起業家

2026.03.06 13:56

人間を代替するのではなく、力を与えるAI企業10社

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毎週のように、AIが雇用を奪うという見出しが躍る。ロボットがあなたのキャリアを奪いに来る。アルゴリズムが人間を時代遅れにする。恐怖はクリックを稼ぐが、物語の半分を見落としている。確かに、シリコンバレーはあなたを代替するAIを作っている。偽の友人、試験の不正を助ける仕組み、人間の専門性を無価値にするよう設計されたシステムだ。だが、もう1つの動きも起きている。創業者たちは、人々がすでにやっていることを、よりうまくできるようにするAIを作っている。仕事を破壊するのではなく生み出すAIだ。知っておくべき企業がここにある。

Coachvoxでは、コーチやコンサルタントを代替するのではなく、彼らの時間の制約を超えてスケールできるよう、AI版のコーチやコンサルタントをつくっている。人間のコーチを方程式から完全に排除しようとするAIコーチングアプリには、断固として反対である。

私はLinkedInのネットワークに対し、代替ではなくエンパワーメントに焦点を当てるAI企業の共有を呼びかけた。反応は心強いものだった。あらゆる場所の起業家が、搾取モデルを拒み、異なるものを構築している。AIが人間性を損なうのではなく、役に立ち得ることを示す10社を紹介しよう。

搾取ではなくエンパワーメントを選ぶAI企業

Ahmer InamのCognisee

Cogniseeの創業者兼CEOであるAhmer Inamは、先住民の知、薬草の知恵、暗黙知の専門性が失われる前にそれらを記録する「Wisdom Vaults」を構築している。CentificでチーフAI・データオフィサーを務め、XPRIZEでグローバルなビジョナリー職を担ったのち、Inamは彼が呼ぶところの「人々のための、人々によるAI」を作るためにCogniseeを創業した。

「世界的に、世代を超えて受け継がれてきた膨大な知恵が失われる瀬戸際にある一方で、AI技術はあらゆるものに強制的な圧縮をかけている」とInamは語る。彼はフォーチュン100規模で最先端AIを実社会のインパクトへと変換することに数十年を費やしてきた人物だ。だが彼のソリューションでは、コミュニティがデータを所有し、貢献者には報酬が支払われる。知は搾取されるのではなく保存される。

Riyaa Sri RamanathanのAlzheimer's Youth Outreach Campaign

16歳のとき、Riyaa Sri Ramanathanは祖父を診断の遅れで亡くしたことをきっかけに、Alzheimer's Youth Outreach Campaignを立ち上げた。彼女のチームは、若者が開発した世界初のエビデンスに基づくアルツハイマー病教育カリキュラムを構築し、アルツハイマー協会、ユニセフなどとのパートナーシップを通じて、150超の地域で8万人以上の学生に届けている。

次の段階では、AIを統合して、識字レベルと言語に応じた神経科学コンテンツの適応、モニタリングと評価の自動化、学習ギャップの可視化を行い、教育者がより早く介入できるようにする。「AIは教師や介護者、支援者に取って代わるものではない」とRamanathanは語る。「摩擦を減らし、リーチを広げ、人々が教育し、認識し、より早く行動するためのより良いツールを与える。そして人間の判断と共感を中心に据え続けるのだ」

Kate MatthewsのSecondmind

自動車エンジニアは、設計の複雑性によって市場投入までの時間が遅れ、創り出せるものにも制約が生じている。Secondmindのマーケティング責任者であるKate Matthewsは、同社のミッションを端的に述べる。「私たちは、エンジニアのパートナーとなるSecondmindを作っているのであって、代替ではない」。同社のソフトウェアは、最小限のデータから高い価値の成果を導き、従来のツールより80%少ないデータで動作する。

エンジニアは、半分の時間で3倍の設計オプションを発見できる。CAE(コンピュータ支援工学)のシミュレーションは90%減る。「エンジニアを代替するのではなく、顧客に超能力を与えるのだ」とMatthewsは語る。AIが重要なパターンを提示し、エンジニアは自分が最も得意とするイノベーションと問題解決に集中する。マツダのような顧客は、すでに最も複雑なエンジニアリング課題に同ソリューションを活用している。

Thomas MumfordのUndergrads

大学生の59%が、経済的ストレスを理由に中退を検討したことがある。Undergradsの創業者兼CEOであるThomas Mumfordは、この問題に取り組んでいる。同社は、訓練を受けた大学生クルーが時間単位で力仕事を担い、授業スケジュールに合わせて働ける、学生主導の引っ越しマーケットプレイスを運営する。AIが見積もり、物流、カスタマーサポートを担うことで、少人数のオペレーションチームでも新しい都市へスケールできる一方、仕事そのものは完全に人間のまま保たれる。

「AIのおかげで、Eコマースビジネスと同じ領域の効率性で運営できている」とMumfordは語る。目標は2028年までに250市場に展開し、2万5000人の学生が授業予定に合わせて収入を得られるようにすることだ。引っ越し実績は約4万件、レビューは5000件超、平均評価は4.95。AIが摩擦を取り除き、学生は報酬を得る。

Axel Molist CordinaのEvalua

多くの企業は、より少ない人数で成果を維持するためにAIを使う。We UCの創業者兼CEOであるAxel Molist Cordinaは、逆の道を選んだ。同社が構築したEvaluaは、コンタクトセンターの通話録音を分析するAIツールである。品質を評価し、人間によるレビューが必要なエッジケースをフラグ付けする。その結果、品質管理のアウトプットは4倍に増えた。

