見られる保証はなくなった。この変化は文化的なものではない。配信の仕組みが変わったのだ。消費者が自分で「何を見るか」を選ぶのではない。プラットフォームが決めるのである。

恒常的な懐疑:信頼性と、いまの消費者行動

ノースウェスタン大学と行ったLTKの調査によれば、消費者の87%がソーシャルメディア上の本物と偽物のコンテンツを見分けられなくなっており、半数超が、自分が本当に気にかける人やコミュニティを見つけるために別の場所へ移っている。消費者のデフォルト状態はいま、「恒常的な懐疑」である。それを突破するのはコンテンツの量ではなく、信頼性の高さだ。

LTKは年間6万件のクリエイターとブランドの協業を支援し、月間ユーザーは4400万人超に達する。基盤にあるのは、人が「何を買うべきか」だけではなく、「それがあなたの生活にどう当てはまるのか」という問いに答える価値である。

SoComでベンツ=ボックスは、パーソナライズされた発見のために消費者向けアプリへ直接組み込まれたチャットボット「LTK AI」を発表した。実在のクリエイターコンテンツと信頼できる推薦によって動く。同AIは、認証済みクリエイターによる10年以上分のコンテンツを活用しており、このデータセットは汎用の検索エンジンでは再現できない。

「誰をフォローしているか、何を買っているか、どんなコンテンツと相互作用しているかを理解している」とベンツ=ボックスは言う。「すべての回答が高度にパーソナライズされる」

買い物客は、寒い時期の屋外イベントに何を着るべきか、春休みに最適な水着はどれか、といった質問ができる。AIは、無作為なソースからスクレイピングしたものではなく、文脈の中で製品推薦を実際に経験したクリエイターに基づく回答を返す。

「Redditの意見のようなものではない」とベンツ=ボックスは言う。「本当に、失うものとしての評判を持ち、信頼を基盤にコミュニティを築いている人々なのだ」

ベンツ=ボックスはこのアプローチを、「AIの中に信頼のレイヤーを構築すること」だと表現した。評判を背負う人物という説明責任こそが、リーチと信頼の差である。

消費者側の変化:検証が新たな購買要件に

Lockerのマーケティング責任者であるメアリー・グレース・スカリーは登壇者ではなかったが、ソーシャルコマース業界で構築を進める人々から学び、共有し、つながるためにSoComへ参加した多くの実務家の1人だった。

Lockerは、消費者の「欲しい」アイテムをすべて1カ所に整理するウィッシュリストアプリだ。CEOのクリスティン・ロッカーが2022年に創業したこのプラットフォームでは、買い物客がウェブ上のどこからでも商品を保存して整理されたコレクションにまとめられるほか、同年代の人々が何をキュレーションしているかを発見し、自分の推薦が購買を促した場合に収益を得ることもできる。

スカリーは、ベンツ=ボックスが語ったのと同じ本能を見ている。ただしそれは、日常の消費者から立ち上がってきている。買い物客は、同じ立場の人々による検証を、支出の前提条件として扱っているのだ。

「日常の買い物客にとって、発見のプロセスは多くのマーケターが認識している以上に、少し時間がかかり、より思慮深く行われるのが一般的だ」とスカリーは言う。「衝動買いをしているわけではない」

新しいコマース技術によって購入はこれまでになく簡単になった。だが今日の消費者は、スクリーンショットを保存し、価格帯を比較し、支出の前に、同じような予算や好みを持つ同年代の人々が実際に何を買っているのかを確かめる。見た目どおりに良いのかを、共感できる同年代の人を通じて確認したいのだ。自分と同じ体型、同じ予算、同じ嗜好の誰かを通して。

見た目どおりに良いのか:Meshkiのドレスが突きつける難題

例えばMeshki。200ドル以下で高品質なドレスを製造し、スタイリングや写真はプレミアムブランドに匹敵する。画像はラグジュアリーに見える。価格は手の届く水準だ。Lockerでは、実在の人々が、促されたわけでも報酬を得たわけでもなく、Meshkiを自分のコレクションへ追加しているかどうかを買い物客が確認でき、それが安心感を生む。別の買い物客が自分のために選んだのだという事実は、従来型広告よりも重い意味を持つ。

スカリーは、需要シグナルのギャップも指摘する。インフルエンサープラットフォームでトレンドになるものは、しばしばアフィリエイト手数料のインセンティブを反映している。Lockerにおけるトレンドは、消費者が実際に検索しているものを反映する。数千人のユーザーが、マルディグラの前から「Nola」の計画を立てたり、シーズンの何カ月も前から「spring break」のコレクションを作ったりしている。作られた可視性と本物の意図の差分に、次の収益の波がある。

ソーシャルコマースで勝つために:ブランドがいま行うべきこと

AIで人間の文脈をスケールさせよ。LTK AIはクリエイターを置き換えない。彼らの推薦を見つけやすくする。最良のAI戦略は、テクノロジーを人間の信頼性の代替ではなく、そのための配送システムとして扱う。

第三者の声を受け入れよ。LTKでは、ブランドが再投稿できるのは、クリエイターが自社について書いたものに限られる。信頼に足る推薦を得ることは、メッセージをコントロールすることとは異なる成果を生む。

人間関係が新たなラグジュアリーである

「人間関係を持てることはラグジュアリーだ」とベンツ=ボックスは言う。これが変化である。AI生成コンテンツとアルゴリズム配信で市場があふれるなか、クリエイターとオーディエンスの関係、買い物客と同年代の人々の関係こそが、コマースにおける最も価値ある資産となる。

フォロワーモデルは壊れた。アルゴリズムが配信を掌握した。AIがコンテンツ供給を氾濫させた。そこで立ち上がってきたのは、人間の文脈、クリエイターの信頼性、パフォーマンスデータが連動して機能する新たなオペレーティングモデルである。SoComの会場を満たしていたのはそれであり、コマースの次章を定義するのもそれになる。

forbes.com 原文

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