リーダーシップ

2026.03.06 19:39

探している人材は、すでに社内にいるかもしれない

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規模の大小を問わず、多くの組織が採用が難しい職種、根強いスキルギャップ、そして人材を社外から調達せざるを得ない圧力の高まりを報告し続けている。一方で従業員は、社内での流動性の乏しさ、十分でない能力開発支援、新たな機会への道筋の不明確さにより、キャリアの前進が止まっていると訴える。この乖離は、従業員体験と企業の人材戦略が噛み合っていないことを示している。

筆者は以前、雇用関係を作り替えるディスラプションについて書いた。意思決定者が人員を削減し、能力開発プログラムを縮小(あるいは廃止)すると、従業員の関与もまた、その関係性の変化を映し出す。

この2つの現実、すなわちスキルギャップと雇用関係の変容は、見た目以上に深く結びついている。

その間に位置するのが隣接適合(adjacent-fit)人材である。採用が難しい職種に対し、「1つのスキルの橋」を渡れば届く位置にいる従業員のことだ。ところが人事や採用マネジャーは、育成に取り組む代わりに、学位による足切り、役職要件、硬直したキャリアのはしごの陰に隠れてしまう。

キャリアの射程が長期化し、スキル変化が加速する時代において、隣接適合人材を解放することは、単なる育成施策ではない。それは人材を持続可能にするための戦略である。

構造的な盲点

Workdayのグローバル・ワークフォース・レポートによると、従業員は現在の役職に行き詰まりを感じており、次のステップや昇進の機会が見えないと感じることが増えている。多くのハイパフォーマーが、社内でのキャリア成長が停滞していること、そして従来型の昇進ルートが消えつつあることを報告しており、それがエンゲージメント低下と離職につながっている。問題は、企業がこの人材プールをなぜ見落としているのか、そしてそれが社内流動性戦略に何を物語るのか、である。

多くの組織が職務をどう設計しているかを考えてみてほしい。要件を過剰に作り込み、「適格」か「不適格」かの二択を強いる。

人的資本管理テクノロジー企業Isolvedで人材獲得部門プレジデントを務めるハイディ・バーネットは、HRDiveに対し「多くの企業は、不明確な要件と過大なスキル・経験への期待を掲げた求人を出すことで、この求職者の流入を逃すことになるだろう」と語った。Isolvedは今月初め、人事リーダーのほぼ半数が、テクノロジーや業界の変化に十分な速さで適応できていないために自ら招いたスキル危機に直面していると考えている、というレポートを公表した。

別のMonsterの労働力調査(採用意思決定者800人対象)では、雇用主の64%が適格な候補者を見つけるのが難しいと回答した。

求人票には依然として旧来の学位要件が残っている。役職ヒエラルキーは門番として機能する。マネジャーの裁量には大きなばらつきがある。結果は予測どおりだ。企業は社外での採用探索に多額を投じる一方で、組織内にすでにいる「ほぼ準備が整った」人材を見落とす。

問題は能力の欠如であることは稀で、時代遅れの枠組みにある。

隣接適合人材とはどのような人材か

Ness Labs創業者でキングス・カレッジ・ロンドンの神経科学者であるアンヌ=ロール・ル・キュンフ博士は、隣接スキルを「従業員がすでに持つスキルに近い、あるいは関連するスキル」と説明する。隣接スキルの開発が戦略的優位をもたらすのは、ゼロから始める必要がないからである。既存の知識を土台にでき、学習プロセスがより効率的になると同時に、すでに知っていることの強化にもつながる。

ル・キュンフは「まったく無関係なスキルを身につけるのではなく、隣接スキルの開発は、すでに知っていることを補完する方法だ」と書いている。

職場においてこのアプローチは育成を加速し、差別化を高める。関連領域で能力を拡張することで、プロフェッショナルはより多才になり、部門横断の協働がより効果的になり、コアの強みに加点的で戦略的整合性のある貢献が可能になる。

