経営・戦略

2026.03.06 20:49

AI時代、創業者たちはいかに競争力を高めているか

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AI時代において、中小企業はどのように競争すればよいのだろうか。通常、データセンターを立ち上げたり、原子力発電所を建設したり、サービスを全国規模やグローバル規模に拡大したりするだけの資金力やリソースは持ち合わせていない。しかし、中小企業でも十分に競争は可能だ。AIはある意味で競争条件を平等にするツールであり、想像力さえあれば、ほぼ誰でも強力なユースケースを構築できるからである。

では、スタートアップの創業者が道中で得る助言はどうか。例えば、米国中小企業庁(SBA)は、中小企業の創業者に対して以下の4つの目標を提示している。

  • 問題が発生する前に解決する
  • データを保護する
  • より良いビジネス判断を下す
  • 繰り返し作業を担わせる

また、単調で退屈な繰り返し作業を効率化するアドバイスも参考になる。AIはメール作成、SNSコンテンツの生成、リード対応など、さまざまな業務の最適化に役立つ。Small Business ExpoのZach Lezberg氏は、繰り返し作業の自動化について次のように述べている。

「管理業務は貴重な時間を奪う。AIツールを使えば、会議のスケジュール設定、リードへのフォローアップ、記録の更新を手作業なしで行える。これによりミスが減り、チームはより価値の高い業務に集中できるようになる」

ダボスでの議論

先月ダボスで開催された「Imagination in Action」イベントでは、AIを活用する創業者たちの取り組みについてパネルディスカッションが行われた(注:筆者はスイスで開催されるAIに関する無料カンファレンス「Imagination in Action」の運営に携わっている)。

Link VenturesのマネージングディレクターであるFrazer Anderson氏が、パフォーマンス最適化企業Standard KernelのCEOであるAnne Ouyang氏、プラットフォーム設計を手がけるKeychainのCEO兼創業者であるOisin Hanrahan氏、そしてClerkieのCEOであるGuy Assad氏にインタビューを行った。Assad氏は自社について次のように説明した。

「当社は債務インフラを構築し、債務返済を効率化・自動化している。住宅ローン、医療費の借金、自動車ローン、学生ローンなど、あらゆる種類の債務が対象だ。消費者がこれらの債務を簡単に把握・管理できるよう支援し、金融機関が支払いを回収してポートフォリオを管理できるよう支援している」

(追記:筆者はLink Venturesとも関係がある)

AIが役立つ場面

パネルでは、技術的な取り組みにおけるAIの適切な活用方法について議論が交わされた。Ouyang氏は、コーディングにおけるAIツールへの依存を制限するという判断について語った。

「例えば、Cursor(AIコーディング支援ツール)には大いに頼っている。多くの面で生産性向上に非常に役立っているからだ。一方で、検証されていない生成コードに過度に依存することには極めて慎重でもある。カーネルプログラミングでは、よくある落とし穴として、1000回、いや1万回実行しても正常に動作するのに、100回実行すると1回失敗する、といったことが起き得る。これは非常に複雑な非同期パイプラインに起因する。大した問題ではないように思えるかもしれないが、この種のコードをクラスター内の多数のGPUで数カ月にわたるトレーニングジョブとして実行する場合、カーネルの信頼性が低ければ大きな問題になる」

Assad氏は、AIが果たせるさまざまな役割について見解を述べた。

「気づいたことの1つは、これらのツールは非常に強力で、自然と大きな業務効率化をもたらしてくれるということだ。特にエンジニアリング面での効率化が顕著だ」

同氏は「プロダクトマネジメントや議事録作成」のほか、採用や監査についても言及した。

「採用にもAIを活用している。数千人の応募者を選別し、履歴書を理解し、スキルがどこにあるかを把握し、不正を検知するために使っている」

データ集約についてはこう述べた。

「例えばクライアントとの要件定義ミーティングから戻ってきたとき、内容を整理するのにかなりの時間がかかることがあり、すべてを把握しきれないこともある。しかしAIをバックアップとして活用すれば、こうした情報の多くを漏れなく記録できる」

Hanrahan氏は、多数のサプライヤーを評価し、サプライチェーンを最適化するプロセスにおけるAIの活用について説明した。

「これは最適化問題であり、世界中の5万社のメーカーに関する膨大な情報が必要だ。任意の製品について、それを正常に製造するために必要な仕様は何かを見極め、将来的にどのような製品を作りたいかを把握し、『では、これらすべてが実現する確率をどう組み合わせれば、適切なベンダーやパートナーを選び、サプライチェーンを管理できるか』を考える必要がある。このプロセスのあらゆる部分に多大なコストがかかる。手作業でやりたければもちろん可能だ。5万社のメーカーを手作業で調査することもできる。あるいは、AI支援モデルを使って行うこともできる」

自分自身の羅針盤

その後、パネリストたちはこの旅路に個人的な価値観を結びつけることや、2026年のビジネス界の予測について語った。

「誰もが自分なりの価値観を持っている」とHanrahan氏は述べた。「世の中に良いことをするという信念かもしれないし、人々を助けるという信念かもしれないし、家族かもしれない。誰もが自分なりの内なる価値観を持っている。それが正しく設計されていれば、一貫性と意図が同時に存在する。これらの意思決定の背後には1人の人間、実在の人間がいる。そのことを考え、話し合うべきだ」

「我々にとっての核となる信条、核となる価値観は、顧客への執着から始まる」とAssad氏は語った。「社内でビジネスを運営していると、日々さまざまなことが降りかかってくる。常に自問しなければならない。我々は顧客をどう助けているのか。彼らの問題解決をどう支援しているのか。これは本当に彼らの問題を解決しているのか。そして、効率的でコスト効果が高く、かつ非常に生産的で有益な方法で解決しているのか」

では、今年は何が起こるのか。

「今年はROI重視の年になると思う」とAssad氏は述べた。「市場に出回るものが増えるほど、人々は賢くなり、中には実体のない製品もあることに気づき始める。そして、何が機能して何が機能していないかを理解するために、真のKPIを見るようになる。今年は指標の年、ROIの年になると思う。多くの人が、どのようなAIソリューションを導入しているのか、それが本当に価値を提供しているのかについて、より賢明になるだろう」

Ouyang氏も同意した。「今年は指標とROIの年だ」と彼女は述べた。

Hanrahan氏は、ビジネスにとっての大きな課題について考えを述べた。

「データの不正利用を理由に、企業に対する集団訴訟が貨物列車のような勢いで押し寄せる環境が来ることは確実だと思う。そのため、この点についてはより厳格になるだろう。そして、ビジネスリーダーたちは消費者にとっての真の価値について語ることに立ち戻らざるを得なくなるだろう」

パネルは唐突に終了した。Hanrahan氏は最後に、AI時代における人間性を称えることについて語った。

「人間として、我々は0と1の集合体ではない。マイクロプロセッサでもない。感情や希望、夢、そして志を持つ人間なのだ。それらを管理することは、コードを書くことよりもはるかに難しい」

AIスタートアップにおける人間的側面

つまり、AIという驚異的な技術力を活用する取り組みを始動させるには、創造的な人間が必要なのだ。「ループの中の人間」はまだ時代遅れにはなっていない。少なくとも、今のところは。今後の展開に注目したい。

forbes.com 原文

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