多くの創業者は、自分たちは自社と似た企業と競争していると思い込んでいる。だが顧客は、たいていそうは見ていない。
マーケティングの古典『ポジショニング』の著者であるアル・ライズとジャック・トラウトによれば、人の頭の中ではブランドが「はしご(ラダー)」として整理される。各ラダーはカテゴリーを表し、最上段にはそのカテゴリーと最も強く結び付けられたブランドが座る。その下には、認知度やリーダーシップの印象に応じて、代替案が大まかに並ぶ。
顧客があなたのスタートアップに出会ったとき、それを単体で評価するわけではない。すでに頭の中に存在するラダーのどこかに置くのである。
問題は、多くの場合それが、あなたが登っているつもりのラダーではないことだ。
1. 比較対象は同規模の競合ではなく、カテゴリーリーダーである
創業者は、立ち上げ期のアナリティクス系スタートアップは他のスタートアップと競合していると考えるかもしれない。だが顧客がそのプロダクトを頭の中で「アナリティクス」として分類したなら、最上段にいるのは10年分のブランド資産を持つ既存プラットフォームである可能性が高い。
その瞬間、比較はフェアではない。だが避けられない。
顧客はこうは問わない。「同じ資金調達ステージの企業と比べてどうか?」
こう問う。「なぜ、すでに知っているものを使わないのか?」
これがラダー効果である。あなたは、自分が入りたいと思っていたカテゴリーではなく、オーディエンスがあなたを割り当てたカテゴリーにおける最強ブランドを基準に評価される。
しかも多くの創業者は、そのカテゴリーを意識的に選んだことすらない。
2. 間違ったラダーは戦略的な罠である
顧客があなたを間違ったラダーに置くと、2つのリスクが生じる。
第一に、実力以上に弱く見える。焦点を絞り、強い主張を持つプロダクトであっても、機能が多岐にわたる既存大手と比較されると、力不足に映ってしまう。
第二に、評価基準そのものがズレる。もしあなたが「また1つのプロジェクト管理ツール」と見なされれば、顧客は機能の幅で比較する。だが「リモートファーストのチームのための調整システム」と見なされれば、既存企業がまだ上位を占めていない特定のケースにおける有用性で評価されるかもしれない。
ポジショニングは、比較のルールを決める。意図的なフレーミングがなければ、市場があなたに代わって決めてしまう。
3. カテゴリーの言葉が運命を決める
スタートアップをどう言葉で説明するかは、顧客がどのラダーを選ぶかに大きく影響する。
自分たちを「AI CRM」と呼んだ瞬間、あなたはCRMのラダーに足を踏み入れる。上位段はすでに埋まっている。差別化は、根強い連想を乗り越えなければならない。
一方で「創業者主導の営業のためのレベニューインテリジェンスシステム」と説明すれば、より狭く、独自に所有しやすいメンタルスペースをつくれるかもしれない。
違いは微妙だが、決定的である。
『ポジショニング』でライズとトラウトは、既存カテゴリーで「より良い」になるよりも、新しいカテゴリーで「最初」になるほうが容易だと論じている。この原則はここでも直接当てはまる。カテゴリーを明確かつ狭く定義すれば、顧客が新しいラダーを構築する可能性が高まる。そうなれば、あなたはデフォルトで最上段を占められる。
4. 誤った比較から抜け出す
顧客が一貫してあなたを間違った競合と比較していると気づいたなら、解決策はたいてい機能追加や価格合わせではない。
必要なのは文脈の組み替えであり、それには次のような取り組みが含まれうる。
- 解決する主要課題の再定義
- ターゲットとする顧客層の明確化
- カテゴリーリーダーと自社の思想の違いを明示的に対比する
ときに最も効果的な一手は、自社のほうが優れていると主張することではなく、支配的なカテゴリーそのものが欠陥を抱えている、あるいは時代遅れだと主張することだ。
再ポジショニングが効くのは、ラダーを移し替えるからである。
5. スケールの前に明確さを
立ち上げ期の創業者は、後で磨けばよいと考えて、本格的なポジショニングに取り組むのを先延ばしにしがちだ。だがいったん顧客があなたを頭の中のラダーに置いてしまうと、移動は難しくなる。連想は固定化し、比較は自動的に行われるようになる。
市場に曖昧なまま分類させている期間が長いほど、後になってその枠組みから脱出するためにより多くのエネルギーを費やすことになる。
ポジショニングとは、心の中の不動産である。あなたのプロダクトは必ず何かと比較される。唯一の本当の選択は、その「何か」を何にするかだ。
登りたいラダーを意図的に定義しなければ、顧客が代わりに選ぶ。そしてそれは、勝ち目のないラダーかもしれない。