「人を解雇したのではなく、ボトルネックを取り除いただけだ」とCordinaは語る。「いまは、増えたQC能力を活用するために、SDRをさらに採用することも検討している」。スティーブ・ジョブズはコンピュータを「心のための自転車」と呼んだ。CordinaはAIを「心のためのロケット」と捉えている。人間にできることを大きく増幅するものだ。取り残されるのは、変化の採用を拒む人々である。

Trent ScanlenのKURK

高度な科学と日常のビジネス言語の間を翻訳することは、高コストで時間もかかる。KURKのCEO兼共同創業者であるTrent Scanlenは、その回避策を見つけた。彼のバイオテック企業には、博士号取得者4人と医師2人からなる科学諮問委員会があり、顧客調査、臨床試験、製品パイプラインの結果を分析している。

AIは、彼らの科学的分析を、マーケティング、カスタマー、プロダクト、オペレーションの各チームが実際に理解できる形で書くのを助ける。「要するに、AIを使って、高度な科学と医学と、Eコマースマーケティングや顧客とを、共通言語でつなぐ翻訳者にしている」とScanlenは語る。思考するのは専門家であり、AIはその専門性を、必要とするすべての人に届く形にする。

Jeff BrewerのCornerstone Licensing

政府のコンプライアンスは、起業家の歩みを止めてしまう。Cornerstone Licensingの創業者であるJeff Brewerは、企業が従来手法より50倍速く、かつ大幅に低コストでライセンス申請と取得を行えるAIツールを構築した。これは、多州にまたがるライセンス取得におけるCommon App(学生が一度作成した標準化された出願書類を複数の大学に提出できる仕組み)のようなものだ。

AIで重複を排除した単一の質問票に回答すれば、AIが全50州におけるライセンス申請および規制関連の提出書類を即座に作成する。何カ月にも及ぶレバレッジの低い事務作業を取り除くことで、企業はより早くライセンスを取得でき、新たな州へ拡大し、より早期に採用し、オペレーション、コンプライアンス戦略、成長に紐づく、より付加価値の高い役割を生み出せる。人間の仕事は消えるのではなく、より上位へと移る。

Nemanja LosicのWalls.io

イベントや企業内、コミュニティでは、人々が写真や考え、反応を絶えず共有している。その多くは、誰にも見られないままだ。Nemanja Losicが働くWalls.ioは、ソーシャルウォール(複数のソーシャルメディアプラットフォームからユーザー生成コンテンツを集約し、ライブ表示する仕組み)を構築している。これにより、実際のコンテンツを収集し、モデレートし、浮上させ、本当に人間が注目されるようにする。

「私たちのAI搭載ソフトウェアは、コンテンツの収集、モデレート、可視化を助ける」。その背景にある信念はシンプルだ。AIが真の価値を生むのは、人の代わりに考えようとするときではなく、認知負荷と断片化を減らすときである。うまく機能すれば、観客は受け身で眺める存在ではなく、体験そのものになる。同社によれば、世界で8万5000超のブランドが同社のソーシャルウォールプラットフォームを利用し、Amazon、Google、Cisco、国連なども含まれる。

Kevin LeyesのLeyesX

多くのAIは、オンラインでの可視性を高める方向へと促す。LeyesXの社長であるKevin Leyesは、逆のものを作った。1994年から続く彼の民間サイバーインテリジェンス企業は、AIを用いて、人々、とりわけ創業者、クリエイター、高い責任を負う個人が直面しがちな詐欺やなりすましのリスクに対し、デジタル上の露出を減らす支援をしている。

AIはアイデンティティ露出をマッピングし、リスクを早期に可視化し、生活のどの部分をオフラインに保つかというコントロールを人々に取り戻させる。「根本にある信念は、常にオンラインであることが、すべての人にとって利益になるわけではないということだ」とLeyesは語る。これはAIを、プライバシー、主体性、安全のためのツールとして位置づけ直す。何を可視化したままにするかは人間が決める。AIは、隠しておきたいものを守る。あなたのアイデンティティやセキュリティについて意思決定するアルゴリズムは存在しない。決めるのはあなたである。

Dave SifryのWarmstart

コールドアウトリーチが失敗するのは、見知らぬ人は見知らぬ人を無視するからだ。9回の創業経験を持つWarmstartの創業者兼CEOであるDave Sifryは、営業におけるウォームアウトリーチのプラットフォームを構築し、創業者が、すでに自分を知り好意を持っている人々と再びつながれるようにした。「Warmstartは、あなたのことをすでに知っていて愛してくれていて、しばらく連絡を取っていない人に対して、創業者が営業のアウトリーチを行うのを助ける」とSifryは語る。顧客はウォームアウトリーチキャンペーンで20〜40%の返信率、最初の3カ月で400%超のROIを得ているという。

AIは、再び温める価値のある関係を特定するが、真のつながりを作るのは創業者だ。あなたのネットワークは、すでにあなたを信頼している。あなたが望む理想の人生は、たった1つの温かな会話の先にあるかもしれない。AIが仕分けを担い、人間が関係性を担う。

これら10社のAI企業が、人を代替するのではなく力を与える理由

この10社には共通のパターンがある。AIが退屈で反復的、時間のかかる仕事を引き受け、人間は判断、創造性、つながりに集中できる。学生は仕事を得て、AIは物流を管理する。エンジニアは超能力を得て、AIはシミュレーションを処理する。専門家はより多くの人に届き、AIは知識を翻訳する。搾取モデルは、人間の能力を削減すべきコストとして扱う。エンパワーメントモデルは、それを拡張する価値のあるものとして扱う。

あなたをより依存させるのではなく、より有能にするAIを選べ。仕事を破壊するのではなく生み出す会社を作れ。これを理解する起業家が、次の10年を定義する。

forbes.com 原文

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