マーケティング

2026.03.06 14:06

なぜ挑戦者ブランドは競合の記憶を強化してしまうのか

monticellllo - stock.adobe.com

monticellllo - stock.adobe.com

毎年どこかで、挑戦者ブランドがカテゴリーの王者を引きずり下ろすためのキャンペーンに数百万ドルを投じている。ところが実行段階のどこかで、挑戦者のマーケティングを何十年も悩ませてきた同じ戦略的な過ちを犯す。キャンペーン全体を競合のアイデンティティを軸に組み立ててしまうのだ。

結果はどうなるか。市場リーダーの記憶性を高めるために金を払うことになる。

これは一部に限られた失敗パターンではない。ブランドマーケティングにおける、最もしつこく、最もコストの高い誤りの1つであり、2026年になってもなお繰り返されている。実際、ペプシがまたその実例を見せてくれた。

記憶アーキテクチャの問題

なぜこれが重要なのかを理解するには、広告が実際にどう機能するかから始めるべきだ。

マーケティング研究は一貫して、広告が記憶構造を構築し、更新することを示してきた。感情的な手がかり、ブランド連想、カテゴリーへの入口(カテゴリー・エントリー・ポイント)などである。System 1は、長期的に成果を出す広告ほど、早い段階でブランドを示し、頻繁にブランドを示し、自社の独自資産を、消費者の記憶の中でブランドと強固に結びつく形で展開している傾向があると示した。

エーレンバーグ=バス研究所も別の角度から同じ主張をしている。ブランド成長は、メンタルアベイラビリティ(想起されやすさ)とフィジカルアベイラビリティ(入手しやすさ)から生まれる。独自資産(ロゴ、色、タグライン、サウンドの合図、キャラクター)は認知のショートカットとして働き、購買の瞬間にブランドを見つけやすく、認識しやすく、想起しやすくする。

このロジックを逆向きに考えてみよう。

独自資産が自社のメンタルアベイラビリティを築くうえで重要な役割を果たすなら、広告で競合の資産を取り上げた場合はどうなるのか。競合のメンタルアベイラビリティを築いてしまう。メディア予算を投じて、ライバルを思い出しやすくする神経回路そのものを強化することになる。

要するに、そこで行っているのは競争戦略ではなく、企業への補助金である。

ペプシのほうがおいしいかもしれないが、コークほど「独自」ではない

ここに誤帰属(ミスアトリビューション)を加味すると、問題はさらに深刻化する。これが自分にとって決定的に重要だと痛感した日のことを、私は鮮明に覚えている。ディズニーで働いていたときの調査で、米国人のほぼ過半数が『シュレック』はディズニー(マウス・ハウス)から出た作品だと信じていることが判明したのだ。もしこれほど注目度が高く、関与度も高いコンテンツでこんなことが起きるなら、広告では何が起きるのか、と私は思った。

消費者は、広告を別のブランドのものとして割り当ててしまうことが日常的にある。ブランドが大きく、なじみが深いほど、競合に帰属すべき記憶の「功績」を吸収しやすい。独自資産は磁石のように働く。誰かの広告にそれが出てくれば、消費者は印象を符号化し、のちにそれを優位ブランドの広告として想起してしまいかねない。

だから挑戦者が、競合の赤い缶、ロゴ、ボトル形状、マスコットなどを軸にキャンペーンを組み立てるとき、彼らはそのブランドを拡散しているだけではない。相手の記憶構造を、ただで資金援助しているのだ。

マーク・リットソンは、Ipsosとの共同でこれを分析した。彼らが取り上げたのは、挑発を狙い、コカ・コーラの合図(クマ)に強く依拠したペプシの「The Choice」というキャンペーンだ。クリエイティブは巧みで、実行も、あらゆる意味で卓越していた。マークは、確かにペプシが高いスコアを獲得したと指摘する。「翌朝、試合を見た約1250万人の米国人がペプシの広告を思い出した。ペプシは、常勝のバドワイザーに次いで、想起されたブランド第2位だった。数値は週を通じて改善し、勢いがついた」。多くの点で、ペプシのチームと広告代理店は称賛されるべきだろう。

