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2026.03.07 08:30

「10万を切る」iPhone 17eがもたらす市場インパクト、メモリ危機時代にアップルとサムスンが躍進する理由

iPhone 17e(Apple)

メモリが足りない──RAMageddonという構造問題

調査会社Counterpoint Researchが発表した市場調査では2025年12月、2026年のグローバルスマートフォン出荷予測を従来の横ばいから前年比マイナス2.1%へと下方修正された。原因はメモリ価格の異常な高騰だ。サムスン、SK Hynix、Micronの3大メモリメーカーがNVIDIA向けのHBM(高帯域メモリ)生産を優先した結果、スマートフォン用のLPDDR5XやNANDフラッシュに回すウエハーが不足している。AIデータセンターとスマートフォンが、同じメモリ工場の生産能力を奪い合うゼロサムの構図はパソコン業界も揺るがしている。

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2025年第4四半期の時点でDRAM価格はすでに40〜60%上昇しており、2026年第2四半期にかけてさらに40%の上昇が見込まれている。影響は価格帯によって非対称的に現れる。Counterpointの分析によれば、200ドル未満の低価格帯ではBOM(部品原価)コストが25%上昇、200〜600ドルの中価格帯で15%、600ドル以上のハイエンドでも10%の上昇だ。低価格帯のスマートフォンでは4GBのRAM構成への回帰すら議論されている。

iPhone 17eが位置する価格帯は、中価格帯と低価格帯のはざまで、まさにこの嵐の中心にある。

iPhone 17e(Apple)
iPhone 17e(Apple)

体験の核を守ったまま、10万円を切る力

こうした状況にもかかわらず、アップルはiPhone 17eの最低価格を維持することに成功した。内蔵ストレージが128Gバイトから256Gバイトに最低容量が倍増していることを考えれば、実質的な値下げである。ここに同社のサプライチェーン交渉力の真価が表れている。

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アップルはメモリなどの基幹部品調達において、数年単位の長期契約を結ぶ。需要予測に基づいて事前にウエハーの生産能力を確保し、スポット市場の価格変動からの影響を遮断するのだ。メモリ価格が安定している時期にはさほどの優位を生まず、予測を見誤ると収益に影響があるが、その一方でRAMageddonのような異常事態では大きな優位性につながるスポット価格、すなわち一時的な価格変動からの影響を受けにくくなる。

その証拠にアップル自身が発表はしていないものの、iPhone 17eの搭載メモリは8Gバイトであることを開発ツールXcodeで確認したとMacRumorsは伝えている。これは通常版のiPhone 17と同じ容量だ。その上、同じく高騰しているフラッシュメモリも倍増している。

アップルが調達力の高さと機能(ユーザーにとっての価値と言い換える方がいいだろうか)を最適化することで、10万円の壁を守りながら質の高い端末を作り上げた。しかもその引き算は、ユーザーが毎日触れるiPhoneの体験をほとんど損なわない場所に集中している。

「安いiPhoneを作る」のではなく、「メモリ危機の中でもiPhoneらしさ購入しやすい価格」で提供する。メモリ危機の中にある現在のタイミングだからこそ、アップルは勝負をかけてきたのかもしれない。

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編集=安井克至

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