サムスンが持つメモリ危機への受容性
興味深いのは、メモリ危機においてサムスンが独特な立場にいることだ。
Counterpointの2025年通年データによれば、サムスンは年間出荷台数でアップルに僅差で敗れ、14年間守ってきた世界首位の座を明け渡した。アップル20%(約2億4300万台)に対してサムスン19%(約2億3500万台)。
その一方で、2025年第4四半期の前年同期比成長率はトップ5の中でサムスンが最も高い17%を記録した。Galaxy Aシリーズで新興国の低価格帯を押さえつつ、Galaxy S/Zシリーズでプレミアム市場に切り込む「二本柱戦略」が機能した結果だ。
だが、サムスンの真の強みは2026年にこそ発揮される。サムスンはスマートフォンメーカーであると同時に、企業グループ全体でみるとメモリチップの製造者でもある。DRAM価格の高騰は、サムスン半導体部門の収益を直接押し上げる。
スマートフォン部門がメモリ調達で受けるコスト増は、グループ全体で見れば半導体部門の増益で相殺される。メモリ危機がサムスンにとっては逆風と追い風を同時に吹かせるという、他社にはない構造的優位がある。
つまり、アップルとサムスンはRAMageddonへの耐性が最も高いブランドなのだ。
アップルは低価格端末を中古端末流通で賄い、新製品販売では利益率の厚い高付加価値製品にフォーカス、その上で長期調達契約のサプライチェーンにおける強さがある。サムスンはメモリメーカーとしての二面性で吸収する。手法はまったく異なるが、結果として両社はメモリ危機を生き延びるだけでなく、競合との差をさらに広げていく武器として活用しているように見える。
圧迫されるミドルクラス。中国メーカーは苦境に
この反対側、すなわち最も厳しい状況に置かれるのが中国メーカーだ。OPPO、vivo、Xiaomiは中低価格帯を主力とするがゆえに、メモリコスト上昇の影響を直接受ける。利益率が低く、値上げの余地も乏しい。Counterpointは2026年のOPPOの出荷をマイナス4%と予測しており、スペック削減か出荷数の下方修正を迫られる可能性がある。
2026年のスマートフォン平均販売価格(ASP)はDRAMとフラッシュメモリの高騰で前年比6.9%上昇の見通しだ。従来予測の3.6%からほぼ倍に上方修正された数値で、メーカーがコスト増を消費者に転嫁せざるを得ない状況を映している。
ミドルレンジのAndroid端末が軒並み値上げやスペック削減に追い込まれるだろう。すると、iPhone 17eの相対的な「お得感」がかえって際立つことになる。9万9800円のiPhoneが、Android陣営のスペックダウンと値上げの波の中で、より割安に見えてくる。アップルが意図したかどうかはともかく、RAMageddonはiPhoneの価値提案を押し上げる方向に作用している。