しかし裏面はどうか。コカ・コーラも同様だった。リットソンは続ける。

「シロクマはコークのために非常に良い仕事をした。今年コークはこの試合にまったく関与していないのに、合計1000万人の米国人が、試合中にコークの広告を見たと記憶していた。実際、広告に1セントも使っていないにもかかわらず、コークは広告主トップ10に入りそうになった」

巨大ブランドであるコークは、広告を出していたはずだと思い込む人がいるため、ある程度の言及が出るのは当然だ。だが、この数字はかなり衝撃的であり、まさにマーケティングサイエンスが正しいことを裏づける。広告のオチが成立するために相手ブランドのアイデンティティを必要とする時点で、すでにフレームを明け渡しているのだ。

多くの人が読み違える「Avisの教訓」

反論は、決まってAvisを持ち出す。

「私たちは2番手。だからもっと努力する(We're number two. We try harder.)」は、マーケティング史における挑戦者戦略の代表例として最も引用される事例の1つだ。越えるべき山を明示し、ハーツを暗黙の対比対象に据え、カテゴリーにある力関係を活用して、説得力があり記憶に残るポジショニングを作った。

しかし、ハーツのロゴを見せたり、ハーツの黄色を使ったり、ハーツの独自資産を中心にクリエイティブを組み立てたりはしなかった。このキャンペーンは、アイデンティティを増幅させずに、ポジショニングを対比させたのである。

この違いは極めて重要だ。挑戦者の戦略は、競争環境を認めてもよいし(むしろ多くの場合そうすべきだ)、しかしその過程で競合のブランド資産に過剰な無料露出を与えてはならない。山の存在を想起させることと、自分の看板に太く大きな赤でその山を描いてしまうことの間には、明確な差がある。

なぜこの過ちは繰り返されるのか

このアプローチを避けるべき論理がこれほど明快なのに、なぜ行動は改まらないのか。それは、実際には露出にすぎないのに、攻撃のように感じられるからだ。市場リーダーを名指しで呼ぶことは社内に自信を示すシグナルになる。業界紙で注目を集める。LinkedInで「勇敢な」マーケティングとして拡散される。代理店が提案するのは物語を作れるからであり、CMOが承認するのは会議室で大胆に見えるからだ。

だが、そのどれもがマーケティングの有効性を測る指標ではない。バーガーキングを思い出してほしい。創造性は卓越していたが、戦略としては誤っていた

ほとんどの消費者は、あなたのブランドがカテゴリーリーダーと繰り広げる決闘を見ているわけではない。スクロールし、通勤し、料理しながら、半分しか注意を払っていない。その状態では、クリエイティブに潜む競争の含意を常に処理できるわけではない。彼らが受け取るのは、見慣れた手がかりである。そして、その場で最も見慣れた手がかりが得点する。

その手がかりが競合のものであるなら、あなたは予算を使って、消費者に「別の誰か」を記憶させている可能性が高い。

規律とは何か

持続的なメンタルアベイラビリティを築くブランドは、地味な仕事をする。独自資産を開発し、それを厳格に守り、あらゆるタッチポイントで一貫して展開し、ライバルを自社広告の主役にしてしまう誘惑に抗うのだ。

マーケティングサイエンスは、率直にこう告げる。自分の領域を所有せよ。ショートカットを更新せよ。他人のものを更新するためにメディアの重量を費やすな。

注意が分断され、予算が圧縮され、マーケティングROIへの圧力が増す環境では、ブランドの印象の1つひとつが、5年前より重みを増している。その印象を競合のアイデンティティに浪費することは、大胆さではない。倒そうとしているブランドへの、非常に高価な贈り物である。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事