9万9800円。アップルが3月4日に予約を開始したiPhone 17eの日本での価格である。10万円の壁を1歩だけ下回ったこの数字には、もちろん“10万円切り”という戦略的な意味がある。
しかし、この価格を実現するための舞台裏を想像すると、そこにはもっと大きな意味があることが見えてくる。2025年後半からパソコン、スマートフォン産業を覆い始めた「RAMageddon(RAMアゲドン)」と呼ばれるメモリ価格高騰の影響が、アップルやサムスンにとって追い風となるためだ。
10万円を切る価格で、上位モデルと同世代のチップ、搭載メモリ容量を載せた端末を出せるメーカーは極めて限られる。メモリ危機は、調達力と平均単価の高い上位モデルに強いメーカーに極めて有利な状況をもたらしている。
「入れなかったもの」にこそ設計思想がある
iPhone 17eにはiPhone 17と同世代のA19チップ、48メガピクセルのFusionカメラ、MagSafe、Ceramic Shield 2といった、iPhoneを形作る上での主要な要素が盛り込まれている。その上で、アップルが想定している“iPhone 11からの買い替え”組に対し、2倍の処理速度やビデオ再生で最大26時間もつバッテリーライフを訴求。従来比2倍の256GBのストレージが標準となり、Apple Intelligenceのクリーンアップやポートレートの深度制御といったAI機能もフルに動く。
つまり「iPhoneを選ぶ理由」の核にあたる部分は、上位モデルと同等の体験がそのまま残されている。
では「入れなかったもの」は何か。Wi-Fi 7とUWB(超広帯域無線)である。
Wi-Fi 7はまだ対応ルーターの普及が始まったばかりで、大半のユーザーがその恩恵を日常的に感じる段階にはない。UWBも、AirTagの精密な方向探知やデジタルカーキーなど用途は明確だが、すべてのiPhoneユーザーが日々使う機能とは言い難い。いずれも「なければ困る」ものではなく、「あれば先進的」という要素だ。
一方で、A19チップにはGPUの改良によるApple Intelligence体験の質向上、MagSafeによるワイヤレス充電とアクセサリーのエコシステム、Fusionカメラによる写真体験。これらは日々のiPhone体験を直接規定するものだ。アップルは、毎日の体験に直結する機能には妥協せず、日常では意識しにくい先端機能だけを引いた。
画面サイズやカメラ性能を削って安価にしていたかつてのSEシリーズとは異なり、引き算した後の体験の質がまったく異なる。簡単にいえば“超お買い得”に見える。



