AI

2026.03.10 15:00

コードの編集から「AIの指揮」へ──バイブコーディングの「次」を目指すCursor

Cursorのマイケル・トゥルエルCEO(Photo by Kimberly White/Getty Images for Fortune Media)

直近の資金調達で評価額が約4.7兆円に到達、共同創業者4人はビリオネアに

つい最近まで、ほとんど無敵の企業のように見えていたCursorにとって、この状況は衝撃的だ。2025年初め、同社の年間換算売上高は約1億ドル(約158億円。1ドル=158円換算)だったが、11月にはその数字が10億ドル(約1580億円)を突破した。直近の資金調達ラウンドでは評価額が約300億ドル(約4.7兆円)に達し、共同創業者4人はビリオネアとなった。Cursorは世界で最も価値の高い未上場企業のトップ20にも入った。

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AIモデルの開発企業が、コーディングのレイヤー自体を取り込むとの指摘

しかし、変化のスピードが極めて速いAI分野では、一夜にして勢いを失う企業もある。

Anthropicの新バージョン「Claude Opus 4.5」をきっかけに、2026年2月には、スタートアップ創業者が相次いで「我々のチームはCursorを使うのをやめた」とXに投稿した。彼らは、AnthropicやOpenAIのようなモデル開発企業が、「コーディングのレイヤー自体を取り込んでしまう」と指摘した。

ベンチャーキャピタル(VC)のインサイト・パートナーズの共同創業者、元マネージングディレクターのジェリー・マードックは、先日のポッドキャスト番組「20VC」で、「私が名前を挙げた企業の多くは、Cursorはすでに時代遅れだと見ている」と語った。

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Cursorの年間換算売上高は、すでに約3160億円を突破

しかし、Cursorの財務状況に詳しい関係者によると、同社の年間換算売上高はすでに20億ドル(約3160億円)を突破しており、過去3カ月で倍増したという。また、法人向けクレジットカード会社のRampとBrexのデータでも、2月までCursorの売上が成長を続けていることが示されている。ただしRampによれば、AI製品を導入する企業の間でCursorの採用率はわずかに低下している。Anthropicの「Claude Code」が急速に普及したことが、最終的にCursorの成長にどの程度影響するかはまだはっきりしていない。

Cursorの経営陣は、ソフトウェア開発の未来が「コードを1行ずつ書く作業」ではなくなることを理解している。そこで同社は、研究成果の発表や膨大な独自データの活用を通じて研究開発力を強化し、AnthropicやOpenAIよりも優れたコーディングモデルをいち早く公開する体制づくりを進めてきた。個人向けサブスクリプションよりも安定した収益源になりやすい大手企業との契約を優先する方針にも切り替えている。

もっとも、こうした成長の裏側では強い不安も広がっている。事情通によると、社内では売上の数字ばかりが話題になり、業務の妨げになるほどだった。このためCursorは、社内Slackの「#numbers」チャンネルでの日々の売上報告を停止したという。

2022年にCursor創業、バイブコーディングと呼ばれる開発手法で注目

Cursorは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の友人4人が2022年に共同創業した。当初、機械エンジニアが物理的なパーツを設計するのを支援するモデルの開発に取り組んでいたという。しかし4人はこの分野の専門知識を持っておらず、方向転換を余儀なくされた。その結果たどり着いたのが、急成長のきっかけとなったソフトウェア開発者向けのコードエディターだった。この製品は急速に人気を集め、同社の高速なコーディングモデルはやがて「バイブコーディング」と呼ばれる現象で注目された。これは、人々が平易な英語のプロンプトを入力したり話しかけたりするだけで、AIモデルがウェブアプリ全体のコードを書いてくれるという開発スタイルだ。

Cursorは、共同創業者と従業員約400人の多くが20代半ばという。その社内の雰囲気は、エリート大学のキャンパスに近く、社員が夜中まで働くことも珍しくない。同社オフィスは土足禁止で、シャワールームも設けられ、社員の多くは会社から数ブロック以内の場所に住んでいる。

大手ベンチャーキャピタルの関心を引きつけるほどの急成長

今から約1年前、口コミのみで支持を広げたCursorは、営業担当を置かないまま、わずか20人の社員で年間換算売上高1億ドル(約158億円)を突破したスタートアップとして知られていた。その急成長は、アクセルやアンドリーセン・ホロウィッツ、スライブキャピタルなど大手VCの関心を引きつけた。Cursorは、最先端のAIモデルをいち早く利用できる立場にもあった。Anthropicは2025年、Cursorに自社モデルへの早期アクセスを提供し、そのフィードバックを自社モデルの性能向上に生かしていた。

現在Cursorは、サンフランシスコのノースビーチ地区の4棟のビルを拠点としている。オフィスの間にあるバス停の広告スペースを使い、社員の名前をずらりと並べたポスターも掲げている。

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翻訳=上田裕資

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