隣接適合の従業員は、次のような特徴を持つ場合がある。

  • 提示されたコンピテンシーの70〜85%を満たす
  • 関連部門に由来するドメイン知識を持つ
  • 立ち上がり期間を短縮する組織知(インスティテューショナル・ナレッジ)を持つ
  • 実績として示されたパフォーマンス履歴がある
  • 不足しているのは資格、ツール、あるいは技術系の認定である

しかし採用の意思決定者の多くにとって、最後の15〜30%のギャップが致命傷になる。ギャップを埋めるために期待以上の努力をしたい社内人材にとって、その不採用は企業が考える以上に大きな意味を持つシグナルとなる。

変化の速い環境では、完璧な一致はますます稀だ。社外採用であっても、オンボーディング、統合、文脈の学習が必要になる。マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査は、社内流動性と戦略的人材マネジメントが、定着とパフォーマンスの改善につながることを示している。

隣接適合というレンズは、社内流動性を単なる偶発ではなく意図的なものにする。それは、ビジネスニーズを満たしながら、従業員エンゲージメントと人材の持続可能性を高める。

隣接スキル人材を活用する5つのステップ

1. 学位・役職による足切りと経験年数を監査する

多くの求人票には、パフォーマンスと直接相関しない時代遅れの学位要件や、役職の閾値が今も残る。ハーバード・ビジネス・スクールが行った学位のインフレに関する研究は、学位要件が職務の真の必要条件を上回っている場合が多く、候補者プールを不必要に縮めていることを明らかにした。

リーダーは次を問うべきである。

  • この資格は絶対に不可欠なのか、それとも歴史的な残滓か
  • 過去の肩書はパフォーマンスを代表しているのか
  • 実証されたコンピテンシーでギャップをどう橋渡しできるか

スキルベースの枠組みは、社内にも社外にも適用されるべきだ。とりわけ、経験を積む機会がまだない段階で「数年の経験」を示すことを求められがちなエントリーレベル職では重要である。しかし硬直した経験年数の閾値は、転向、リスキリング、あるいは横移動を目指すプロフェッショナルにとっても門番となり得る。これは、いま組織が必要とする適応力を損なう。

2. スキルの橋を制度化する

準備が「完全」であることを前提にするのではなく、次を定義する。

  • 隣接適合の従業員と即戦力の間を隔てる1つか2つのスキルは何か
  • それらは3〜6カ月で学べるか
  • プロジェクト業務を移行期の露出機会としてどう活用できるか

世界経済フォーラムのFuture of Jobsの調査は、リスキリングがもはや周辺的な福利厚生ではなく、中核的な労働力戦略であることを強調する。スキルの橋は、その現実を運用可能な形にする。

3. 非線形キャリアを前提に設計する

継続的に上に登ることを前提とする直線的なはしごは、もはや標準ではない。むしろ非線形のキャリア進展は、ジグザグを許容する。隣接適合人材は、部門を斜めにまたぐ位置にいることが多く、今日のくねくね(squiggly)したキャリアにうってつけである。デロイトの調査は、直線的なキャリアのはしごから、より柔軟なキャリアの格子(ラティス)への移行を示し、横移動が能力のレジリエンスと適応力の推進要因であることを強調している。

4. 全社的な異動をインセンティブ化する

隣接適合の異動を阻む障壁の1つは、マネジャーがハイパフォーマーを手放すことを渋る点にある。マネジャーがチームの安定だけで評価されるなら、従業員と長期的な組織目標のためになる場合でも、社内異動の支援に抵抗する。異動を通じた人材開発は、測定され、公に認知される組織目標でなければならない。

5. 正しい問いを立てる

「要件を100%満たすのは誰か」ではなく、「1つのスキルの橋を渡れば届くのは誰で、それを埋めるには何が必要か」を問うべきである。この問いは継続的な人材開発に焦点を当て、結果として従業員のエンゲージメント、生産性、在籍期間を高める。

自社の競争優位を知る

社内人材は、企業にとって最高の競争優位になり得る。あるいは、結局離職するまで埋もれたままにもなり得る。すべては人材システムがどう設計されているか次第である。

あなたの人材システムは、完璧を探すために設計されているのか。それとも、準備をつくるために設計されているのか。

forbes.com 原文

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