従業員たちはオフィス回帰(RTO)命令に反発しており、一部の機関はその声に注目し始めている。しかし、ギャラップの調査によると94%の従業員がハイブリッドまたはリモートワークを望んでいるにもかかわらず、ほとんどの企業は週5日出社の方針を撤回していない。ここでは、柔軟な勤務形態を自信を持って交渉するための方法を紹介する。
柔軟性をビジネスの議論として捉え直す
柔軟な働き方を求めると、まるでお願いをしているような気持ちになることがある。この会話を戦略的なビジネスの議論として捉え直そう。柔軟性は往々にして、休暇の追加申請と同じページに載る「特典」として位置づけられがちだ。しかし実際には、それは数ある勤務形態の1つに過ぎない。リモートワークは1970年代初頭から存在している。テクノロジーとコミュニケーション手段の発達により、ほとんどの企業の職務は物理的なオフィスの外でも遂行可能だ。ハーバード・ビジネス・スクールの2024年の調査によると、すでに43%の会議で少なくとも1人が通常の勤務時間外から参加しており、仕事は自宅でも行われている。現代の仕事は、オフィスに足を踏み入れた瞬間に始まり、出た瞬間に終わるものではないのだ。
柔軟性は個人だけでなく、会社にも利益をもたらす。通勤をなくし、非同期のチームワークを増やし、オフィスでの気が散る要因を減らすことで、本来の業務に充てる時間が増える。コンサルティング会社のグローバル・ワークプレイス・アナリティクスの試算では、一般的な雇用主は週の半分をテレワークする従業員1人あたり、生産性の向上、不動産コストの削減、欠勤や離職の減少により、年間平均1万1000ドル(約165万円)を節約できるという。仕事の質、一貫したコミュニケーション、的確な意思決定が維持または向上するのであれば、これは会社にとって大きなコスト削減となる。
求める柔軟性の種類を明確にする
上司と話す前に、自分が求める柔軟性の種類を明確にしておこう。時間の柔軟性、場所の柔軟性、エネルギー(コンディション)に基づく柔軟性、またはその組み合わせのどれを望むのかを定義する。時間の柔軟性とは、勤務の開始・終了時刻を調整したり、特定の曜日を休みにしたりすることだ。2019年以降、10カ国が週4日勤務の試験導入に参加し、2025年後半時点で92%の企業がこの柔軟な勤務方針を継続している。特定の曜日をリモートまたはハイブリッド勤務日に指定することは、場所の柔軟性に該当する。2026年1月時点で3600万人がフルタイムまたはパートタイムでリモートワークをしており、これは大げさな要求ではない。あまり知られていないのがエネルギーに基づく柔軟性だ。これには会議のない時間帯、毎日の集中時間、デジタル機器を使わないブレインストーミングなどが含まれ、従業員が特定の業務のためにエネルギーを温存できるようにするものだ。
効果的な交渉と同様に、代替案も用意しておこう。リモートワークが認められなければ、週4日勤務を提案する。会議のない時間帯が難しければ、一人で集中して作業する時間を確保するために勤務の開始・終了時刻の調整を相談する。すべてを、これによって自分の時間がより最適化され、チームが強化されることに結びつけて説明しよう。
会話を効果的に始め、懸念事項を先回りして対処する
この会話の切り出し方が、成功の確率を大きく左右する。柔軟な勤務の要望は、次のようなフレーズで始めよう。
- 「長期的に高いパフォーマンスを維持する方法について考えていました……」
- 「成果と集中の両方を支える勤務体制を提案したいのですが……」
- 「他の場所でチームが高いパフォーマンスを維持しながらうまく機能しているこの勤務形態を見てきました……」
便利さではなく、コミットメントを伝える言葉を使うことに集中しよう。自分の提案がワークフローを維持するだけでなく、全体的なパフォーマンス結果を向上させることを説明する。
潜在的な反対意見への対応策を事前に提示しよう。「懸念があるかもしれませんが、それに対処する計画があります」という一言を会話に含める。リーダーが口に出さない一般的な心配事には、常時対応可能な状態が失われることや、チームのダイナミクスへの影響がある。提案する柔軟な勤務体制の時間外に仕事が必要になった場合の、対応可能な時間帯、コミュニケーションの流れ、カバー体制を明確にしよう。
30〜60日間の柔軟な勤務の試験期間を提案すれば、リスクを嫌うリーダーも安心して同意しやすくなる。提案する勤務形態を後ではなく今実施することが理にかなっている理由を強調しよう。これにより「また後で検討しましょう」という先延ばしを避けられる。リーダーは、どんな新しいプロセス変更を提案する際にも、リスク軽減策を含む計画があることを知りたいのだ。会話を効果的に進め、懸念事項に先回りして対処することで、十分に考え抜いた上での提案であり、成功の可能性があることを示せる。
柔軟な働き方を求めるタイミングと場面を選ぶ
柔軟な勤務オプションについて話し合うタイミングは慎重に選ぼう。繁忙期や組織の不確実性が高い時期にこの議論をするのは避ける。上司がどのようにコミュニケーションを取り、情報を受け取るのが最も効果的かを理解しよう。1対1のミーティングで柔軟な勤務の変更について話し合うことを好む人もいれば、メールで書面にして見る必要がある人、またはその両方を求める人もいる。ストレスの多い時期よりも、好調な業績評価の後の方が要望は受け入れられやすい。自分の将来のエネルギーレベルを予測し、燃え尽きる前に相談しよう。なぜなら、答えがノーだった場合、さらに消耗してしまう可能性があるからだ。
最善を尽くしても柔軟な勤務形態の要望に対する答えが「ノー」だった場合は、プロフェッショナルかつ戦略的に対応しよう。将来的にどのような条件が整えば柔軟な勤務が可能になるかを尋ねる。フィードバックを求め、フォローアップの確認日を設定する。提案に対して粘り強く、責任を持って取り組もう。これは、柔軟な勤務環境が自分の仕事で成功するために不可欠なツールであることを示すものだ。
柔軟な働き方は現代の職場の中核をなすものだ。明確でプロフェッショナルな要望を伝える能力は、どのような環境でも役に立つ。優れたリーダーや企業は、トップパフォーマーを維持し、彼らの満足度を保つことの価値を認識している。率直さ、オープンさ、戦略性をもって要望を伝え、柔軟な働き方の願いが現実になるのを見届けてほしい。



